第4話 刺さる一矢!?
「ねぇ大晴君!ちょっと真昼ちゃんと近すぎるんじゃないの!?」
「私今朝言ったわよね?安易に話しかけない方が良いって!!」
「分かった!分かったから落ち着け!な?」
生徒会主催のグループ対面の時間が終わりを告げ、今日の顔合わせの行程が全て終了した。そして俺はいつものようにバイトに行こうとした......したんだけど。
『ねぇ.......ちょっっっとだけでいいから』
『その面貸してくれないかしら?......いや貸しなさい』
物凄い剣幕で詰め寄ってきた二人に抗えず、今は尋問を受けている。
流石に急いでいるから尋問を始める前に一度連絡させてほしいと頼んだところ、あっけなくOKが来た。九条さんもいる中で予想外の行動だったが、深く考えずその気まぐれに感謝し、俺の給料を司る上司にして従姉妹の合法さんに電話を掛けた。
「えっとぉ......美玖.......悪いもう少しだけ遅れる」
『はぁぁぁ!?まだ遅れる!!?』
「すまん、本当に出来るだけ早くそっち向かうから!減給だけは勘弁して!」
『はぁ...........20分ね』
そうして俺は20分間の猶予を得た。
その間、俺はプライバシーの理由で二人から席を外していた。が、廊下の角から二人揃ってこっちを覗いてたの俺は知っている。
綺麗に二つ重なる頭はまるで姉妹のようだった。
(あの二人仲悪いように見えて実は仲良いじゃねぇか)
と内心二人のビジネス不仲を疑ったのは内緒。
「はいはい、悪かったよ。次は考えて行動します......これでいい?」
「「良いわけがない」」
「あっ.......そうですか」
「そもそもね!大晴君がいきなり真昼ちゃんにあんな近距離まで近付くのがおかしいって気づいて!」
「あれはだな、別にわざとやった訳じゃなくてな、新藤の言い分にイラついてこうなんかカッとしてやっちゃっただけだ」
「やっちゃってるのが問題ってこと!」
「ああ、そっちですか」
「真昼ちゃんはね、男の子には厳しいけど女の子にはすごく優しいの。だからあの子は沢山の女の子に慕われてるんだよ?そんな真昼ちゃんにあんなに近づいてあの子たちが黙ってるわけないでしょ?」
「あの子たち?もしかしなくてもこの流れって.......ファンクラブ?」
「そう、ほとんどの加入者が女子で構成されてる
「王子組.......またなんか変な奴らがいるんだな」
「シッ!メッだよそんな事言っちゃ。女の子の耳は広い、そして噂になってすぐに広まっちゃうんだからね」
「お、おう。というか九条さん......なんか視線が痛いんですけど」
「別に.......どうぞ続けて」
さっきから九条さんの視線が冷たい。なんか向いている方向が俺じゃなくて愛梨の方に見えなくもないが触れたらもっと酷くなりそうなのでスルーする。
「だからね、これから使徒組の子たちの事も考えて行動しなきゃいけなくなると思うの、実行委員だから他とも協力しなきゃだし」
「まぁそうだな。結構面倒な事になりそうだが」
大多数が女子で構成された組織なんて狂ってるに決まってる。
ヒステリックな女子共にあれこれ噂を広げられるのは、最近耐性がついてきた俺でもちと辛いことになるだろう。
「だから私考えたんだよね、良い案♡」
「良い案?」
「ふふっ、私が大晴君と一緒に行動すればいいんだよ。そうすれば余計に噂される心配もないし、王子組からの接触も.......使徒組からの接触も抑えられるでしょ?」
「確かにそうかもしれないが、俺と愛梨で良からぬ噂をされる可能性も十分にあると思う。俺達は所詮、恋愛相談の相談者と返答者って「友達忘れてるよ」そう友達もあるけどそれだけの仲だ」
「ふふっ、まぁ私はそれでも別に都合が悪い事はないけどね」
「???」
「だからこれでいいよね?ね?」
「ええと、まぁ愛梨が良いならまぁお願いしたい」
「ふふっ、交渉成立♡」
「ねぇちょっといいかしら?」
「「!!!」」
「その考えなら、十分奴隷組の男達からの接触を受ける回数も今後増える可能性があるわ。そして中瀬、私の方が女子達からのヘイトは多く買っていると自負してる。貴女はどう?八方美人の中瀬さん?」
「ま、まぁ私は皆に争わないように重々念を指してるし、他の女の子達とも友達ぐらいには話せるから大丈夫だと思ってるよ」
「甘いわね、まるで黒砂糖食べてるみたい。虫歯になりそう」
「あ?そっちこそ態度だけ辛くて思想は甘々なんじゃないの?突っ張るだけしか出来ない方がよっぽど対応力無いんじゃなくて?」
「接触してくる女子なんて気が強い人ぐらいしかいないわ。それなら貴女の言う仲良くお喋り出来る人種を等に超えているんじゃないのかしら?」
「あのぉ、九条さん「私の事は今後、架純と呼び捨てで呼びなさい。これは命令よ」架純さんは「架純」......架純もうやめてくれないか?」
「なら私も一緒に行動するので良いってことよね?」
「え?」
「良いのよね?」
「あっ......はい」
(チッ!やられた)
(抜け駆けは許さないわよ)
こうして俺は学校でもこの二人と一緒にいることになったんだが
何だ?このしてやられた感。
微妙に納得いかないんだが......
