第4話 冒険者にお仕置きを

===冒険者ギルド===


 俺と猫のハクと犬のジジはそれぞれの飲み物を飲んでいた。

 こちらは果物系のジュースを飲み、ハクは牛乳をお皿に乗せてもらって舐めている。 

 ジジもそんな感じだ。


「それにしてもかわいいですねぇ」


 そうハクとジジに声をかけたのは冒険者ギルドの受付嬢をしているフォルナであった


「お仕事はいいのですか? フォルナさん」


「あ、いいのいいの今休憩だからね、それにしても何か憑き物が取れた顔してますね、何かいい事でもあったんですか?」


「うん、まぁね、昔から縛りつくされた鎖を破壊してきたんだよ」


「例えの意味が分からないですけど、まぁそれならいいですよ」


「フォルナさんは俺の事追及したりしないんですね」


「それはしたいですけど、話したくなったら話せばいいんだと思いますよ」


「そうですね、そうします」


「最近、セルエドさんて人がボディガードだと称して付きまとうのに疲れてしまって、一応わたくしも元冒険者だから撒く事は出来るんですが、まったく、ジェルさんに愚痴っても仕方ないんですけどね」


「そうですか、代わりに俺がボディガードしますか?」


「あ、それいいですね、そしたらセルエドさん諦めてくれるかしら」


「それは分かりませんが」


「そうですよねー後2時間待ってください、休憩終わりの仕事をして帰りますので家へ」


「了解です。俺はハクとジジと一緒に飲み物でもちびちび飲んでますよ」


「いやー持つべきものは友ですなぁ」


 そう言ってフォルナさんは冒険者ギルドに受付へと戻っていった。

 先程から周りの視線がとてつもなく痛いのは気のせいではないのだろう。

 その中に恐らくセルエドという冒険者もいるんだろうから。


 ギルドメンバーに裏切られ、俺は地獄に落ちて最強になり戻ってきた。

 しかし現在の俺のスキルは0だ。そう何も習得していない状態なのだ。


 この世界にはスキルなしと呼ばれる人達がいる。

 彼等は冒険者になってもすぐにリタイアしていく。


 俺もスキルなしと同じなのだが、地獄で培ったステータスが最強にさせてくれるし。レベルも今は隠蔽されてるが、表示にするととんでもない事になる。


 人々は基本的にレベルを隠蔽させる。

 これはスキル隠蔽というものがあるわけではなくてそういうシステムだ。

 この世界には鑑定スキルを習得しているものがいる。


 それがフォルナさんだと思われる。

 だが俺のレベルは隠蔽どころの問題ではなく、鑑定しても表示不明とかになる。


 それが意味するのはレベル10000を超えているという事だ。

 だからフォルナさんはこの前慌てて追いかけてきたし、今は何も問いかけてこない。


「お待たせしました」


 1人で自問自答しているとフォルナさんがやってきた。

 今のフォルナさんは青いワンピースの上から薄でのカーディガンを羽織っていた。

 まるで妖精のような姿に絶句していたが。


「綺麗ですね」

「ありがとう」


 思わず呟いていたら、それにフォルナさんは答えてくれた。


「いこっか」

「はい」


