休憩スキルで異世界無双!

ゆう

第1話 そうだ!キャンプに行こう

ふぅ、疲れた〜

そろそろ休憩したい…



そう心の中で思いながらキーボードを叩く。

深夜も深夜だ。

都内のオフィスビル12階の一室で作業する。

ここのビルは深夜1時を過ぎると、

強制的に電気を消される。

警備会社から帰宅を促す嫌がらせだ。

誰も残りたくて残っているわけではない。

1秒でも早く帰りたいのだ。


ここ数日間、何を食べてきたか忘れた。

恐らく連勤で感覚が麻痺している。

栄養ドリンクを飲みながら、独り言を言う。



「誰だよ、適当にプログラム組んだやつ…

 バグ起こしてクライアント、

 カンカンだぞ」



俺は、とあるITエンジニアのマネージャーを務めている。

プロジェクトリーダーともなれば、

人に任せてさっさと帰宅する者もいる。

しかし後輩達に仕事を押し付けて帰るのが嫌なのだ。

そのためトラブルが起きても結局、

休日出勤して自分でやってしまう。



「あ〜結局また俺かよ…」



いい加減、明日は休む。

どんなことがあっても明日は電話に出ない。

明日こそ、明日こそは出勤できない場所、

そうだ!キャンプにでも行こう。

キャンプ流行ってるもんな〜

レンタカーを借りて食材を買い、

諸々の設備を借りられるキャンプ場にしようと心に決めた。

明日は憩いの時間にするんだ。



そしてようやく仕事が終わった。

いつもの警備員に小言を言われビルを出る。

朝方の薄暗くも明るくなり始める景色を思い浮かべて欲しい。

そしていつものラーメン屋で食事をする。

連勤最終日に食べる豚骨ラーメンは至高だ。

自分へのご褒美と言いながら食うが、身体に良い物ではないので罪悪感を感じてしまう。



やっと電車を降りて家の前に着く。

ようやくドアを開けてベッドの前だ。

今日も仕事に行ってしまった。

だけど後悔はしていない。

決して後悔はしていないのだ!!

そう必死に言い聞かせてベッドにダイブする。




「明日はキャンプに行くぞ!」




あ〜眠くなってきた…

やっと眠れる…





そして、数時間後…

携帯が鳴る。

この着信音、上司からだ。


これはきっと呼び出しだな…

とりあえず着信を聞かなかった事にして、

そのまま夢の続きを見ようと二度寝を決意した。



「今日は休みだ、絶対休む。」



そう、俺はこの日過労により命を落とした。

過労死だが、表情は安らかだった。

おそらく良い夢は見れているのだろう…

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