第46話 芹沢 麗奈 との再会 その5

「くっ!!!てめぇ!!!」

「調子に乗りやがって!!!」

平山と須藤以外の残りの男2人が一斉に恭介に襲い掛かった。


一人が大振りで殴ってきたので、

俺はダッキングでかわしてもう一人の男のボディめがけてボディブローを放った。

ドゴォン!!

「ぐぼぉ」

男は悶絶し、その場で吐いて動けなくなった。


そして再度殴りかかってきた男も

ボゴッ!!

「うがぁぁぁぁぁぁ!!!」

得意のライトクロスカウンターで気絶した。


「こ、こいつ!」

「動くんじゃね!!!こいつがどーなっても良いのかよ?」

須藤はナイフを麗奈の首元に突き付けた。


「話が違うじゃないか!

 工藤って奴を倒せたら麗奈を離すんじゃなかったのか?」


「ちっ…てめぇ調子に…」


「先輩…ちょっと待ってください。

 今から楽しいショーを見せますから…

 確かに…約束を破ったのは俺らだ…

 だから…とっておきの秘密をお前らに教えてやるよ!

 それでチャラだ!」


「麗奈…親父さん事故だったんだってな?

 どんな事故だったんだ?」


「何でそんな事を貴方に!」

麗奈は平山を憎らしく睨んだ。


「いいから答えろよ。お前にとっても重要な秘密なんだぜ?」


「…………警察の話では…

 ドライブレコーダーはSDカードがなくて、映像が映っておらず、

 詳細な状況は分からない…

 ただ…現場の状況的には、急にハンドルを切った跡があったので…

 それで運悪く電柱にぶつかったと推測していると…」


「何で親父さんは急にハンドル切ったんだろうな?」

平山は薄気味悪くニタリと笑った。


「え?何を???」


「教えてやろうか?急に猫が飛んできたからだよ!!

 親父さんはそれを避けようとハンドルを切ったんだよ!!!」

平山は興奮して目を見開いて叫んだ。


「…な…何で貴方がそんな事を?…ま…まさか…」

麗奈は顔が青くなって震えだしていた。


「俺がやったんだよ!!!

 お前は日本に居なかった!!!

 だから親父さんが事故れば戻ってくると睨んでな!!!

 まあ…殺す気まではなかったんだが…

 運が悪かったな!!!

 そうだ!!!その顔だ!!!その顔が見たかった!!!

 その顔をしている時のお前はさいっこうなんだよ!!!

 あの時みたいにさいっこうに興奮するぜ!!!

 ふはははははは!!!」


麗奈はナイフを突きつけてられていたにも拘らず平山に食いかかって行った。

「ちっ…このアマ!!!」

「この…この外道!!!悪魔!!!お父さんを返せ!!!返せ~~~!!!」


麗奈が食いかかってきたのは想定外だったのか、平山は慌てて蹴り上げた。

「げぼっ」

麗奈は苦しそうに蹲ったが、

平山と須藤が俺達から視線を外した隙を俺は見逃さなかった。


「この糞野郎!!!」

チッ!!!

俺は須藤の顎にピンポイントにアッパーを当てた後に、

ドゴォン!!!

平山に渾身の打ち下ろし気味のストレートをお見舞いした。


「ちっ…脳が揺らされて…足が…」

「ぐわああああ!!!」


「麗奈こっちに!!!」

麗奈をこちら側に引き寄せた。

麗奈は興奮していたが、白鳥先輩が抱きしめて落ち着かせていた。


「このガキ!!!もう許さねぇ!!!」

須藤は慣れた手つきでナイフを構えた。


使い慣れてる…俺は二人を庇う位置で

須藤に最大限の警戒をして迎え撃とうと構えた。


その時に…

ガラガラガラガラ!

重い扉が開き、

コツコツコツコツ…

明らかに堅気ではない男たちが5~6人入って来た。


「あ…あ…あ…兄…兄貴…」

須藤は明らかに狼狽えていた…


「須藤~…組の物…勝手にちょろまかして…

 誤魔化せると思ってたのか?」


リーダーっぽい男が俺達を見てぼそりと呟いた。

「今日起こった事、この場で見聞きした事は…全部忘れろ!

 黙って去れ!二度と来るな!

 俺の言うことを聞けば悪いようにはしない…

 こいつらがお前らに関わる事も二度とない!それは保証してやる!

 警察に何か言ったら…お前らも無事では済まなくなる…

 分かったか?」


「行こう…これは…私達が関わっちゃいけない世界だ…」

やけに冷静な白鳥先輩が動揺している俺と麗奈の袖を引っ張った。


「で、でも…平山が!!!お父さんを!!!」


「良いから!!!」

白鳥先輩は麗奈を睨んで、引っ張り工場の外に俺たちは出た。


ガラガラガラガラ

工場のドアが閉まり…暫くすると…

「ぎゃあああああああああ!!!!」


遠くから複数人の悲鳴が聞こえたような気がした。


でも俺たちは振り返らずに遠くに歩いて行った。


かなり遠くに来てから麗奈が立ち止まり、蹲った。

「お父さんが…お父さんが…私のせいで…」

「麗奈…」

俺はかける言葉が見つからなかった。


「いい加減にしろよ!!!」

白鳥先輩が麗奈に怒鳴った。


「何であんな男の言うことを信じる?

 それが本当である証拠が何処にある?

 ただ私たちの動揺を誘うために狂言しただけかもしれないんだぞ?

 大体あいつが何回嘘をついた?

 何回騙された?

 いい加減あんな奴の言う事に振り回されるのはもう止めろ!!」


麗奈は白鳥先輩の言葉を聞いて我に返った。


「そ…そうですね…

 その通りです…

 あんな男の言う事を真に受ける方が馬鹿でした…

 何年経っても…私…馬鹿ですね…」

麗奈は乾いた笑いをした。

 

「進藤!麗奈さんに言いたい事があるんだろ?

 私は離れた所にいるから、今度こそちゃんと言え!!」


「はい…」


・・・


「…恭ちゃ…いえ…恭介さん…」


「もう今更だろ?さっき散々言ってたし、良いよ…恭ちゃんで…」


「…ありがとう…恭ちゃん…助けてくれて。

 でも…どうして私なんかを助けてくれたの?」


麗奈はだんだん涙が止まらなくなっていった。

「私…恭ちゃんにとって…ヒック…もう幼馴染みでもないし…

 それに貴方に…ヒック…散々酷い目に合わせて…酷い裏切り方もしたのに…

 私なんか助ける…価値…ないよ?

 彼女さんだって…危なかったんだよ?

 見捨ててくれれば…私なんて…私なんて…

 いい気味だったじゃない!!!」


 



 






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