第73話 受難の予感

王都商業地区


 冥王とその部下たちは般若面とオカメ面をつけたまま歩いていた。


 通行人は冥王たちを見て少し驚いた様子を見せるが、そのまま通り過ぎる。春の陽気で変わったことをしたくなるのは、どこの世界でも同じということだ。そのように通行人たちは理解した。


「冥王さま。我らにも王都散策の許可を」


 冥王の影から声が発せられる。


「ホホホ。No.20ヂェーン、No.77ジェイ、No.99ドーン。理由を聞いてもいいですかねえ」


 冥王は自身の影から発せられる声に答える。


「は。Zクラスの生徒に興味深いことをしている者たちがおりまして。彼らに『試練』を課そうと愚考した次第です」


「ホホホ。『試練』ですか……。面白そうですねえ。何かご入り用のものはありますかねえ?」


「では、金貨を三袋頂戴したいと思います。」


「ホホホ。分かりました。No.4ビテク。彼らに金貨を。」


 冥王は財務担当のNo.4に指示を出す。


「御意」


「ありがとうございます。それでは……」


「お待ちなさい」


 冥王は金貨を受け取ったNo.20たちを呼び止める。


「ホホホ。これを被って下さいねえ」


 冥王はNo.3に古ぼけた三つのオカメ面を受け取り、No.20たちに渡す。


「「「全て冥王様の御心のままに!」」」


 オカメ面を受け取ったNo.20たちは冥王の影から飛び立つ。


 ◇◆◇

「No.4ビテク。彼らが興味を持ったのはあの三人ですかねえ」


 冥王は自身の影に問いかける。


「は。彼らのスキルと性格から、セタ、ディル、タークの三人で間違いないかと」


「ホホホ。やはりそうですか……。では、セタさん、ディルさん、タークさんの未来予測を。ちょっときな臭いんですよねえ」


「は。かしこまりました」


 冥王は死者を裁くために過去・現在・未来の全てを記録するアカシック・レコードのアクセス権限を有する調査官を冥府に置いている。


 ただし、そのアクセス権限については、死者及び『盟約の子』に関することに限定する契約をアカシック・レコードを管理する運命の三女神と結んでいる。

 その情報に基づき、未来予測をする必要があると冥王は考えたのだ。


 しばらくすると、


「冥王様。調査官からの未来予測報告書です」


 冥王の影から一枚の紙が出現する。


「ホホホ。なるほどなるほど……。これは、ちょっとした余興をする必要がありますねえ」


 冥王は報告書を読み、ニヤリと笑うのであった……。

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