第51話 バーチャルキャバクラ その1

「はい始まりました。店長の九重ホムラです。皆様お待ちかねの第1回バーチャルキャバクラ開催です。はい拍手」


コメント

:888888

:パチパチ

:やったー

:待ってた

:このコメントは削除されています


「いやーにしてもバーチャルキャバクラ、いや巷ではVキャバって言われてるんだっけ?ツイッターの方でめちゃくちゃ荒れてるねー。皆んな見た?うちのスタッフのファン達が俺に無理やりやらされてる!とか俺が助けてあげる!とか、本当お前ら何様だよって思ったよね。この企画言い出したの俺じゃなくてあっちなのに」


コメント

:このコメントは削除されています

:そうだったんだ

:煽られてて草

:おいおいホムラそんな事実言ったら傷つくだろw

:俺が助けてあげる(キリッ


「それにあー言う人達って文句だけは一丁前に言うくせに、特段何にもやんないから単なる害悪だよね。まぁそんな残念な人達にいちいち構ってたら時間がもったいないから、早速我がキャバクラの人気スタッフの紹介をしましょうか!それでは1人目、その歌声は万人をも魅了する、一見クールに見えるがその実は単なるかわいい人オンプさんです。どうぞ」

「はい、えーっと……助けてわ、私のファン達!実はこの男に裏で人気にさせてやったんだから、その見返りを体で払ってもらおうかって脅されてるんですー。」


俺に紹介されて出てきたオンプさんは、リスナーを煽る様に俺が事前に渡していた台本を、それはそれは驚くほど棒読みで読み始めた。


コメント

:な、なんだってー(棒

:棒読みで草

:wwww

:オンプちゃんは演技とか苦手なんだろうね

:このコメントは削除されています


「ホムラさん!だから私演技下手だから、最初の挨拶は梅ちゃんに任せようって相談したじゃないですか!」

「あははは、大丈夫大丈夫オンプさんちゃんと俺の想定通り可愛かったですよ」

「か、かわ!」


そう言ってオンプさんは少し恥ずかしそうにしながらも、驚きのあまり声を詰まらせてしまった。


うんうんやっぱりオンプさんは可愛い系だな


そんな事に感心しながらも俺は次のスタッフを呼ぶために、次の人の紹介文を読み始めた。


「それでは続いては、俺含めうちのキャバクラ1の人気を誇るこの女だ!どこに出しても恥ずかしくない完璧なメスガキ!桃崎姫花ァ!」

「はーい♡みんなぁ姫をもっと人気にする為にじゃんじゃんお金落としていってね♡」


コメント

:うぉぉぉぉぉ!!!

:可愛いよ!姫ちゃん!!

:くそッ何でこのチャンネルはスパチャオフなんだよ!

:ホムラ今すぐ設定からスパチャオンにしてこいヤァ!

:おじさん姫ちゃんの為に頑張っちゃうからね⭐︎

:ふん何を言い出すかと思えば、姫ちゃんに1番貢ぐのはこの俺だ!

:スパチャとは何だ?金か?桃崎姫花は金が欲しいのか?


俺はコメント欄の異様な盛り上が理を見ながらも、内心自分を慕っているかもしれない親戚の女子高生に、一体何をやらせているんだ?と思いながらもできるだけそんな事実を考えない様にして話し始めた。


「流石はうちのエースだ。この人気凄いね。確か最近登録者数が5万人突破したんだっけ?」

「そうなの姫凄いでしょ?」

「あーうん本当に凄いね。俺が笑えないレベルで……」


そんな事を話していると、姫ちゃんが何やら扉をノックされた様で、少し見に行くと言って一瞬離席したので、その間を繋ぐ為にオンプさんと色々話していると、少し困惑した声色の姫ちゃんが戻ってきた。


「どうかしたのか?姫ちゃん」

「ううん何でかよくわかんないんだけど、姫の家の人が急にスパチャって手書きされた袋に、10万円入れて持って来たからちょっと驚いちゃって」

「お、おう……それは何と言うか。ビックリだね」


それを聞いた俺はそんな金をポンと渡せて、姫ちゃんの正体を知っている人を考えた時、そんな意味不明な行動をとった人物に思い当たり、その人物が人物だった為ツッコミよりも、驚きいったいあの爺さんは何してんだと困惑してしまった。


そんな困惑している俺と姫ちゃんを横にオンプさんが、姫ちゃんに質問した。


「姫ちゃんの家族は姫ちゃんがVやってる事知ってるの?」

「うーん、姫家はさっきお金渡してくれた人と、もう1人お手伝いさんが知ってるだけかな?」

「え!?お手伝いさん?もしかして姫ちゃんの家ってお金持ちなの?」

「ん?別にそんな事ないと姫は思うよ〜」

「そうなんだ……でもそっかやっぱり家族の人には、自分がVやってる事話したほうがいいよね」

「オンプちゃんは話してないの?」

「うん、私は歌手になるって言って両親と喧嘩して家飛び出してきたからね」

「へーロックだね♡」


そんないきなりちょっと重い話を話し出したオンプさんと、姫ちゃんのvtuberをやってる事を、あたかも自分から打ち明けた様に言ってる事に内心ツッコミながらも、2人の会話が終わる頃を見計らい最後の1人の紹介を始めた。


「それでは最後はこの人!まさかの実力に全俺が驚愕した。最近お金が貯まって新衣装を受注したらしく、梅の枝から大変身し人間の形となった。神木梅さんです!どうぞ」

「あ!今日はお客さんいっぱいですね店長!本当ねぇいつもの倍以上来てて流石のアタシもビックリだわ。でーもそのおかげで今日はいっぱいお客さんと話せそうで、あーしはオケ丸って感じぃ〜」


登場して早々梅さんは少し幼いかんじの元気な女の子、次は先程とは違い大人っぽさを全開で、どこか色気を感じる様な声で話したと思えば、更に最後には少し前のギャルの様な話し方で話し始めた。


その全く別の声をいくつも自然に出す梅さんにコメント欄は、いつもぶっきらぼうな声で関西のおばちゃんが如くマシンガントークをする梅さんが、全くの別人とも思える声を話す姿に驚きを隠せなかった。


コメント

:スゲェー!!

:やっばw

:えっ?何?梅ちゃんって声優?

:まさかの伏兵

:天才現る!


「いやー改めて聞いてもやっぱ凄いね。梅さんって何者なの?」

「えーそうですか?あ!実は私アレなんですよね声優の学校?ってのに通ってたんですよね!まぁ昔のことなんですけどね」


先程までの作った声ではなく、いつもの様なあっけらかんな声で話し始めた。


ついでにと、梅さんがvtuberを始めるにあたって他の機材を捨ててまで異常に高いマイクを買った原因の人物は、その声優学校の同期にマイクの大切さを熱弁されて梅さんが暴走して買った事を教えてもらった。


ちなみにその友人はいきなり梅さんが、目ん玉飛び出る程の額のマイクを買った事に大層驚いていたらしい。


そらまぁ自分が話したことが原因で、友人が3桁万円するマイクを買ってきたら誰でもビックリするだろう。


「そうだったんですね」


その後も俺達4人で軽く世間話をしていると、すっかり俺達やリスナーに存在を忘れられた人物が声を荒げた。


「お前ら俺の事忘れてんじゃねぇ!!」

「「「「あ!」」」」

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