第27話

委員会決めも終わって安堵の空気が流れていたので、先生がハキハキとした声が教室内に響き渡った。


「じゃあ自由時間やるから、学校の中探索してきていいぞー!10時までには帰ってくることな?あと他は授業してるから静かになー?」


そんなことを言って俺たちを野放しにした先生。一度は沙和ちゃんの授業参観の時間にするかと迷ったが、そんなことをしたらマジで嫌われそうなので辞めることにした。


「翔ー、一緒に回ろーぜ。俺、体育館しか知らないし、どうせおまえもだろ?ここでスマホ触って過ごしよりかはマシだろ」

「そーだなぁ」


俺が晃と回る決断を下すと、俺とまわることの一番の意味をすぐに晃は見せることになる。ここまで来ると清々しい。


「一緒に回りませんか?中尾さん!どうすか?」


翔もいますし、と付け加えて説明する晃。下心丸出しじゃねぇか。これにはさすがの中尾さんも首を横に振った。


お疲れ様、と俺が晃の方を見るとさっきまでの元気はどこへやら。意気消沈していた。


「七瀬くんー?下心丸出しじゃ、嫌われちゃうよー?ねぇ、中尾ちゃん!」

「うげ、中条。お前は引っ込んでろよ」

「辛いなぁ。こんなにかわいい幼なじみに向かってそんな口調って、モテないモテない」


そう言って、茶髪の髪をポニーテールにした中条と呼ばれた女の子は晃をバカにした。


きゅるきゅるーんと言う効果音がつきそうな目を持っている。いわゆるギャル。そこそこの進学校なので、いないのかと思ったが生息していた。


「夏目っちもそう思うよね?」


そう言って距離を詰めてくる。ギャ、ギャル怖い……。俺は田舎のスキンシップで慣れていたと思っていたのだが、若い女の子とはしたこと無かったので、動揺する。


「あぁ……」

「は、早く行くぞ、翔。そいつと関わってたらろくな事にならん!」


そう言って、俺の手を取って教室を飛び出した。中尾さんと中条さんを置いていってしまった。大丈夫だろうか。


この学校の食堂は広かった。てか、食堂だけで1つの建物になってた。校舎と部室棟の間に広い空間があるのだが、そこに食堂があるのだ。

やはり運動部が強かったらご飯が必要な奴らが溢れかえるのだろうか。


校舎から屋根付きの渡り廊下で繋がり、全面ガラス張りになった開放感のある円形の建物。


それが、この学校の食堂らしい。因みに、食堂の周りは池に囲まれ、部室棟側に橋が架かっている。そして、池の周りは芝が張られ、桜などの木々が植えられている。


テーブルベンチまで置かれており、そこらの公園より豪華な空間がそこにはあった。


「ここで沙和ちゃんとご飯を食べたいなぁ」

「俺は可愛い先輩と食べたい。まずは相手を探さなくてはだがな……」


そんな妄想を話しながら、学校を探索した。


食堂にはカフェテラスみたいなのもあった。やはりこの学校は意味が分からないくらい豪華である。これが都会なのか。


田舎には一軒のカフェがあっただけで。それもおばあちゃんがコーヒーを入れてくれるやつ。オシャレなんて言えたもんじゃない。


そんなことを思いながら、教室に向かって歩いている最中に沙和ちゃんが授業を受けているところが見えた。


英語が聞こえてくるので、コミュニケーション英語だろう。


「お!お前の大好きな沙和ちゃんじゃないか。なんか仲良さそうに男子と喋ってるぞ?」

「あれはペアワークだ。仕方ないんだ。あれはいやいや……」


俺はそういうが、楽しそうに笑う沙和ちゃん。これ以上見ていると毒なので、目を逸らして階段を昇った。


やっぱり、年の差なんていらねぇ……。そう思った夏目翔だった。


◆◆

星が欲しい


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