「それで、ここからは返事だ。お前の手紙を読んだ返事。


 ただ、さっきも書いたけどさ、おれにはやっぱ難しいよ。

 お前の手紙を読んで、それで今のおれが思ってることに、気持ちに、言葉がまだ追いついてこない。なにを書いたらいいか、よくわからない。


 ただ、うれしいって思ってるのはわかる。

 ありがとうな、って言いたいのもわかる。


 これって、駅でお前と話せたときに思ったことと同じだ。

 お前に会ったのと、手紙を読んだのと、同じ気持ちになったって、やっぱりお前が手紙を書くのが上手なんだってことなんだと思う。だってこれって、手紙の中にちゃんとお前がいるってことだよな。それってすごいことなんじゃないか?


 おれは今書いてるこの手紙にも、ちゃんとおれがいるといいと思う。

 なにを書いたらいいかわからないから、わからないってことをちゃんと書く。


 それでいいのか?

 わからないから、教えてくれたらおれはうれしい。


 じゃあ、この手紙もそろそろ終わろうと思う。それで、そう、おれはどう書き終わるかだけは決めてたんだった。ほんとうは、今ここにそれを書いてもつながらないなって思うんだけど、でも決めたとおりに書いてみようと思う。


 そうしてあの日、おれは走り出した。

 言葉は全部あとからついてきたんだ。」

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