16 さあ、行こう!
そうこうしている間に、他のねぐらから次から次へと
「うわっ、おまえらまでよせっ! 気持ちは分かるが、おまえらが行って暴れたら罪もない村が吹っ飛ぶ! っつーか、まとめて生け捕りにされる可能性があるから、行くなっ‼」
「えっ⁉」
確かに、この「牧場」にいる何十頭もの竜が飛べば、仮に追いつけたとしてもその先は大乱闘、卵を略奪した先が何も知らない村人たちが暮らす村だったらと思うと、ダドリーさんでなくともぞっとする。
だけど、生け捕りって。
「こいつらの仲間意識を利用して、追いかけて来た竜も捕まえて素材にして売り払うってことだよ! 卵を狙ってたってのも確かだろうが、成竜を捕まえて、解体して売り飛ばすってのも計画の一つに入っている筈だ。でないと正直、
「――――‼」
ダドリーさんがそう叫んだ瞬間、僕の目の前にいた
「なんだぁ⁉」
あまりにいきなりだったので、僕だけじゃなくダドリーさんも、両手で耳を塞いでいた。
誰だって目の前の竜がいきなり声をあげれば、それはビックリする。
「え……今
やっぱり、僕を乗せずに自分も飛んで追いかけたいのかと一瞬思ったけれど、どうやら少し違ったみたいだった。
ねぐらから出ようとしていた竜たちが一斉にその動きを止めて、視線をこちらに向けたのだ。
「…………ちょっと怖いかも」
「いや、大丈夫だ坊主。こいつぁ……」
言いながらダドリーさんも、僕を乗せてくれようとしている
「どうやらコイツが、この牧場内の竜の中でのボス的な立ち位置にいるみたいだ」
「え」
ダドリーさんの声に合わせて、僕も思わず
目線が合うと、その
「坊主。十中八九、とっとと乗れっつってるぞ」
「……僕もそんな気がします」
多分、今の
さすが、冒険者ギルド資料室勤務の僕よりも、現役B級冒険者であるダドリーさんの方が、動揺からの立ち直りは早かった。
「卵は俺と俺の相棒が追いかけるから、おまえは他の連中を鎮めて、この坊やに応援を呼びに行かせてやってくれるか?」
本当はおまえが追いかけたいだろうけどな、と最後言葉を発しているところで、ハッとさせられてしまった。
そうか。
竜は仲間意識が強いと言う話だ。
自分がこの牧場内の竜の主であったなら、確かに自分が先陣を切って行きたいと思うかも知れない。
「……ゴメンね?」
僕はそう言って
「ザイフリート辺境伯領には、僕なんかよりもよっぽど腕の立つ人たちがいるから、一緒に呼びに行こう。向こうには
分かった、とでも言うように
「うん、ありがとう」
ここまでくれば、ダドリーさんに言われずとも
ダドリーさんも「ははは……!」と豪快な笑い声をあげた。
「ああ、まずは
「ええっ⁉ ダドリーさん、僕、初心者ですよ……!」
竜への騎乗は、鞍に付いているロープを辿って登るか、腕力がなければ尾の方から歩いて鞍のあるところに行くかの二択だ。
とりあえず、リュート叔父さんやギルさんにちょっとだけ鍛えられてはいるので、僕はロープを掴んで、鞍が付けられたところまでよじ登った。
「誰でも初めてはある、それがたまたま今日と言うだけだ! 二人乗りの経験があるなら、まだ何とかなる!」
もう一人の指導員であるテッドさんとはほとんど話せていないけれど、少なくともダドリーさんは、初心者の不安を和らげて、自信を持たせる誘導が巧みだと思った。
「その磁石は魔道具だ、行きたいところを念じればそこへ至るまでの道筋を指し示してくれる! 今はザイフリート辺境伯家を指し示してるが、そのあとは火竜騎獣軍に貸す事も含めて、向こうの指示に従うんだ、いいな‼」
「分かりました!」
「おう、じゃあ行って来い! よそ見をして振り落とされるなよ!」
「!」
閉じられていた
「わ……わっ」
僕は慌てて手綱を持ってバランスを保つ。
一度少しだけ身を屈めた後、勢いをつけるようにして、その場から上空へと飛び上がった。
「よしっ、じゃあ行こうか! ザイフリート辺境伯領へ‼」
僕の上着のポケットから洩れて伸びる光の方角へと、僕を乗せた
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