幼馴染と一緒に勇者召喚されたのに【弱体術師】となってしまった俺は弱いと言う理由だけで幼馴染と引き裂かれ王国から迫害を受けたのでもう知りません

カイト

第1話 幼馴染

 俺の名前は高坂和希。


 これは幼馴染の小鳥遊優樹と一緒に帰り道に着いてた時の話だ。


 幼稚園の時から中学3まで一緒に育ってきた彼女は気心のしれた良い友達である。


 緑髪の小さなポニーテールが夕日に光っておりすごく眩しい...。


 中学生になってから大人っぽい雰囲気を纏い始めてはいるのだが、やはり元々が元気っ娘ぽい性格なので話していると大人になったなと言う感じはしない。


 優樹は鼻歌を歌いながら今日も僕の前を行く。


 そんな彼女がふと立ち止まりこちらを見てくるとこんな事を言い出した。


「そういえばもうちょっとで私達も卒業だね」


「...そうだな」


「大丈夫? 私抜きでやっていける?」


 そう、俺と優樹は別々の高校を選んだので来年からは接点がなくなるのだ。


 少し不安はあるが「問題ない」と答えておいた。


「そうかそうか~。にしし~」


 とはにかむ彼女の笑顔は眩しい。


「和希はさ、優しいけどその優しさに漬け込んでくる人はいるんだからね。ちゃんと気をつけてよ」


「何を言ってるんだ急に?」


「幼馴染からの忠告! 分かったらちゃんと聞け!」


 こつんと俺の頭を叩いてくる彼女はすごく楽しそうだ。


「...ああ」


「そうそう! それで良し! たとえ離れ離れになったとしても私は和希の味方だからね」


 彼女がそう言いながら一歩を踏み出した瞬間だった。


 謎の光が彼女の足元に照らし出され空中に文字が映し出されたのは!


「何これ?」


 そう不思議そうに呟く彼女の様子を見て俺は手を伸ばした。


「優樹! こっちに来い!」


「えっ? なんで?」


「良いから!」


 俺の言葉に彼女は戸惑っている。


 その内にどんどん光の輝きが増していく。


「ダメだ! 間に合わない!」


 俺はこの現象を知っている。


 最近(流行り?)の異世界転生だ!


 これから楽しい高校生活が待っているであろう優樹にそんな場所は必要ない!


 俺は彼女をその中から救い出そうと手を伸ばしたのだが、なぜか彼女は俺をその中に引き入れた。


「はっ?」


「知ってるよ。一緒にそう言うアニメ見たじゃない」


「じゃあなんで...」


「和希と一緒に居られない現実よりも和希と一緒に居られる異世界を私は選ぶよ」


 にっこりとそう笑う彼女に俺は静かに微笑む。


「なるほど、優樹はそう言う子だったな」


 彼女の好意に俺は以前から気がついていた。


 しかし、俺が彼女とは釣り合っていないと感じ一時期離れた事があるのだ。


 そんな中でも彼女は俺に何度も会話を求め、最終的に彼女が俺に好意を持ってくれている事が判明した。


 最初は驚いたが今では慣れている。


 彼女の好意そのものは嬉しいが、やはり今の俺では彼女に釣り合っていないと思ったので高校を別にしたのだ。


 まあ、それも今となっては意味がないのかも知れないな。


「優樹」


「なに?」


「あっちでもよろしくな」


 その言葉を聞いた彼女は嬉しそうに俺を抱きしめた。


「最初っからそう言え。馬鹿和希」


 どんどん光の噴出速度が早まり、気がついたら何処とも知らぬ城の中に立っているのでした。

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