第79話 No.20“女盗賊”ヂェーン
「あんたの想いをあたしに示して見せな!」
ギィン!
No.20が逆手に持った短剣がディルに当たる瞬間、透明な障壁に遮られる。
冥王がクラス全員に渡した杖の効果だ。
--嘘だろ? 勝手にバリアを張ってくれるなんて……。これがあれば何とかなるか?
ディルはポケットから13センチメートルに縮めておいていた棒を取り出す。
「伸びろ!」
130センチメートルに伸びた棒を両手に構える。
「いいねえ。あたしは偉大なる冥王様の忠実な僕『ノーライフ・ソルジャーズ』、No.20“女盗賊"ヂェーン! ディルの坊や! あたしから金を取り返してみせな!」
No.20ヂェーンは名乗りをあげると短剣を逆手に構えながらディルに突進し、斬りかかる。
ディルは前に出していた右足を引き、短剣をやり過ごすと同時に左手を前に出し、棒で一撃を放つ。更に右足で一歩踏み込み左手を引き右手を前に出しもう一撃を放つが、難なく躱されてしまう。
--クソ!
ディルは毒づく。一撃を当て、よろめきでもした隙に金を取り返そうと思っていたからだ。
ドン!
No.20ヂェーンの右回し蹴りがディルの腹に入る。
障壁に阻まれるが、蹴りの勢いでディルは吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられる。
--体が痛え……。骨、折れてんじゃねえか? 『ノーライフ・ソルジャーズ』の上位ナンバーだけあって、バリアで防いでも大ダメージかよ……。
ディルはいつものように逃げ出したくなった。面倒なことからは逃げて周りの小言を聞き流せば、それで終わる。そうやって今まで生きてきた。
しかし--
『シスターだけにそんなことはさせないからね!』
自分を身売りに出すと言ったシスターに対して、自分の身も売りに出すと言った少女の顔が脳裏をよぎる。その諦念が混ざった微笑が--
『あんた、留年したの? ダッサ。こんなとこに来てないでやることやったら?』
そして、留年することになったときの憎まれ口--
--リズ、お前はあんな笑い方をするんじゃなくて、憎たらしい口をきいてたらいいんだよ! でなきゃ、ギャフンと言わせられねえじゃねえか!
弱気になっていたディルの目に力が戻る。棒を杖にして立ち上がって構える。
それを見てNo.20ヂェーンは満足そうに笑う。
--そうさ! 坊やの分際で好きな女を守りたいって言うなら、この程度でおねんねしてちゃ、ダメなんだよ!
「坊や! あたしの蹴りを受けて立ち上がるなんて褒めてあげるよ! それじゃ、仕上げと行かせてもらうよ! 『
No.20ヂェーンが掲げた短剣から紫の光が発せられるのだった……。
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