ない。

「どうしました?」


 顔を上げる。面接官がこちらを見ている。

 能面みたいな顔。

 私はなにを答えようとしていたのか思い出せなくて、リクルートスーツのスカートを握りしめる。


「もう一回質問しますね?」


 面接官の声が続く。

 その声は、私の耳まで届かない。


 ああ、面接ってやだな。

 自分をアピールするはずが、偽りの笑顔を張り付けて、答えたくもない質問に答えないといけない。

 そこまでして、偽物の自分を作り上げて、社会で働かないといけない理由って何だろう。


 本当は仕事なんてせずに、なにもしないで生きれればいいのに。

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