♡第15話♡ 超日常回ッッ!!

 今日は晴天ポカポカいい天気です。

 幽霊の私でさえダラダラしたくなるくらいに。

 なので今回だけはコペニュがまったく捜査をしないのも許しちゃいます。

 誰にだって必要ですからね、息抜きは。


 おやおや、そうこうしているとグラウンドに人だかりができていました。

 どうやらアロマがコペニュに勝負を挑んでいるようです。懲りないやつですね。

 周りにいるのは、コペニュの活躍に期待している野次馬さんたちのようです。


「なーっはっは!! 今日こそあんたに勝つわ! コペニュ!!」


「クスクス♡ そんなこといって、また負けにきたんでしょ? 負けるのクセになっちゃってるんでしょ♡♡」


「いい気になるなよお!!」


 そう意気込んで、アロマは魔法陣を出現させ、額に角が生えたクマを召喚しました。

 一般的な召喚獣です。ファースラー等に比べたら、さして珍しくはありません。

 なるほど、今回は召喚術勝負なわけですね。


「くっ、やっぱり召喚魔法は疲れるわ。あんたよくこんなの連発できるわね。しかも幻獣種を」


「だってパーニアスだもん! ていうかアロマも使えたんだ、召喚魔法」


「必死に習得したのよ!」


「面白いじゃない。お互いにモンスターを召喚して、他の魔法や、罠で競い合う。ゾクゾクするね」


 コペニュもファースラーを召喚し、アロマと火花を散らします。


「さあはじめるわよ!」


「来なさい、コペニュ!」


「「デュエルッ!!」」


 はい、それアウトです。

 巨大な権力を敵に回さないでください。

 せめて伏せ字で隠してください。


「私のターン、ドロー!!」


 何を引いたんですか? 起訴状ですか?

 とんでもない大企業様と正面から戦おうってわけですか?


「私はさらにサードスターを召喚!!」


 弁護士も召喚しておいてください。

 質問きてた。

 しょうもないネット小説で集◯社様の権利を侵害しても問題ないですか?

 結論、有罪になることもある。


 これ以上このガキどもを観察していると裁判沙汰になりかねないので、マリトの様子を見に行きます。

 まだ彼のことよくわかっていませんしね。


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 校舎をグルグル飛び回っていると、人気のない音楽室で彼を発見しました。

 やや顔の良い男子と一緒のようです。


「ねえセオくん、ボク、ちゃんとしてきたよ」


「な、なにをだよ」


「わかってるくせに」


 マリトはグッと男子にすり寄ると、彼の手を掴んで、自分の尻を触らせました。


「ほらね、あるでしょ?」


「や、やめようぜ。俺たちはそんな関係じゃ……」


「じゃあいまからなろうよ」


「……」


「ボク、可愛くないかな?」


 あーはいはい、こっちもアウトですね。ツーアウトです。

 音楽室で卑猥な声を奏でるつもりですか? させません。

 何なんですかね。みんな消したいんですかね、この小説。破滅願望でもあるんでしょうか。


 ちなみに、マリトが正統派イケメン男子なら大興奮の展開だったのですが、残念ながら私は同じBLでも男の娘には興味ないのです。


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 しょうがないので、今度はサーニャを捜してみます。

 いました。保健室にいました。

 どうやら足をくじいたようで、メラルの回復魔法で治してもらっているようです。


 しかもふたりっきりです。


「あ、ありがとう。メラルちゃん」


「いいんだ、保健委員だからな」


 メラルは回復魔法の使い手です。そういう子は、休み時間に保健の先生のお手伝いを頼まれやすいのです。

 こんな学校ですからね、怪我人が多いんですよ。


「いったいどうしたんだ?」


「悩んでたら、転んじゃって」


「なにを?」


「どうすれば、もっといろんな魔法が使えるようになるんだろうって」


「……」


「アリアになりたいから……」


 会話が途切れました。

 コンプレックスを口にした気まずさ、フォローの言葉を探す間。2人だけの空間を、張り詰めた空気が包みます。


「姉さんに憧れているのか」


「う、うん」


「私もだよ」


「そうなの?」


「もちろん。あんな人だから、憧れるなっていうほうが無理だ。あの人に近づきたくて、剣も魔法も、一日とて修行を怠っていない」


 その割には、姉のメイスは妹に対して冷たいですけどね。

 先日、メイスがコペニュと戦ったときも、メラルを無視したりしていましたし。


「昔は姉さんも優しかったんだけどな。私が姉さんを目指してこの学校への入学を決意してから、何故か態度が変わったんだ」


「ふ、不思議だね。せっかく入学できたのに」


「あぁ、できるならちゃんと話し合いたい。私をどう思っているのか、それに、母さんのことも」


「お母さん?」


 ハッと、メラルは反射的に自身の口を抑えました。

 どうやらつい口を滑らせてしまったようです。

 しかしもう言葉にしてしまったのは事実。

 それに相手は可愛いサーニャ。メラルは諦めて、答えました。


「聖女だったんだ。そしてこの学校の教師でもあり、聖女クラスで神学を教えていた。……だが3年前、姉さんが入学する前に、行方不明となった」


「え……」


「現場には大量の血が残されていた。おそらく、殺されたんだ。私は、その死の真相を追いたい。そして姉さんも同じ気持ちなのか、知りたい」


 その事件については聞いたことがあります。

 他人事のように思っていましたが、状況としては私と似ている。

 まさか犯人は同一人物なのでしょうか? メラルのお母さんにも、秘密があったのでしょうか?


 むむむ、今回はほのぼの回になる予定でしたが、シリアスな空気で終わりそうです。


「と、ところでサーニャ、コペニュから聞いたんだが、毎晩コペニュとくっついて寝ているというのは……本当か?」


「え、うん。コペニュちゃん、夜は甘えん坊なの」


「うぐぅ、羨ましい……。わ、私も、一緒に……」


「あ、じゃあ今度、3人で寝ようよ! って、私なんかと一緒でいいならだけど……」


「も、もちろんいいに決まっている!! いや、やっぱりやめておく」


「なんで!?」


「緊張してたぶん眠れない」


「友達と寝るだけなのに?」


 あー、これは。サーニャにとってメラルは、あくまで友達なんですね。

 結構メラルから好意をアピールされてますけど、鈍感なのか冗談だと思っているのか。

 頑張れメラル。コペニュからサーニャを奪い取れ!!


 てなわけで、おしまい。

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