第27話 命の恩人

 声のする方を見てみると、そこには優樹が立っていました。


「優樹...」


「和希!!!」


 いきなり俺に抱きついてくる優樹の存在に少しだけさっきまでの怒りが晴れる。


「なんだよいきなり...、離せよ...」


「やだ! 絶対に離さない!」


 そう言いながらしばらくの間俺は彼女から逃げられなかった。


 〜数分後〜


「優樹、落ち着いたか?」


「うん、ありがとう和希!」


 俺と優樹は道端に座りながら今回の戦いがどうなったのか話をした。


 どうやら瀕死状態だった俺を回復していてくれたのはやはり優樹だったらしい。


「そうか...ありがとうな優樹」


「ううん、和希が倒れてたんだから友達として当たり前の事をしただけだよ。むしろごめんねその場所に放置して行っちゃって」


(まあ、戦闘中だったし仕方がなかったのだろう)


 優樹の性格からして苦渋の選択だったとは思うし、状況的に考えてしょうがないと思う。


 そして俺たちは昔のように会話を続けていく。


 それが安らぎとなって少しだけ落ち着いた。


 そんな感じで彼女の話を聞いていくと、どうやら此度の戦いは俺たちの勝利だったらしいことが分かった。


 佐藤と石川が怒涛の攻めを見せて敵の大将であるオークキングを倒して終結したらしいのだ。


「魔王軍の第一陣を殆ど損害なく撃退したって王様が2人を褒めてたよ」


「殆ど損害なく...ね」


 俺はチラッとアル子の墓の方を見る。


 損害なく勝利したと言う言葉に俺は反吐が出た。


「あっ! そうそう! 此度の勝利をの褒美として勇者各位に褒美を授けるって王様が...」


「そんな物いらねぇんだよ!!!」


 思わず優樹に怒声を浴びせてしまった。


「あっ...」


「...和希? 何かあったの?」


「...」


 俺は余計なことを言いたくなかったが優樹の熱心な言葉責めに屈してしまう。


 内容を聞いた優樹は俺の手を取って王様と佐藤のいる場所に向かうのだった。

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