第49話 橘さんと雪奈の死
麗奈の事件があった次の日、一本の電話が俺の元に届いた。
内容は、カンピオーネ内で爆発事故が起き、
橘さんが死亡…
雪奈さんは爆発により跡形もなく死亡…
告別式は明日行われる
という事だった。
俺は…茫然として、真由美に電話をした。
「な!?何だって!!!恭介すぐに行くから!!!」
真由美はすぐに家に駆け付けてくれ、俺を力いっぱい抱きしめた。
「お…俺…」
「兎に角…USに行こう?恭介…
じゃないと…お別れに間に合わない…」
俺は飛行機に乗るまで何をしたのか覚えていない…
飛行機はプライベートジェットを会社が用意してくれて
旅立つ準備の方は真由美がしてくれたらしい。
「お姉ちゃん…雪奈さん…ううっ…っく…」
「恭介…」
俺は…自分独りでは何もできず、
真由美が抱きしめてくれて何とか自分を見失わないでいた状態だった…
最期にお姉ちゃんに手紙を出した時…何を話していただろう?
もっと…もっと…話したい事があった…
もっと…もっと…いっぱい聞けば良かった…
元気なうちに…俺が…嫌だと言われても…会いに行けば良かった…
雪奈さん…あの時…
俺に何を伝えたかったの?
最期って…この事を予感してたの?
事故じゃないの?
あの時…言葉をかけるべきだった!!
もっともっと…話せばよかった!!
俺…雪奈さんの事…憎んでなんかいないよ!!!
大好きだったんだよ!!!
そんな事を考えて…気絶するように数時間寝てしまった…
起きると…まだ飛行機の中で…独りになってしまった事を改めて実感した…
「俺…独りぼっちになっちゃった…」
俺はぽつりと言った。
「…何言ってるんだ?私が…いるだろう?」
真由美は目に涙をためて、俺を見つめた。
「私じゃ…駄目か?私がお前の新しい家族になる…それじゃ…駄目か?」
「…真由美…うん…うん!」
俺は力いっぱい真由美を抱きしめた。
有難かった…真由美が傍にいなかったら…
俺は今度こそ自殺してしまったかもしれない…
今の俺には…真由美が全てだった…
空港に着き、俺たちはカンピオーネに向かった…
幼い頃に来た以来だった…
・・・
カンピオーネに到着すると、沙也加先生が出迎えてくれた。
「恭っち…こっちだよ…」
いつも陽気なギャル風の沙也加先生が…見る影もなく…
一日中泣きはらしたであろう顔が痛々しかった…
沙也加先生が俺を橘さんの所に案内してくれた。
途中沙也加先生が今回の事故についての説明をしてくれた。
カンピオーネ内には研究所があり、
危険物の扱いの事故により、研究所の一部が爆発…
その煽りを受けて、雪奈さんと橘さんは死亡したとの事だった…
爆発現場のすぐ近くに居た雪奈さんは…
原型も留めるのが厳しい程の損傷で、既に埋葬…
橘さんは直接爆発には巻き込まれていないが、飛んできた金属の破片により
大怪我をして出血多量で死亡した
という事だった。
「恭介…橘さんは…きっと恭介の事を異性として、愛していたんだと思う。
女は好きな男にはどんな時でも奇麗に見られたいと思うもの…
だから少し距離を取って会おう…」
真由美から諭されて、ある程度距離をとって亡くなった橘さんを見た。
小さい頃の記憶なので定かではないが、
あの時と同じく酷い火傷の跡が顔にはあった…
「橘さん…今更…会いに来ました…
遅い…ですよね…ごめんなさい…」
暫くぼーと橘さんを眺めていると、ふと奇妙な事に気づいた…
橘さんの首に、何処かで見たような…特徴的な切り傷が見えたのだ…
「…え?…………雪奈…さん?…」
「え?…何を言ってるの?
雪奈姉は…先に埋葬したよ…
それに雪奈姉には…顔に火傷の跡なんて…ないよ…」
「そ…そうです…よね…
で………でも…橘さんの右首の下に…特徴的な切り傷が!
この傷…雪奈さんにもあったんです!!
最期にお風呂に一緒に入った時に…俺…見たんです!!!
あんな特徴的な傷…そうそう…
え?…え?…え?…橘さんが…雪奈さん!?」
そんな事あるわけがない…
でも俺の中では自然とそう結びついて…勝手に口に出してしまっていた…
「いい加減にして!!!」
沙也加先生がこれでもかという位…俺を睨んできた。
「悲しいのは貴方だけじゃないのよ!!!
私だって…血は繋がっていないけど…
本当のお姉ちゃんだと雪奈姉の事を思っていたのよ?
雪奈姉の亡骸が見れないからって…代わりに橘さんを雪奈姉にしないで!!!
いくら悲しいからって…変な事言わないで!!!」
「恭介…火傷の跡は雪奈さんにはなかったろう?
傷のことは良く分からないけど…偶然かもしれないし…」
俺は真由美に諌められた。
「………すいません…沙也加先生…どうかしてました…
橘さん…ごめんなさい…
小さい頃から…いつも…俺を支えてくれて…ありがとう…」
そう別れを告げて…俺は橘さん傍を離れた…
すぐに沙也加先生が近づいてきて謝って来た。
「ごめん…恭っち…私も…余裕がないんだ…」
「いえ…当然です。俺の方こそすみません!」
「恭っち…これ…いつも雪奈姉が持っていたお守り…貰ってくれない?
その方が…雪奈姉も喜ぶから…」
「…ありがとうございます…肌身離さず持っています…」
「それから…恭っち…さっき…雪奈姉とお風呂に入ったって言ってたけど…本当?」
「…ええ、入りましたよ。一度だけですけど…」
「…そっか…奇麗だった?」
「………ええ…そう雪奈さんにも聞かれたので…はい…と答えました…」
「…雪奈姉…恭っちに身体見て貰いたがってたから…嬉しかったと思うよ?」
「…どういう意味…です?」
「さあ?…どういう意味でしょう?」
謎の言葉を残したが、俺には意味が分からなかった。
振り向くと真由美はじっと沙也加先生を見ていた…
「真由美?…」
「…ごめん。ちょっと沙也加さんと話があるから、外で待っててくれる?」
「…分かった…」
部屋を出て俺は天井を見上げてボーとしていた…
ガチャ、ドアが開いて真由美が出てきた。
「エントランスに戻ろう…」
・・・
橘さんは埋葬され、雪奈さんと橘さんのお墓の前で…俺はお祈りをした…
もう…こんな事くらいしか俺にはできないけど…
真由美がお祈りしている最中にやっぱり俺は考えてしまっていた…
(あんな特徴的な傷はやっぱりそうそう…でも火傷の跡が…
あれ?でも雪奈さんにも目立たないが一部シミがあった…
あれが元々火傷の跡だったなら…
やっぱり…橘さんと雪奈さんが同一人物?)
「橘さん…雪奈さん…俺は…
くっ…はぁはぁはぁはぁはぁ…頭が!?苦しい…」
「え?恭介?おい!大丈夫か?恭介!!!」
急に頭が痛くなり、動悸が激しくなり…俺は意識を失った…
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