第25話 晴れやかなる大空

「...はっ!?」


 俺は急に気がついてすぐさま身構える。


「なんだ!? 生きてるのか? 俺は...」


 後一回攻撃されただけでも死ぬ重傷だったはずなのにHPが完全に回復していた。


「なぜ...生き残れたんだ?」


 そう思いつつもメニューを開くとパーティ画面にあるはずの名前がない事に気がついた。


 俺はハッとしてその場所を見やる!


 すると...。


「あ...あぁ...!」


 そこにはこんがりと焼けたアルミラージの姿があったのです。


「アル子ぉぉぉ!!!!」


 たった数日間の付き合いだったとは言えどもこいつは俺と一緒に戦ってくれた戦友だ。


 俺は彼女の亡骸を手に取って泣き続けた。


(なぜ...、何故俺がこんな目に遭わなくてはならないんだ!!!!)


 この国に俺を召喚した国王とアル子を殺した佐藤に怒りが募る!!!


 それと同時に死んでしまったアル子への憐れみの感情が湧き出てきた。


『EXスキル【慈愛の弱体術師】を取得。これよりパーティ内のモンスターカテゴリに成長補正が入ります』


「黙れ!」


 メニュー画面に出てくる【慈愛の弱体術師】という文脈にさえ今は怒りが出てきてしょうがない。


「慈愛? 慈愛だと!? 俺が本当に慈愛に満ち溢れた人物なのならばアル子をこんな場所に担ぎ出しはしなかった! 俺は...俺は悪人だ...」


 その時になって佐藤の言葉が頭を駆け巡る。


「たかだか1・匹・の・モ・ン・ス・タ・ー・だろう?」


「たかだか1匹のモンスター...。確かにな...」


 しかし、俺にとってはかけがえのない仲間だったのだと今になって理解した。


 理不尽に命が奪われてしまうという事がこんなにも不条理に感じてしまうとは...。


 俺は晴れた大空の下に彼女の遺体を埋める。


「じゃあなアル子。そしてすまなかった...」


 俺はそう呟くとその場を後にするのだった...。

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