第4話 強盗

 僕とローズは街へくり出した。

 表通りは少し贅沢なホテルとレストランがある。

 僕たちは三十四年前に良く使っていたホテルに入った。


「いらっしゃいませ、お泊まりですか」


「はい、二人で」


「分かりました。お一人様銀貨二枚です」


 会計を済ませると僕たちはホテルのレストランに入った。


「ローズ、ここは和食が無いんだね」


「和食って何ですか」


「勇者ヒロが来た国の料理さ」


「すみませーん」


「はい」


「あの、和食って無いのですか」


 ローズが店員を呼んで聞いてくれた。

 こういうことは、貧弱な男より美人が聞いた方がいい。


「当店にはございません」


「別の店にはあると言うことですか」


「いえ、聞いたことがございません」


「じゃあ、このお店のおすすめをお願いします」


 この世界にはまだ和食が浸透していないようだ。

 何やっているんだあの勇者、まずは料理で俺すげーするところだろここわー。

 それとも、王族だけで食っているのかなー。

 そんなことを考えていたら料理が出て来た。

 スープと肉だ。

 肉でかいなー。


「ぎゃーまっずー」


 なんか肉から腐った味と臭いがする。

 しかも腐った味以外、味がしねー。


「そうですか。普通ですよ」


 ローズは普通にパクパク食べている。

 この世界ではこれが普通だったっけ、もう舌が耐えられない。

 肉はいいや、スープを飲もう。


「ぎゃーー、まずいーー!!」


「あのーお客様、他のお客様の迷惑になります。お代は結構ですのでお帰り頂けますか」


 恐いおじさんに追い出されてしまった。


「ノコ様のおかげで追い出されました。ホテル代もパーです」


「あはは、食事はね、一本裏道の寂れたところがうまいんだよ」


 一本裏道に入るとすごく寂れていて、とっても危険な香りがする。


「治安が悪そうだね。あそこの店に入ろう」


 道を歩いていると悪い人にからまれそうなので、近くで明かりのついている店に飛び込んだ。

 店に入り料理を食べたが、やはりまずかった。

 日本の料理が食べたい。


 料理店がホテルになっていたのでここで泊ることにした。


 部屋に入ると、僕はカバンから黒猫マリーを出してもらって、抱っこして撫でている。

 やっぱり猫はかわいい。


「あっ」


 マリーを撫でていて思い出した。

 マリーは日本の事を知っている。

 味噌も醤油も砂糖も酢も知っている。

 マリーは錬金魔法が使えるから、僕は日本食が食べられるぞ。

 知らないうちにガッツポーズをしてしまった。


 でも、この大魔法使いマリー様は、一ヶ月猫のままなんだよなー。

 一ヶ月後が楽しみだ。


「ノコ様―、お風呂空きましたよー」


「わかったー」


 僕はローズに言われるまま風呂場に入った。


「ぎゃーー!! な、何で裸なんだよー」


「なんで見られた私じゃ無くて、ノコ様が悲鳴を上げているんですかー」


「くそー、ローズー出て行けーー」


「お背中流しましょうかー」


「いいから出て行って下さい」


 ローズがすごい上機嫌で出て行った。

 何を考えているのか。




 その夜はベッドで横になった。


「ローズさん」


「はい」


「なんで一つのベッドなのかな」


「大丈夫です、気にしませんから」


 まあ良いか。


「あの、ムラムラしませんか」


 はー、ローズの奴何言っているんだ


「しないよ」


「私はしていますー」


「だーー、やめろーー。次からは別々の部屋だぞー」


 バン


「ぐおーううーー」


 バン


「ぐはーー」


 僕がローズから逃げていると、ドアが蹴破られる音と人のうめき声が聞こえてきた。

 そして僕の部屋の扉が開いた。


 バーーン


「うおっ」


 僕の部屋に入ってきた強盗が驚いている。


「なんでお前達は起きているんだ。オークでも一晩ぐっすり眠る程の睡眠薬が食事に入っていたはずだ」


 僕は元々ゾンビだから睡眠薬は効かないし、ローズは大賢者様だから毒無効の魔法をかけている。

 巨人用の睡眠薬でも効きはしない。


 三人の押し込み強盗の様だが、今の話しが本当なら、このホテルぐるみの犯行なのだろう。


「ノコ様大変です。強盗です」


 うん、ローズさん言葉は大変そうですけど、顔は凄くうれしそうに見えるのですが。


「隣の部屋の人はどうしたのですか」


「死んでもらったさ、あんたらも死んでもらう」


 僕は身構える。


「あっ、ノコ様お忘れですか。マリーの魔法で力ありませんよ」


 そうでした。女のローズより非力でした。


「ぎゃー、な、なにをするんだー。はなせー」


 だが、次の瞬間一人の強盗が仲間にかぶりついた。

 そして、もう一人にも噛みついた。

 しゃがみ込んでいる強盗を僕は見下ろした。


「ふふふ、なったばかりのゾンビってわかんないよね。目を見ると白く濁っているからわかりやすいよ」


 僕の持つスキル<冥府の王>は相手に触ること無く、かなり離れていても息だけで命ある物ならゾンビに出来る。

 そしてゾンビは僕の命令にさからえない。

 強盗が入って来た瞬間に、強盗の一人に息を吹きかけて、ゾンビになってもらっていた。


「くそー何なんだよー」


「君達はゾンビに噛まれたから、もうじきゾンビになるよ。魔力が高いとゾンビになるのも遅いみたいだけどね」


「くそーー」


 最後に噛まれた強盗はまだゾンビ化していない様だが、最初に噛まれた強盗は口からよだれを出してゾンビ化が終った様だ。


「ふふふ、人殺しに僕は容赦する気はないよ」

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