第11話 スキル鑑定!

アリスの素晴らしい剣舞が終わり、

いよいよ始まるスキル鑑定に胸が高鳴る…

先程までの肩の痛みは全く感じない。

緊張してアドレナリンが出ているのだろう。



きっと良い運命が待ち受けているはずだ…

自分を鼓舞しながら会場に向かう…





「俺です!俺がクリス・レガードです」




そして目の前の鑑定士が鑑定を開始する。

俺の目の前にアリスと同様に輝きが生まれ始め、その光は瞬く間に全身を覆っていく。

更に波のように光の輪が会場に広がる。

その反応を見てアリスの時以上に、

会場は静寂に包まれている。




唾を呑み込み、その瞬間を待つ…




「か、鑑定結果が出たぞ…」





観衆のざわめきが起こる…





「こ、これは…

 スキル名は…………けいだ!」






一瞬聞き間違えたかと誤解する…

誰しもがそう思う。





「も、もう一度仰ってくださいませんか?」



父上も心底心配だったようだ…

1番最初に父上が動き鑑定士に問いかけた。





「スキル名は、休憩だ!」




まだ静寂は続く…

事実を受け止められない者、どのようにリアクションして良いか分からない者といる。

クリスとアリスも嫌われるような悪評は聞かない。

2人とも容姿端麗であり羨望の目で見られる事はあっても恨まれることはない。

貴族たる者、自分に厳しく従者に信頼される者になれと躾けられてきた。




だがクリス自身が感じる落胆は果てしない。



「お、お兄様」



アリスもクリスを気にかけている…




「そして、このスキルは初めての事例。

 解明するまでは不明スキルとする!」




鑑定士は大きく宣言した。

未だ発現されていない新規のスキルは、

今後の努力次第で化ける可能性がある。

そのようなスキルは不明スキルと分類される。




「過去に不明スキルは少数だが鑑定された…

 成功するか、本人次第である。

 精一杯励みなさい」




剣術スキルを発現させるために死に物狂いで訓練してきただけに落胆を隠せない…

きっの落ち込んだ様子を察知したのだろう。

父上が俺に声をかける。




「お前もアリスも人生を賭けてきた…

 そのお前に女神様がくださったのだ。

 クリスよ、胸を張れ!!

 お前は無能力者ではない」




父の俺を想う言葉が心に刺さる。

父とアリスと歩んだ日々を思い出し、

気づけば目から涙が溢れ出す…

俺は、父に認められたかったのだ…

今までかけて貰いたかった言葉を聞き涙が止まらない…




「クリス…

 自信を持ってお前の剣を見せるのだ!」




そしてクリスは用意してきた模擬剣を持ち、

剣舞を披露していく。


アリスの時よりも剣の動きに無駄はあるかもしれない。

キレもアリスの方が上かもしれない。

必死になる姿は無様かもしれない。

それでも観客は気付けばクリスの剣舞に引き込まれていた。

目から溢れる涙を必死に堪えながら舞うクリスに心を打たれているのだ。

観客の中で涙する者も出ている。



剣舞が終わった途端、大きな歓声が起きる。

地響きを感じるほどの拍手と歓声だった。



「クリス様〜!」

「応援してるぜ!!」




無能力者は差別される。

しかし差別される人物かは別問題なのだ…

そして鑑定士が一声かける。




「この鑑定儀式が終わったら、

 ご両親とともに来なさい。

 不明スキルの研究機関を教えよう。」



「はい!宜しくお願い致します。」



俺は深々と頭を下げる。




「これにて、

 本日のスキル鑑定儀式を終了とする」




そして鑑定の儀式は終わり観客も少しずつ帰宅し始める。

俺も家族、そして王女様のもとへ向かう。

暖かく迎えてくれる皆んなに俺は心の底から感謝するのであった…

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