第46話 庶民学? もちろん中学で習いましたわ! 余裕ですわ!!!

「凉坂さん、今日から常識の勉強を僕と一緒にして頂きます」

机にノートを広げて、対面に美人なお嬢様を座らせて勉強をする体制に入った。

「常識の勉強ですの? 啓さん酷いですわ! 私は確かに人より少しだけ力が強いですがそれ以外は普通で立派な女子高生ですの! 失礼ながら啓さんに常識を教えて頂くほど常識は欠落しておりませんわ!」

エッヘンとでも言いたげなドヤ顔をしている、美人で僕より力が強くなければ肩を小突いていたところだ。


「そっか、じゃあ一つ質問です。メイドがとても良い功績を出しました、メイドを褒めるときに何といいますか?」

「それはもちろん『よくやりましたわ! 美月、ご褒美に足を舐めさせてあげますわ!』ですわ!」

それは特殊というか少しエッチすぎないか、凉坂さん足……。違う違う今はそうじゃない、美月とは後でしっかりと話さなきゃいけないけど、今は凉坂さんに教える番だ。


「凉坂さん違うんだ、誰かに何かをしてもらって感謝を伝えるときは普通に『ありがとう、凄いね!』みたいなポジティブな言葉だけでいいんだ、足をなめて喜ぶ人種なんてこの世にはほんの少ししかいないんだ」


「そ、そうなんですの!? 私が知っている使用人の皆様はこうやっていうととても喜びましたので、私てっきり皆様こうすると喜ぶのかと……。」

凉坂さんの家の使用人はどうなっているんだ、っていうか実際にこんな褒め方をしていたのか、もし美月が男だったら性癖が狂わされている所だぞ。

いや、女でも性癖が狂わされているから関係ないか。

まあ、一応普通の人への褒め方を教えられただけいいし、なんなら凉坂さんが僕が喜ぶと思って力を振るっていた可能性があるだけ、救いが出てきたかもしれない。


「ち、ちなみに啓さんはわたくしに踏んでもらえたら喜びますか?」

「ノーコメントで」

脳を殺してそう答えた、彼女の足をチラチラ見てしまっている理由は、彼女レベルのお金持ちだと靴下はどんなブランドを身に付けているのか気になっただけだ。

と必死で自分に言い聞かせる。


「そんな事は一度置いておいて、凉坂さんは知らないかもしれないけど普通の家庭には使用人はいません」

「もう、啓さんってば馬鹿にしないで欲しいですわ! さっきのはたまたま知りませんでしたが、私は普通に一般常識がありますので、普通のご家庭には使用人の方々がいない事は中学校で習いますわよ!」

「中学校で?」

「はい、もちろんですわ! もしかして普通の方々は中学校では習いませんの?」

「いや、小学校でも幼稚園でも高校でも習わないし、一般常識というか常識以前の問題というか」

「な、なんですの!!!!!!!!!!」

なんですと!? のような大声の驚きが部屋中に響き渡る。想像以上に凉坂さんは重傷かもしれない、これは教えるのが大変そうだ。


「じゃ、じゃあ一般の方々は庶民学の授業の時間では何を教わるのですか?」

「しょ、庶民学?」

「はい、一般の方々の生活を学ぶ大切な大切な授業ですの? ありますのよね? 啓さんも習いましたのよね?」

焦って身を乗り出して聞いてくる、美しい顔を直視できないが、心を鬼にして僕は首を横に振った。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る