 俺の右側には白猫のハクがいて、左側には黒犬のジジがいる。

 黒犬のジジと俺の間にフォルナさんがいる配置だ。


「受付の仕事って意外と大変だなーって最近思ってまして、昔みたいに冒険者に戻ってみようかなーって思うんです」

「へぇ、意外ですね、てっきり受付嬢で最後まで働くものと思ってました」


「ずっと椅子に座っているとお尻が痛くて」

「それもそうですよね」


「索敵スキルに反応があって、20名に取り囲まれてるみたいです。結構離れてますが四方からですね」

「そうですね、俺が片づけますよ、殺しちゃダメですよね」


「もちろんです。というかジェル君には無理かと」

「安心してください俺がついてますから」


「いやー彼等Bランクだよ、ここは逃げましょう」

「そんな事したってあいつらしつこくなるだけでしょ」


「それもそうなんだよねーでもセルエドさんなら3名くらいで来ると思ってたわたくしもバカだったから、ジェル君逃げましょ」

「逃げませんよ見ていてください」


 そんな言い合いをしているうちに俺達は取り囲まれてしまった。

 リーダー格らしき人物セルエドが地面に唾を吐き出すと、こちらを指さした。


「うぉい、フォルナから離れろ雑魚」

「どうして俺が離れなくちゃいけないんですか?」


「それはフォルナが俺の彼女だからだ」

「そうなんですか?」

「違うわよ」

「だそうですよ」


「うるさいうるさい、お前が来てからフォルナはあさっての方角を見てお前の名前ばかり呟きやがって」

「そうなんですか?」

「いやーえへへ」


「セルエドさん殺されたいですか?」


「はぁ? 意味が分からないんだが」


「だから聞いてるんです。今回20名全員をぶちのめします。それでもフォルナさんを困らせるなら殺します。死体も跡形もなく消しますので証拠が残りません」


「ぎゃはははは、こいつ頭いかれてるぞセルエド、こんな雑魚俺1人でぎゃああああああ」


「人が話をしている時に割り込まないでください、俺が訪ねてるのはあなたではなくてセルエドさんです」


 俺の右手には先程しゃしゃり出てきた男の右腕が握られていた。

 これで彼の冒険者ライフは難しくなるだろう。


「あがああああ、腕をか、かえせえええ、回復するんだ」


「食べていいぞジジ」


「がう」


「う、うそだあ。俺のう、うでがああああああ」


 右腕はジジがおいしく平らげた。

 

「な、何をした。お前とあいつの距離はあるはずだぞ」

「ものすごく速く走って、ナイフで両断してものすごく速く戻っただけです」


「ほぼ見えなかったぞ、どうせ魔法だろ、ずるいなお前」

「もうめんどくさいです。ここで君達全員の冒険者ライフ生命を終わらせます」


 次に起きた現象をフォルナさんはこうギルドマスターに説明したという。


「気づいたら1人また1人と体の四肢の1つのパーツが吹き飛び、それを黒犬が高速で食べていくというありえない現状でした。何もかも早く動きすぎてわたくしの目では追いつくことが出来ませんでした。最後に気付いたらセルエドさんの両足がなくなっていました。黒犬のジジはおいしく食べていました。そう足をです」


