第89話 覇王神破斬
アル・グローラが構築した結界は輝きを増す。その胸元に突き出された両手には右手にオカメ面、左手には般若面が現れ、その間に魔力が凝縮されていく。
--これはまずいな。ローラ必殺の……
No.103レオンはこの場をどう切り抜けるか思考を巡らす。そうして浮かんだのは--
◇◆◇
17年前 ザドレニア大陸 魔大公グランバーズ領 覇王城
若き日のレオンとその仲間たち--アル・グローラ、フリュースティ、アレン、ヴェイン--は覇王城の練兵場で覇王グランバーズと戦っていた。
レオンたちの仲間であるメディナをグランバーズから取り戻すために。
一人、また一人と戦闘不能に追い込まれ、レオンとグランバーズとの一騎討ちの様相を呈していく。
二人の剣の撃ち合う音だけがいつまでも続いていくように思われた。
「わっはっは! この儂相手によく粘りよる!」
「うるせえ! これが愛の力だ! クソジジイ!」
「ふん! 足りぬわ! 我が娘、メディナが欲しければ更なる力を儂に示せ!」
グランバーズとレオンは撃ち合ううちに何か通じ合うものを感じるようになっていった。
そこに--
ギィィン
グランバーズの足元に八角形の力場が形成され、動きを封じていく。
「何だこれは!?」
「貴方の動きを封じるとともに星の産声を召喚する結界陣……」
倒れていたはずのアル・グローラがが何とか体を起こし魔力を高めていく。
「ほおぉぉ? それはまずいな。では、その結界、破らせてもらうぞ!」
グランバーズは剣を逆袈裟に構え、力を高めていく。
「巨人に遭えば巨人を斬り、神に遭えば神を斬らんとする我が秘剣--」
結界の制止を振り切り剣を振り下ろす。
「覇王神破斬!!」
◇◆◇
現在 アステリア王国 冒険者学園ヘクトール グラウンド
「オカメ般若エクスプロージョン!!」
「覇王神破斬!!」
バチィィィン!
超新星爆発を結界内に召喚するアル・グローラの秘術は結界を破壊されたことによって不発に終わる。
「そ、それは……覇王の……」
「巨人、神、全てを斬らんと欲す覇王の秘剣……。二度も見たのだ。使えるようになったとしてもおかしくはなかろう?」
驚愕するアル・グローラにNo.103レオンが答える。アル・グローラが使った結界は物理攻撃で破壊することができない。魔法であってもアル・グローラ以上の魔力を有しない限り破ることはできない。それを可能にする覇王の秘剣……。それをNo.103レオンが使えるとはアル・グローラにとって計算外だった。
--くっ……。今ので魔力の大半を使ってしまった……。魔力を練らなければ……。
アル・グローラは魔力を練る時間を稼ぐために後方に飛ぼうとする。
「させるか!」
No.103レオンはアル・グローラを追って剣を振りかぶりながら飛ぶ。
「ローラおばさん、危ないデュフ!」
ベルが叫ぶ。助けに入りたいが、まだ体がうまく動かない。
ピピィィィ……
そこに小鳥の声が鳴り響き、花の香りが流れ、蝶が舞い始める。
そして、薄絹のヴェールを被り双剣を佩いた女がゆっくりと歩いてくる。
--サラ?
それを見たシンは幼馴染のサラと姿がかぶって見えた。
その女はゆっくり歩いているように見えて、一瞬でNo.103レオンとアル・グローラの間に入ってその剣を自身の双剣で受ける。
「ローラ。久しぶりに学園に来たと思ったら、見覚えのある鎧をまとって見慣れた剣を持ったスケルトンと貴女が戦っている……。どういうことか説明してもらっていい?」
「ええ、フュース。その前に戦いを終わらせるのを手伝ってもらっていいかしら?」
アル・グローラはその女--『剣姫』フリュースティ--に答えるのだった……。
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