たずねびと

 どうかお聞きになってくださいまし。

 あの時、ゆくあてもなく彷徨う旅人を引き留めてくだすった御方。

 寂しいと、そう言ってくだすった御方。

 あたくし今でもあなた様のお言葉を反芻いたしましては、幾度となく放り投げようとした筆を握っております。握りしめております。

 今では調子乗りもいいところで、お話なんか、書こうとしている始末です。

 紛れもないあなた様が……あなた様があたくしを、生かしたんですのよ。そうしてあたくしは生き延びたんですのよ。

 またどこかで袖触れ合うことができたらと、密かに夢見ておりますが、そんなのは奇跡という言葉も追い付かぬほど稀有なことに違いないのでしょう。

 それでももし、またどこかで会えたら、とても、嬉しく思います。

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