第95話 傍観者たち②

注)今回もにわ冬莉さま『平安戦隊オカメンジャー』コラボ回です。未読の方は是非、ご覧下さい!

https://kakuyomu.jp/works/16817330655979340344


腐海 邪悪龍封印の間


 封印の間の石室の中、石で作られた安楽椅子にしなだれかかる腐海女帝ヴァデュグリィとその横に侍る腐天使は壁にかけられた石版に映し出される孤児院の様子を見ていた。


「具腐腐〜。冥王もなかなか面白いことをするようになったのう」


「はい! オカメンジャーのコス! 懐かしいでっす! 子供の頃、よく見てまっした!」


 ニヤリと笑うヴァデュグリィに腐天使の右半分の女、ユウが興奮しながら答える。


「ユウ。貴様が子供の頃ということは、外つ国の『てれび』とかいうものか?」


 腐天使の左半分の女、サームナリィがユウに質問する。


「そうでっすよ〜、サーミィ。『平安戦隊オカメンジャー』って番組で〜、ヒョットコーンっていう悪の組織と戦う話でっす! 私は日常パートでブラックの女の子がレッドの男の子をイジり倒すのが好きだったんでっすよ〜。『オカメンジャー』の影響で女子が男子をイジるのが流行ったり、企業でもセクハラ被害の男女比がひっくり返ったり、スゴかたでっすよ〜」


「ん? 『平安戦隊』? 『冥王戦隊』と冥王さまたちは言っておられたようだが……」


 ユウの答えにサームナリィは疑問を呈す。


「ん〜。にわかがよくやるコスの『解釈違い』って言うより、単に情報が足りてないだけでっすね〜。というより、この異世界に私がいた現実世界の『オカメンジャー』の情報が断片的にでも伝わっているっていうのが驚きでっすけど〜」


「ほう。『断片的』か……。それは興味深い……」


 腐天使の左半分の唇が笑みを浮かべる。


「サーミィ、わっかりまっした〜? 冥王さまたちは『オカメンジャー』の能力の再現ではなく、自身の能力を見せてくれるかもなんでっすよ〜」


「ふふっ。『真魔大戦』にてお隠れになった冥魔将ラクシュバリーさま……。その後釜となったあのガイコツという者……。『混沌カオス戦争』では戦いに参加せず、『獣人族独立戦争』『神託戦争』では力を振るった形跡はあったにも関わらず、我らの情報網をもってしてもその実態は明らかにならなかった……。その片鱗を見られるというのか!」


 サームナリィが嬉しそうに笑う。それに釣られてユウも楽しくなってしまう。


「サーミィの推しなんでっすよね。ラクシュバリーさまは。私もお会いしたかったでっす!」


 それを聞いたヴァデュグリィは顔を顰める。ユウに『また始まるぞ』と言いたげな様子だ。それを見たユウも『しまった』という面持ちになる。


「前にも話した通り、我らが女帝さまの前身たる邪悪龍さま、魔王さま、冥王さまには『魔将』と呼ばれる陣営最強の部下がいる。畏れ多くも私はかつての邪悪龍さまより『龍魔将』を拝命していたが、冥王さま麾下の『冥魔将』ラクシュバリーさまは冥王軍最強のアンデッドにして『魔将随一』と謳われたお方! 人間如きの寄せ集めなぞ、あの方が『餓骨杖』を一振りするだけで壊滅していたものだった……。私はあの姿を見て……」


--『前にも』……? 妾が数えた限りでは2000回をゆうに超えたはずじゃがのう……。


--女帝さま! それは言いっこなしでっすよ!


 ヴァデュグリィとユウはこの100年間で数千回は聞かされた話を繰り返すサームナリィを横目に嘆息するのだった……。

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