第4話 放課後の美化
美化は授業を終え、将棋部の部室を
「今日は来ないかもねー」
予想通り、影山映莉は来なかった。
連絡もない。
美化は部活を終え、自転車での帰り道を物憂げにゆっくりと走っていた。
「影山、ついに彼氏ができたのかな? 万亀君とデートでもしてたりして」
そう口にしながらも、美化の心の中はなんとも言えないモヤモヤに支配されていた。
(友の恋、応援してたはずなのに。この気持ちはなに? 影山を万亀君に取られたくない。いやいや、そんな典型的な女子のやつとは違うし!)
美化は自転車のスピードを落とし、角を曲がる。
(あの影山映莉が失恋からなにを得るのか、もう一度ちゃんと聞いてみたい。なんか、そう思う。友として最低なのかも知れないけど)
美化は人は失敗から学ぶ事の方が重要であると将棋を習う中でインプットされてきた。
『恋』を失敗したら人は何を得るのか?
なんとなく傷付くというのは知っている。それ以上が分からない。本や雑誌に書かれているような綺麗事はいらない。唯一の友、影山映莉のリアルが欲しい。
恋をした事のない美化は、自分ができてない経験を影山映莉から吸収しようと無意識に貪欲だった。
思春期のそんな自分の美しさには、当然気づく事はなかった。
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