第39話 長瀬 朋美 との再会 その2

「話が逸れちゃったね…

 続きを言うね…

 そういう風に考えてしまった後に…

 私も自棄になっちゃって…もっと汚れちゃえば…

 自分自身に諦めがつくって思ってしまったの…

 そんな事を考えている最中…

 結局あいつも全然懲りていない事が分かって…

 進藤君にも迷惑をかけようとしていたの…

 だから…体よくあいつを利用したの…」


「え!?じゃあ…あれは…俺の為…に?」


「違うよ!

 さっきも言ったように一番は私が私自身を諦めたかったの!

 そのために全てを私は清算したかったの!

 それであいつを利用しただけ

 その為に進藤君を傷つけてしまったのは私なの…

 最低なのは…私なの…」


「でも…」


「進藤君と会っていなかったとしても…結局同じ道を歩んでいたと思う…

 あの時の私には…あいつがまだ元に戻れってくれるかもしれないって

 希望が僅かにあって…

 あいつを捨てられなかったのだから…」


「…あの時どうしてあんなことを言ったの?

 裸を見せて…

『『 見て…私を…私…奇麗かな?…

   最期に…そう思ってくれたら…嬉しい…な… 』』

 って…」


「完全に私の…自分勝手な…エゴだよ…

 進藤君とはもう交わる事はない…恋人同士にはなれない…

 だから…最期に私のありのままの姿を…進藤君の目に焼き付けて欲しかった…

 貴方がどんなに傷つくかも考えずに…ね…

 本当に身勝手な理由…」


「…そっか…

 俺と話さなくなってから…どうしてたの?」


「同じことの繰り返し…

 何度も何度も知らない男達の相手をさせられて…

 あいつはその行為そのものや私が苦しむ姿を喜んだわ…

 バカな私でも…段々とあいつがもう二度と元に戻る事はない事を

 実感していった…

 それと同時に生きる希望がどんどん薄れていったの…


 でも…人間って凄いんだね…

 生存本能というのかな…代わりに生きる希望を私は無意識に探したの…

 それが進藤君との思い出だった…

 進藤君は気持ち悪いと感じると思うけど…

 勝手に貴方とのデートの思い出を生きる支えにしていた…

 あれは…私の理想の私になれた唯一の時間だったから…」


「さっき…進藤君と会っていなかったとしても…結局同じ道を歩んでいたと思う…

 と言ったけど…ごめん…嘘だね…

 もし会ってなかったら…私は…絶望して死んでいたと思うから…

 だから私にとって貴方との出会いはかけがえのないものだったの…

 進藤君にとっては…はた迷惑な事だったんだろうけど…」


「そ…そんな…」


「それでそのうち…更に状況は悪化してあいつは暴力団とつるみだし…

 ろくでもない事を考えたの…

 でも…調子に乗り過ぎたみたいで…もっと大きな暴力団組織に睨まれて…」


「…その後どうなったの?…」


「あいつは連れ去られたわ…どうなったかは…私も知らない…」


「最後にあいつは私に縋ったの…

 助けてくれって…

 それで私は…初めて殴ってやったの!

 お前なんか親じゃない!どっか行っちまえ~!って…」


「…呪縛から…解き放たれたんだね…」


「うん!!それで私は初めて吹っ切れたの!あいつの事…」


長瀬さんは笑っていたが…何処か儚そうにも見えた…


「それから…カンピオーネに?」


「うん…私暫く何処かの施設でボーとしていて…

 何も考える事もできなくて…未来が全く見えなかったの…

 それで雪奈さんに助けて貰ったの…」


「雪奈さんに!?」


「もしもカンピオーネでrank-1になったら…進藤君に会うチャンスをあげるって…」


「え!?…そっか…そうだったんだ…

 知ってたんだ…雪奈さん…長瀬さんの事…

 雪奈さんが…長瀬さんの事…助けてくれたんだ…そっか…」


「わ、私…進藤君に会う資格なんて…本来はないんだけど…

 でも…また…進藤君に…どうしても…会いたくて…謝りたくて…」


俺は長瀬さんの手を握った…

「ごめん…急に…でも…

 あれから…一人で…頑張ったんだね…

 それに…カンピオーネに行ってからも…

 高校の時からrank-1の人と一緒に勉強したり、勉強教わったりしていたから…

 彼らの優秀さは良く分かっている…

 rank-1になるなんて…凄く…努力したんだね…凄いよ…長瀬さん…」


長瀬さんは目を見開いて驚いていたけど

「うん…うん…ううっ…ありがとう…

 私…頑張っ…たんだ…

 進藤君と離れてから…ずっと…ずっと…グスン…頑張ったんだ…」

涙を堪えながら話した。


「うん…頑張ったと思う…

 俺が想像している以上に…頑張ったよ…長瀬さんは…凄いよ…」


・・・


「ねえ…進藤君…………

 進藤君は…その…今好きな人…いるの?」


「…うん。気になる人が…いるよ…」


「………そっか…………良かった…良かったよ!

 私のせいで傷ついて…進藤君が一生、人を愛せなくなっちゃったら…

 どうしようって…ずっと…グスッ…思ってたから…」


長瀬さんの頬には涙が流れていた…

それがどんな意味の涙なのかは…俺には分からなかった…


「進藤君…凄く都合の良い話なんだけど…

 いつか…私達…親友に戻れたり…しないかな?」


「………うん…可能性はあると思う…今すぐって言うのは難しいけど…」


「うん。勿論だよ。ありがとう!

 今日これまでの苦労が報われた気分だよ…

 進藤君…話を聞いてくれて…どうもありがとう!」


「こちらこそ…話してくれて…ありがとう!」


「私…これから進藤君の信用を勝ち取れるように…頑張るよ!

 まずは…仕事で会社に貢献できるように!」



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