第25話

 ギルドを出たエルクたちはそのままマスイの街を出ると、街道脇にそれてそこで立ち止まった。


 エルクは今回の依頼の目的地であるテキト村へと行くために無限収納から魔道馬車と魔道馬を取り出すと二つをドッキングさせた。


「さてと、お前たち、さっさと馬車に乗れ。テキト村に向かうぞ。受付嬢の話だとテキト村までマスイの街からだと大体二日かかるらしいが、俺達の馬車なら一日で着く事が出来る。俺達の馬車はそこら辺の馬車より性能が段違いだからな。よし、行くぞ」


 そして、エルクたちは特に何事も無く夕方にはテキト村に到着した。


「思っていたよりもずいぶん早くテキト村に着いたな。まあ良い。俺は依頼主の村長の所に話を聞きに行って来るからみんなは念のため村の周りの半径一キロを見回って来てくれるか。キラーアントに遭遇したら倒してしまっていい。まあ、追いかけてまで倒しに行かなくても良いけどな。あ、もし倒したら箱庭の中に入れておいてくれ。後で解体しよう」


 エルクはテキト村の周辺の見回りに向かったルリたちを見送ると一人テキト村の門へと向かった。


「お、旅の方かな。テキト村にようこそ。と言っても今は村の中が騒がしくて余り寛げるとは思わないけどな」


「いや、俺は冒険者だが、村で何かあったのか」


「え、あんた冒険者だったのか。ああ、つい数日前にキラーアントの群れに襲撃されてな。何んか犠牲者が出たんだ。それで今はその時に荒らされた村の中を修復してるって言う訳だ。は~今までにもキラーアントの襲撃はあったけど、それでもせいぜい五体位での襲撃だったんだがな」


「なるほどな。それは大変だったな」


「ああ、……おっといけねえ。身分証を提示してくれ。村に入るには必要な決まりごとなんでな」


「ああ、わかった」


 エルクは自分のギルドカードを門番のおっさんに見せて村の中に入れて貰った。


 テキト村に入ったエルクはそのまま村の中を歩き道中ですれ違った村人に村長の家を聞くと村長の家へと向かった。


「トン、トン」


 エルクが村長の家の戸をノックすると少しして年配の女性の声が戸越に聞こえて来た。


「はい、はい。どちら様ですか」


 年配の女性がそう言いながら戸を開けた。


「こんな時間にお邪魔して申し訳ありません。こちらの村から出された依頼を受けて来ました冒険者です。連れが後五人ほどいますので後ほどこちらに来ると思います」


「あら、まあまあ、取り敢えず中にお入りください」


 年配の女性に家の中へ案内されたエルクはそのまま居間に案内されお茶をだされ、もてなされていた。


「ごめんなさいね。今、主人は外出してましてもう直ぐ帰って来ると思うのだけれど。もう暫くここで待っていて貰えるかしら。あ、もし良かったらお仕事が終わるまではこの家にお泊りになりますか」


「あ~、泊まるかどうかは、ご主人と俺の仲間が揃って仕事の話が終わってからにしましょう」


「ふふふ、それもそうですね。では、ごゆっくり」


 それから暫く村長の家の居間でお茶を飲んで待っていると村長より先にルリたちが夫人に案内されてこの居間まで案内されて来た。


「お、みんな、来たか。それでこの村の周辺はどうだった」


 エルクがそう聞くとルリが答えてくれた。


「ええ、この村の半径一キロの範囲にキラーアントの姿は見れなかったわ。この時間は活動していないのかしらね」


「ん~、どうだろうな。門番のおっさんの話だと、この村はつい数日前にキラーアントの群れに襲撃されたばかりらしいからな。それより、キラーアントが群れで襲撃して来たって言うのが少し気になるんだよな。襲撃して来たのがアイアンアントなら話はわかるんだけどな。基本単独行動をしているキラーアントが群れで襲撃して来たのなると統率者がいるかも知れないな。例えばエンプレスキラーアントとかな」


「成程ですな。言われてみれば不可思議ですな。これは最大限の警戒度で依頼に挑みませんとな」


 エルクたちが村長の居間で話し合いをしていると突如、外が騒がしくなっていることにエルクが気付いた。


「なあ、何か外が騒がしくないか」


「「「「「そう言えば」」」」」


「よし、少し様子を見に行くか」


 エルクはそう言うとみんなを連れて居間から出て外へと向かって行った。







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