第十三回 ラルくんラジオvol.1
ラル(以下、ラ)「こんにちは。魔法使いのラルです」
アマノ(以下、ア)「どうも。ゲストのアマノです」
ラ「…………いや何これ!?」
ア「どうされましたか、ラルさん?」
ラ「いやなんかさ、急に家に手紙が来て。どうせあいつからなんだろうなーと思って開けたら、差出人も書いてなくて、一言『ラジオをやってください』とだけ記されてたんだよ」
ア「へえ、興味深いお話ですね」
ラ「何のイタズラだよって思って、その手紙はまあゴミ箱に捨てた訳。そうして一日を過ごして、寝て、目が覚めたらなんかこの部屋にいたんだけど。どういうことなんだよ」
ア「そうですね……まあこれは、夢なのではないでしょうか?」
ラ「夢?」
ア「そうです。手紙に書かれていた通りラジオをやれば、この夢からは覚めるという寸法でしょうね」
ラ「何だそれ、訳わかんないな……まあそれなら仕方ないし、やるか。ところであなたって何者なの?」
ア「……それは言えませんね。ネタバレになってしまいますので」
ラ「何のだよ」
ア「俺のことを詳しく知りたかったら、『ネリネの足跡』を読んでください。そうすればわかりますから」
ラ「へえ、それどこで読めるの?」
ア「カクヨムですね」
ラ「かくよむ……? 何それ」
ア「まあ、貴方の住んでいる世界には存在しないでしょうね。地球のものなので」
ラ「はあ。よくわかんないけど、まあいいや。……というかラジオって言われても、何話せばいい訳? ぼくたまに聞いたりするけど、ああいうのってトークテーマがあったりするよね」
ア「そうですね。では折角ですし、俺から一つトークテーマを差し上げましょう」
ラ「ほんと? 助かる」
ア「……それじゃあ、『恋愛』にしましょうか。ラルさんは、恋人とかいらっしゃったりするんですか?」
ラ「は、いきなりだな!? え、いや、ぼくの恋愛事情とかどうでもよくない?」
ア「いえ、何となく気になりますよ。長め銀髪、中性的な顔立ち、一人称ぼく、ひねくれ気味、ツンデレ、魔法使い――これだけ属性をお持ちの方の恋愛遍歴は、かなり興味深いところです」
ラ「ぼくのただの特徴を属性とか言うのやめてくれる!? 恋愛なんてほとんどしたことないし……」
ア「では今は独り身なんですか?」
ラ「…………。……いや、一応恋人はいるけど……」
ア「おおっ。ヒューヒュー」
ラ「冷やかすのやめてもらえるかなあ! しかもちょっと古いし!」
ア「ふふ、すみません。その人は、どういった方なんですか?」
ラ「えー、難しい質問するね。……まあ、性格はめっちゃいい。二歳下だし子どもっぽいところもあるけど、素直で明るい奴だよ」
ア「へえ、いいですね、微かな歳の差恋愛。末長くお幸せに」
ラ「ど、どうも……。……というか、そういうアマノさんこそどうなの? めちゃめちゃイケメンだし、結構恋多き男なんじゃないの?」
ア「俺ですか? いえ、そもそも俺は子孫を残すような生き物ではないので。そういった経験は特にありませんよ」
ラ「え、人間じゃないの、アマノさんって?」
ア「まあそうですね。……昔、大切だった人はいましたけれど。今はどこで何をしているのかもわかりません。元気でやってくれていたらいいんですが」
ラ「へえ……確かに、元気でいてくれたら嬉しいね」
ア「そうですね。ちなみに、『恋愛』という営みに関して興味はありますよ。俺は誰に対してもそういった感情を抱かないでしょうけれど、人間がそれによって一喜一憂している姿を見るのは、割と好きです」
ラ「ふうん、そうなんだ。何というか、他人事で羨ましいよ……恋愛とかまじむずい……」
ア「何か難解な出来事でもあったんですか?」
ラ「いや、付き合って一ヶ月の記念日、すっかり忘れててさ。ふてくされてたな、あいつ……」
ア「ああ、確かに女性はそういうことを気にする方も多いですからね。まあ、次からは覚えていてあげたらいいと思いますよ」
ラ「そうだね、いや家に引きこもってるからまじで時間感覚ないんだよな……頑張るけどさ……」
ア「応援していますよ。……あ、そろそろラジオが終わる時間みたいですね」
ラ「え、何でわかるの?」
ア「『終わりを告げるハリネズミ』がそこに現れたからです」
ラ「ほんとだハリネズミじゃん! 可愛い! 何でこんなところにいるのか謎だけど……」
ア「という訳で、お疲れさまでした。次回以降も頑張ってくださいね、ラルさん」
ラ「え、嘘、このラジオ第二回あるの?」
ア「『vol.1』ってナンバリングされていますし、その説は濃厚だと思います」
ラ「どこにだよ。……まあいいや、今日はありがと」
ア「いえ、こちらこそ。『ラルくんラジオ』、次回もよろしくお願いしますね」
ラ「そのネーミング、なんかダサくて嫌なんだけど!」
*・*・
ぼくはベッドの上で目を覚ます。森にいる鳥の鳴き声が、微かに響いている。
ぱちぱちと二、三回瞬きをしてから、口を開く。
「なんか、すごく疲れる夢を見た気がする……」
ぼくは額に手を当てながらひとりごちて、ゆっくりと起き上がった。
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