~~~~
「っふぅぅぅ!!!!ギリギリ19分!!!!」
あの二人と別れた後、俺は今までないほど本気で走った。その走りはまるで世界記録に挑戦する程だったと自負している(結構というか大分盛った)
そして着いたのは良いものの、なぜか店内が騒がしい。
裏口から入ったので店の様子は確認していない。
ただ騒がしいなと思うがばかりで特に気にしてもいなかった。
「でも、うるさいにはうるさいんだよな」
「あれはママとお客さんの声よ。ここまで聞こえるとは思わなかったけどね」
「!!!」
「ん、セイ昨日ぶりね」
扉に寄りかかるようにして美玖が立っていた。
ただ何となくいつもと違うのは、その目だ。
何故か俺を呆れているような、何かを通り越しているような、そんな目をしていた。
「それってどういう」
「とりあえず見た方が早いわ。私からすれば早急に説明をしてほしい所だけど、あの子に免じてやめてあげる」
「だからどういう?」
「ほら!さっさと着替えてコンタクトして!じゃないと私が持ち場に戻れないでしょ」
「へい.......」
~~~~
「はい!出来た!じゃあさっさと戻るわよ!」
そして俺は、美玖に釣られるように部屋を出る。そして一歩、また一歩と階段を下りて調理場前の廊下に出た。うん、ここからだと会話が良く聞こえてくる。
そして俺はカウンターまで歩みを進めた。
「は?ってえ?なんで?」
「久しぶりだねセイ君。元気にしてた?」
「え?だから.......どちら様でしょうか?」
「本当にわからないんだ......はぁセイ君ってば本当に無責任な人」
そこに座っていたのは外人と言われても全く疑わない程の美人。
長い金髪は頭の後ろで一纏めにされておりスポティッシュな雰囲気を醸し出しつつも、そのうなじが色気を放っている。
彫深く整った顔立ちは今や乱れに乱れており本当に本人かどうかを疑うレベルだ。
そんな彼女はつい先程まで語り合っていた同じ高校の女子生徒。
そして陸上部のエースにして四大アイドルの内の一角
『陸上の太陽姫』こと、新藤真昼。
本人その人だった。
え!?いやなんで?なんで新藤さんがここにいるんだ!?
しかも久しぶり?あなたと何処か会ったことあります!?
愛梨の水族館の件はギリギリ覚えている範疇だったけど、今回に関しては本当に身に覚えが無い。物覚えが悪い方ではないと自分では思ってるのでもし本当に何処かで会っていて忘れていたら俺の認知症を疑う。
「それじゃあ私は調理場戻りまーす。2人共再会楽しんでー」
「急な来店になってしまったにも関わらず真摯なお話ありがとうございました」
「良いのよ。それじゃあバイト入ってきたばっかりだけどちょっとお話してあげてねセイくん」
「あ、はい。よく分かってないですけど」
「.......」
そう言い残して美玖母は調理場へ戻って行った。こうなると嫌でも進藤さんと話さないといけない状況が出来上がってしまう。
「ええと、とりあえず君の事を教えてもらえれば何か思い出すかもしれないから、何かエピソードを話してくれると有難いんだけど」
「うん、でもその前に1つ気になった事があるんだけどいいかな?セイ君?」
「気になった事?」
今の会話で気になる点なんてあっただろうか?別に思い返してもおかしい部分は考えられない。でも彼女にはあるという、まぁ人の考えは読み切れないから分かろうと思っても無理な場合がある。
「良いよ。話せる事なら答えれると思う」
「良かった。じゃあ聞くね」
「セイ君って私と同じ高校の人なんですか?」
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