俺の眼力をくらえ!

「はい、るぅちゃん。お散歩の時間だよ~~」

 そう言うとみずきは俺を床に置いた。


 よっし、フリーダムだ!

 ひとまず部屋の中をぐるりと駆け回る。

 人間の記憶があると言っても、やっぱり俺はチンチラなんだな。前世からすると信じられないくらいに身が軽い。本棚の上に飛び乗るのもお手の物だ。


 途中、鏡を見つけた。

 パソコンの写真にあった頭部のモヒカンを確認してみる。

 ……やっぱりあるな。なんだよこれ、少なくとも今の俺に似合うとも思えない。


「どうしたの、るぅちゃん。モヒカンのお手入れしてるの?」


 ぶっ!!

 みずきの言葉に吹いた。

 飼い主にもモヒカンって思われてんのかよ。わかってるんなら、カットしてくれよ!!


「るぅちゃんのチャームポイントだものね♪ 大事にしないとね~~」

 そう言ってみずきは俺のモヒカンを指でつまみ上げて整えた。


 はい?? チャームポイント?? チンチラ界ではこれが流行ってんのか?


 考えながら首を傾げた俺の耳に、カシャッという音が聞こえた。


 ハッと気づいてみずきの方をみると、いつの間にスマホのカメラを俺にむけている。

 え? 撮るの? ってか撮られてたのか??


 さっき見た写真たちを思い出す。あ、あの可愛いポーズをやらないといけないのか?

 やれる自信はないぞ……


 わたわたする俺に向かって、みずきは容赦なくシャッターを切る。

 えええと…… そ、そうだ、とりあえず、前世で皆で写真を撮るときにしていたポーズをしよう!!


 こ、こうだ!! ヤンキー座り!!


「るぅちゃん、お座り可愛い~~♪」


 へ? 可愛い??


 今度は斜めに背中を向けて座り、振り返るようにみずきに向かってメンチを切る。


「やだっ! それも可愛い~~!!」

 カシャッ! カシャッ!!


 ……ど、どういう事だ??

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