席の譲り合い

芝サカナ

日常思考 電車の中

 私は先日地元へ帰省した。私は佐本市出身である。その為、車で帰るのが1番良いのだが私は生憎車を持っていない。と言って、飛行機を使うほどの距離でもない。すると必然的に電車に乗ることとなる。そこで私は電車で地元へと帰ったのであった。



 私がホームにたどり着くと、すでに親子連れや若いカップル、外国人観光客などでごった返していた。特急で帰っても良かったのだが、丁度良い電車で特急は無かった。仕方ないので普通列車に乗ることにした。



 電車がホームにやって来ると人々は一斉に乗り込んだ。勿論私も乗り込んだ。座席はちらほらと空いているのか分からないぐらい埋まっていた。私は扉近くの吊革に掴まり、乗り換える駅までの一時を楽しむ事にした。



 1時間程揺られていたであろうか?とある駅に着いた時、それは起こった。私よりかは歳上ではあるが、80よりは下、おそらく60あたりの男性が乗り込んで来た。少し疲れ気味であったその男性は、埋まっている座席の前に立った。すると女子高校生ぐらいの子がその方に対し立ち上がり席を譲ったのだ。勿論その子は優しさからであろう。微笑ましい出来事だった。



 しかしその男性は声を荒げこう言った。

「私がそんな年寄りに見えるのか。」

と。すると女子高生はその場で立ち尽くしてしまった。疲れている様子だから譲ったにも関わらず、酷い言われようだった。その後、女子高生は一度立ち上がった席には座れなかったのだろう。そのまま隣の車両へ移ってしまった。その空いた席には誰も座れなかった。次の駅に停まるまでの間だが。


 その男性はというと、そのまま席には座らず立ち続た。そして目的地に着いたのだろう、停まった駅で降りていった。



 私はこの場面に出会い、思ったことがある。それはいずれ私も席を譲られる可能性があるということだ。そうなった時どうすれば良いのだろうか?そのまま座れば良いのだが、もし仮に50後半や60前半で譲られた場合私も断るのだろうか?譲って貰った感謝の気持ちと、まだまだそんな年寄りではないという気持ちで溢れるだろう。となると首から

「席は譲らなくて良い」と書かれた札を下げるしかなさそうだ。少々恥ずかしいが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る