第33話 相川 あかりと白鳥 真由美

2年生の夏休み最後の週

俺は、高原と相川さんグループと一緒に花火大会に来ていた。

ピンクを基調とした華やかな模様の浴衣を着ている相川さんはとても奇麗だった。


「進藤君♡こんばんわ、…どう?似合う?」

「ああ。とても似合っていると思うよ。」

「ありがと♡」


暫く歩いていると、いつの間にか一緒に来ていたクラスメートは居なくなっていて

俺と相川さん二人きりになっていた。


「うわぁ~~~奇麗だね~」

「そうだね…」

(神田先輩はインターハイで優勝した…俺も…来年は

 自分の弱さを克服し、この花火のように花を咲かせてやる!)


「な~んか…逞しい目してるね~♪目標でも立てた?」

「え?…分かる??」

「そりゃあ~…進藤君の事なら…ね♡」

「えっと…皆を探しに行く?」

「そうだね…あっちの方に屋台が並んでるからそこを見ながら探そっか♡」


屋台の方に行くと聞き慣れた声が聞こえてきた。


「お姉ちゃ~ん!綿あめ買って~」

「お姉ちゃ~ん!あっち行こ~」

「ねぇね!りんご飴!」

「ちょっと待て!順番だ!」


声の方に目を向けると

白鳥先輩が幼い妹と弟たちと一緒に屋台に来ていた。


「あ…白鳥先輩…」

「ん?進藤!?」


「ねぇね…この人…だ~れ?」

「あ…姉ちゃんのこいびと~?」

「え?そうなの!?」

「ば…馬鹿!!違ぇよ!!」

「あれ~ねぇね…お顔…真っ赤だよ~?」


「あの…妹さんと弟さんですか?可愛いですね。」

「え?お、おう…騒がしくて悪いな(苦笑)」


「進藤君!!!皆あっちの方で見かけたから行こうよ!!!」

「え?そうなの?あ…白鳥先輩、はぐれていた友達が見つかったみたいなんで

 俺行きますね。また明日。」

「おう!また明日。」


・・・


「進藤君…こんな事言いたくないけど…

 白鳥先輩…あんまりいい噂聞かないよ?…」

「え?噂??」


「その…不良の人と付き合っている…とか…援交してる…とか…

 子供をおろした…とか…」

「俺はボクシング部でお世話になっているけど…そんな人じゃないよ!!」


…少し重い雰囲気となったので、俺は少し頭を冷やす事にした。


「ちょっとトイレに行ってくる。」

「…うん…」


・・・


トイレの近くで林檎飴を持って泣いている小さな男の子がいた。

「うえぇえぇえええ!!お母さん!!!どこ~~~!!!」

誰も助けに行きそうにないので俺が行こうとすると

すかさず女の人が近づき、林檎飴で浴衣が汚されているにも拘らずあやしていた。


「お姉ちゃんが絶対に探してやるから、もう泣くな!男の子だろ?」

「うううっぇ…うぐ…ぐすん………うん…」

近くに見覚えのある小さい女の子も一緒にいる…

よく見ると女の人は白鳥先輩だった。


(自分の浴衣が汚されているのに一切不快な顔もしないで

 小さい男の子を安心させようとしている…

 あんな人が…そんな噂の事…するわけがないよ…)


俺はそっとその場を離れて、相川さんの元に行った。


少し俯き気味の相川さんを見つけると少し騒がしい。

「ふぇえええん、お母さ~ん!!!」

今度は綿あめを持っていた小さな女の子が迷子になっているようだ。


ふらふらと歩いている小さい女の子が相川さんにぶつかりそうになると

「ちょっと!気を付けてよ!汚れたらどうするの!!」


(俺とああいう雰囲気になって機嫌が悪いのかもしれないけど…)


俺は急いで女の子の傍によって、泣いている女の子をあやした。

すぐにお母さんが来てくれて、お礼を言われて女の子とお母さんは去って行った。


ばつが悪くなった俺と相川さんはその後あまり喋る事なく、

皆と合流し、その後解散となった。


・・・


翌日の放課後、僕は相川さんに呼ばれた体育館の裏に来た。

相川さんは先に待っていた。

「昨日は…そのみっともない所を見せて…

 でも…本当に良くないの!あの人は…

 噂じゃなくて…本当なの!

 とりあえず…隠れて!」


「え?」


相川さんは俺の腕を引っ張って、体育館裏が見れる建物の影に俺を連れてきた。


「偶然なんだけど…休み時間に知り合いの先輩の所に行ったら

 悪い噂の多い長谷川先輩が白鳥先輩を放課後、

 体育館裏に呼びつけるのを聞いたの…

 これで…噂じゃないって信じて貰えると思って…

 余計な事をしているのは自覚してるけど…本当に心配なのよ…進藤君の事が…」


暫くして相川さんの言う通り、

ガラの悪そうな先輩(長谷川先輩?)と白鳥先輩がやって来た。


「真由美…なぁ…もう一度やり直そうぜ…悪いようにはしないからよ…」

「てめぇに真由美なんて呼ばれる筋合いはねぇよ!!」

「良いのかよ?あの事言っても…

 あいつインターハイで優勝して、大学、推薦で行けるんだろ?

 あの事バレたら…まずいんじゃないのか?」

「………」


(何の事かわからないが…

 白鳥先輩はどう考えても脅されてるようにしか見えない…)


「え?進藤君?ダメだよ!!分かったでしょ?

 あんな人に進藤君は関わっちゃいけないんだよ!」


「どう考えても脅されてるだけにしか見えない。

 それにもう俺は…待つのは止めにしたんだ!

 自分で正しいと思う事には積極的に介入する!

 もう…後悔はしたくないんだ!!」


「あっ…」


「あれ?こんな所で何してるんですか?白鳥先輩!!」


「し…進藤!?」


「ちっ…真由美…また後で話そうぜ…」


長谷川先輩は去って行った。


「…すまなかったな…進藤…」


「あの…白鳥先輩…困っている事があるんなら…」

そう言おうとした時に相川さんがやって来た。


「白鳥先輩!!!

 申し訳ないですが、これ以上進藤君に近寄らないで下さい!!!

 良くない噂のある貴方がこれ以上近寄ると進藤君に迷惑が掛かるんです!!!」

相川さんは白鳥先輩に敵意丸出しで言い放った。


「………」

白鳥先輩は黙ってその場を去って行った。


・・・


その頃社長室にて:


「ふ~ん…相川 あかり、白鳥 真由美か…

 この子は面白い子ね…話してみたいわ…

 この子は…少々問題あり…ね…」


 

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