 激痛の悲鳴が辺りを支配している。

 野次馬が次から次へと集まってくる。

 野次馬は確かに見ていた。俺とフォルナが突っ立てるだけで、20名の冒険者の四肢がちぎられ犬が食べている姿を。


「あがああああ、な、なんだ。あ、足がああああ」

「それならフォルナさんを追いかける事は出来ないでねぇ、残念です、冒険者の先輩さん冒険者ライフもう無理ですね、隠居してください」


「ゆ、ゆるさ、ゆるさんん、おぼえてろおおおジェル」

「はい、ちゃんと覚えておきます、ジジ、マーキングはすませましたか?」

「うぉん」


「このくそ犬俺にしょんべんかけるんじゃねー」

「これはジジの能力でしてマーキングした相手が近くにいると反応するんです。あなたはどうやって俺に仕返しをしてくれますかね」


「なんだってえええええ」


「とりあえず、救急車読んだから、ジェル君こいつらほっときましょ」

「そうですね、そうしますか」


「ふざけんなお前が犯人だろ」

「皆さん僕が彼等を攻撃している姿見ました?」


 その場にいた野次馬は見ていないとそれぞれが言う。

 そしてセルエドは真っ赤になって気絶した。

 他の冒険者達もそれぞれが気絶していく。


「さて、フォルナさん帰りましょうか」

「う、うん」


 その後、俺とフォルナは無口で歩き続けた。


「気になりますよね、俺の能力、いつか教え出来る時があると思います」

「う、うん」


「ではここまででいいでしょうか」

「うん、助かった」


「もうセルエドのストーキングはなくなると思いますよ」

「それなら嬉しいけど」


「けど?」

「できたら暇な時間あったらこうやって送ってくれると嬉しいな」


「それはいいですよ、フォルナさんの頼みですから」

「うん!」


 その後フォルナをマンションの部屋まで送って、俺は立ち去った。

 階段を下るのも面倒くさいしエレベータという機械を使うのも面倒だったため。


 廊下の窓を開いて、7階からジャンプして降りた。

 地面に着地しても軽い衝撃しか体に走る事はなく。

 右肩と左肩にはハクとジジが乗っていた。


「まったく、王には困らせられますにゃ、あんな雑魚20名一瞬で蒸発させる事ができたですにゃ」

「王よ、あやつらは女性を困らせる害虫でござろう、なぜ殺さなかったのじゃ、またフォルナ殿に虫がつくかもしれんでござろう」


「いいか、ああいうタイプは放っておくほうがいい、意外なものを連れてくるものだよ」


「そうなのかにゃ」

「それならいいでござろう」


 俺達は闇の中に消えた。本気で走ると数秒で遥か遠くの場所にある本拠地に到着する事が出来る。


 そこでは希望の魔王が約1000体のモンスターを引き連れて王国を築いている。

 現実世界の時間で3年前に盾剣ギルドで攻略したダンジョンを一から作り直したようだ。

 階層事に分かれていたダンジョンを全て統一し、1つの世界そのものに再構築したようで。

 

 ダンジョンの中に世界が広がっているという感じだ。

 玉座の隣で悠然と直立不動で立っていた男性がいた。

 彼こそが希望の魔王だ。


「これは王よお帰りなさいませ、なにかいい事でもあったんですか?」

「ああ、とてもいい事があった。さて現在の王国状況を聞こう」


「御意でございます。まずこの王国に名前をつけませんか、ダンジョン名が無ければダンジョン攻略者達も困るでしょう」

「ダンジョンの入り口に巨大な看板を立てるやつか?」

「その通りでございます」

「ああゆうのってダンジョンの王が決めてるもんなのか?」

「もちろんでございます」


 俺は頭を押さえて軽くめまいを覚えた程度だった。


「それなら地獄のダンジョンでいいんじゃ、俺達地獄から来たようなもんだし」

「それにいたしましょう、では今日から地獄のダンジョンになります。後で巨大な看板を作らせます。さて現在の状況ですが、とてもよい知らせが沢山あります」


1 ダンジョンの鉱山から多種多様の鉱石を無限に近い量発掘できる。

2 太陽がないので人口太陽を魔法で設置する事に成功したため、農作業が可能。

3 人間種に近いモンスターは変身する事で人型になり各地にて交易が可能。

4 武器防具マジック道具などの製作の準備が開始される。

5 最高レベルで20000以内な為、そう簡単にやられるモンスターはいない。


「以上になります」

「了解した。あとは色々と任せようと思う、希望の魔王よ」


「御意でござります」


「元盾剣ギルドのメンバーの居所は掴めたか」

「御意でございます。1人見つける事が出来ました。札幌にてまだ滞在している模様です」

「それは助かる、では俺は移動する」


「王よ寝たほうがいいのではないのですか、地獄から戻ってから一睡もしていないと思われるのですが」


「なぁ、魔王、怒りって静かになるとどうなると思う?」

「はい、わかりません」


「ふつふつと体内で燃え滾り、眠いという概念を吹き飛ばす程だ。今の俺には眠いという欲求は存在しない」

「王のいう事は本当だにゃ、王の体から眠気の匂いがしないにゃん」

「ああ、本当でござろう、逆に、ぎゃ、ぎゃ、逆に怒りの匂いが人間の規定値を超え散るというかでござる」


「あ、そうでした。王はそれほどまでの人でしたな、がんばってください、こちらは任せてください」

「ああ、任せるさ」


 そうして俺達は高速移動をして札幌の街に戻った。

 さすがに何回も城壁通ると門番の目があるので、城壁をジャンプして侵入していた。


 その日の朝冒険者ギルドに向かった。

 しかしそこにはフォルナはいなかった。


「あんた、大変だ。フォルナが誘拐されちまった」


 そう言ったのはフォルナの友達だった。


「この手紙を残してんだ」


 手紙を高速で開くと読破した。


 手の平で手紙がくしゃくしゃになりながら。

 

 怒りの咆哮をあげようとして。


 はっと周りを見ていた。


 手紙にはセルエドの名前があり、フォルナを助けたくば廃墟工場跡にこいういうものだった。


 呼吸を止めて呼吸した瞬間その場から消滅した。


「あれ、あいつ消えたぞ」


 冒険者達にはそう見えた。



 

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