第5話

 エルクとフェンリル改めルリは、神獣の箱庭の内部や機能をあらかた調べ終えてからゲートを通ってアダマンタイト級ダンジョン『神狼の住処』の最下層に戻って来てゲートを閉じると、エルクたちの背後に虹色に輝いた一つの宝箱を発見した。


「おい、ルリ、何で宝箱が出現しているんだ。俺はお前を倒していないぞ。しかも最上級の虹色の宝箱だしさあ」


『エルク、それはあなたが私をテイムしたからじゃないかしら。それで、ダンジョンがエルクが私を倒したと判断したんじゃないかしら』


「成程な。何となくだけど納得出来た。まあ、取り敢えず宝箱を開けてみるか」


 エルクは、ルリにそう言ってから宝箱に近づき、宝箱を開けてみると、中には純白色のコートと銀貨や金貨そして白金貨も数枚入っていた。


「お、お金もいっぱい入っているし、何かのコートも入っていたぞ。取り敢えず鑑定してみるか」



鑑定結果


・フェンリルコート:(神話級)のコート、物理防御(大)、魔法防御(大)、自動再生が付与されている。


『へえ、フェンリルコートじゃない。エルク、あなた、とんでもなく強力な装備を手に入れたわね。神話級の装備なんて一生かかっても手に入るかどうかわからない様な装備なんだからもっと喜びなさいよ』


「まあ、そうだな。一生かかっても手に入るかわからないような装備だし、取り敢えず無限収納にしまっておくかな」


『え、何言っているのよ。あなたの防御力はざるなんだからそのフェンリルコートを羽織っときなさい。それだけでこのダンジョンでもダメージを負うことは滅多に無いはずよ』


「わかったよ」


 エルクは、ルリに言われた通りにフェンリルコートを着込むと地上に戻るための転移陣を探したがどこを探しても転移陣を見つけることは出来なかった。


 そこでエルクは、ルリになぜ転移陣が出現しないのか聞いてみると、ルリ曰く、エルクは罠にはまってこの最下層に来て尚且つ、ここのボスであるフェンリルのルリを倒したわけでもないため、地上への転移陣が出現しないのではないかとのことだった。


「まじか、と言うことは、俺は、この最下層から一層ずつ逆に攻略しながら地上を目指すしかないと言うことなのか」


『まあ、そう言うことね。頑張って攻略しましょう』


「はあ~、じゃあ、取り敢えず地上に向けて出発するか」


 そして、エルクとルリは地上へ向けて最下層を出て行った。


 最下層である二百階層を出たエルクとルリは、百九十九階層から百九十階層のボス部屋の前まで、猛スピードで進んでいた。


 道中にいたアダマンタイト級の魔物たちや百九十五階層にいた中ボスである脅威度オリハルコン級の邪龍ニーズへックまで、漏れなくルリに瞬殺されていった。


「ここまで、大体一時間弱で来たのか。よし、ここのボスを倒したら今日は、このボス部屋で野営をすることにしよう。それで良いよな。ルリ」


『ええ、それについては別に良いのだけど、別にここで野営をしなくても神獣の箱庭の中で休めば良いんじゃないかしら。箱庭の機能で箱庭内に家を建てることも出来るみたいだしね』


「確かにそうだな。家を建てるために必要な魔石もここまで来る途中でいっぱい手に入ったしな。よし、そうと決まれば、さっさとボスを倒してしまおうか」


 ここのボスを倒した後のことを話し合ったエルクとルリは、早く休みたいと言うこともあって、早速ボス部屋の中に入って行った。


「お、ここのボス部屋は、ルリのいた部屋と違って大分狭いなあ」


『ええ、それは多分ここのボスが私程大きくないからじゃないかしら。ん、エルク、敵が出て来たみたいよ』


 ルリがエルクにそう言うと同時に部屋の天井から体長三メートルくらいの黒い獣が降りて来た。


 エルクがその獣を鑑定してみると、獣の種族名はブラックフェンリルと言う強力な魔獣だった。


「おい、ルリ、ブラックフェンリルって名前みたいだけど、お前たちフェンリルの親戚か何かか。もしそうなら俺が代わりに倒すけど」


『大丈夫よ。エルク。フェンリルとブラックフェンリルは、全く別の種族よ。それに、今のエルクだと殺されちゃう可能性の方が遥に高いからね。私はあなたに死んでほしくないのよ。だから、あいつは私が倒すわ。任せておいてちょうだい』


「わかった。じゃあ頼んだぞ」


『ええ』


 ルリはエルクにそう言うと、ブラックフェンリルに向かって走り出した。


 ブラックフェンリルに向かって走り出したルリは、先手必勝とばかりに爪でブラックフェンリルの横っ面を引っかいて吹っ飛ばした。


『全く手ごたえの無いやつね。あら、なあにあなた、意外と根性あるじゃない。少しだけ認めてあげようかしら。でも、じゃあこの攻撃はどうかしら、これに耐えられたらあなた大したものよ』


 ルリはそう言うとゆっくりと起き上がったブラックフェンリルに氷の魔力を帯びた牙で噛み付いた。







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