再会
しばらくたったある日、みづきさんが言った。
『今日は、〇月×日だったな』
「そうですけど、どうかしました?」
『今日が事件があった日なんだ』
「え?そうだったんですか?じゃあ、じゃあ、みづきさんの』
私は続く言葉を飲み込んだ。
でも、みづきさんは構わず続きを口にした。
『わたしの、命日だ』
「う……(言われちゃった)」
『今さら、気にするな。ところで、今日はバイトは休みなのか?』
「うん。今日と明日はお休み」
『それなら、連れて行ってほしいところがあるんだが、頼めるか?』
「いいですよ。今日は、どこです?」
みづきさんは、ちょっと遠いがと前置きして隣の市にあるお寺の名前を口にした。
「お寺?」
『ああ。父方の墓がそこにあるんだ。だから、わたしもそこかもしれないと思ってな』
「お墓参り、行くんですか?」
『墓は嫌いか?』
「いやいやいや。そうじゃなくて」
『わたしが、自分の墓参りすることになるのが気になると?』
「ぶっちゃけ、そうです」
『気にするな、といっても気になるだろうが。まだ、そこに入っているとは限らないし。少なくとも、わたしのじいさんとばあさんは入っているんだ。その墓参りに連れて行くと思ってくれ』
たしかに、みづきさんのおじいちゃんとおばあちゃんは確実に埋葬されているから、その墓参りといえばそれまでだけど。
でも、なにも自分の命日に行かなくても。
そうは思ったけれど、みづきさんの頼みをかなえるため、私はいつも通り原チャリを走らせた。
途中で花屋さんに寄って花を買い、少し長さを短く切りなおしてもらった。
そしてペットボトルの水を買い、お寺に向かった。
駐車場の端に原チャリを停めて花と水を持ち、みづきさんの道案内にしたがってお墓に向かった。
『この列の、一番向こう側がウチの墓だ』
石畳の上を歩いていくと、言われたお墓の前に人かげが見えた。
「みづきさん?だれか来てるみたいですけど」
『そうだな。誰だろう?』
お墓のほうを向いているので、顔はわからない。
おそらくは中年?の男性のようだけど。
(な~んか、見覚えがある気がする)そう思いながら近づいていくと、気配を感じたのかその人が私の方を見た。
「え?え?え?と、父さん?なんで、ここにいるの?」
「瑞希こそ、こんなところに、なんでいるんだ?」
その人と私は、ほぼ同時に言った。
まさか父さんに、こんなところで会うなんて!!
いや、えっと、なんで?もだし、どうして?もだけど。
どこから、ツッコんだらいいの??
困惑している私を、更にびっくりさせる声が頭の中に響いた。
『ま、正志??』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます