第12話 カリュート村

「旅人さんか?」


 気の良さそうな老人が俺に声をかけてきた。


「まあそんな所だ」


「こんなご時世じゃ、若者も命を大事にせんといかんぞ」


 などと言いながら何処かに向かってしまった。


「なんだったんだあの爺さん」


 そう思いながらも俺は冒険者ギルドに向かう。


 村ならばまだ【弱体術師】召喚の噂が届いていないかもしれない事を期待してな。


 ちなみに城下町では仕事を請け負う事が既にできなかった。


 王が根回しをしていたらしく、俺には仕事を回さないと職員に笑われながら言われた。


 奴らの嘲笑を見ていると胸糞悪くなる。


「くそっ!」


 思わずそこらへんの柵に八つ当たりしてしまった。


 この世界にきてからずっとこの調子だ。


 なんか俺もやさぐれたなと思う。


 まあ、今はそんな事どうでもいい。


 今の俺には目先の利益が必要なのだ。


 軽くなった財布を持ちながらギルドへと向かう。


「いらっしゃいませ〜! 冒険者ギルドへようこそ」


 と受付嬢が声をかけてきたので俺は仕事を貰いに来たとだけ伝える。


「それでは冒険者登録をしてくださいね」


 なんて言われたので困惑した。


(いや、むしろまだこの村にまでは俺の悪名が届いていないのか?)


 さっきの爺さんと言い俺を見ても嫌な顔一つしなかった。


 つまり今が冒険者登録するチャンスなのでは?


「頼む」


「はい、分かりました。では血液を採取しますね」


 俺の手にナイフを当てて血の一滴を採取する受付嬢。


「はい、登録できましたよ。冒険者名はどうしますか?」


「冒険者名か...。和希で良い」


 どうせバレるんだ、ならば本名でいいだろう。


 本名を明かしたまま俺は最初の仕事を請け負う。


「じゃあこれで頼む」


「はい、わかりました」


 俺は依頼を受けるとそのまま仕事に向かうのでした。

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