第298話 魔物少女と騎士団長の決闘②

 〜正午〜


 今日は運が悪く日当たりの良いカラッとした空気が周りを支配している。


 俺たちの食事を運び終わった後にケロナとリュートが甲板の真ん中に出た。


 豪華客船のような物なので相当広い甲板であれば決闘場にしても申し分ない広さはあるのだが、この2人の戦場としてはいささか役不足ではないだろうか?


 そう思いながらも俺たちは食事を楽しみながら優樹が俺たちの前に【風の防御壁+5】を展開してくれた。


「この防御壁が1番見やすくて防御力があるからね。一応見物者全員に防御力UPの魔法はかけておいたから安心して決闘しても大丈夫だよケロナちゃん!」


「ありがとう! 優樹!!」


 手を振るケロナが利き手に持っているのはなんと木刀だ。


 それを見たリュートが少し表情を濁す。


「それは一体なんのつもりですか?」


「ん〜? 別に貴方程度ならこのくらいの武器で充分だと判断しただけだよ? それが嫌なら私に


 圧倒的な殺気を飛ばすケロナの眼力に全く気圧されないリュート。


「なるほど、では真剣を抜かせて見せましょう!」


 2人が構えると波が止まった。


 表現ではなく本当に周りの海の波が止まったのである。


「これは!?」


 と驚くリュートにケロナはこう呟いた。


「もしも決闘中に船が大きく揺れてしまっては公平じゃないよね? 私が波を止めたからしばらくの間は波にも邪魔されないよう」


 その言葉に汗を流す騎士団長。


「ケロナ様。貴方というお方は...! 実に面白い!」


 明らかに楽しそうな声を上げるリュートに俺は思わずこう思った。


(おいおい、波を止める魔物を相手にして面白いって思うか? 普通...)


 もしかしてリュートはバトルジャンキー? 説が浮上する中、ついに2人の決闘が始まるのでした。

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