丑の刻参りしてみたら、同じ目的の人がいた 完
朝香るか
第1話 丑の刻参り
誰にも見られてはいけない呪詛の儀式。
人がきにくい場所を選んだはずだった。
なのにどうして同じ目的の人がいるのだろう?
呪詛している姿を誰にも見られてはいけないし、
呪うことを知られてもいけないのだ。
「一緒にやろうか?」
「本気度が足りないあなたとしたくない」
「また日を改めるわ」
衣装を脱ぐ。
「ちなみに聞くけどあなたの対象って男? 女?」
「言ったら意味ないじゃない」
「そうかな」
「気軽に考えているから聞けるのね」
こっちは恨んで仕方なくて。
でもどうすることもできないからこそここにいる。
「ってかその衣装何? 仮想大会?」
「あなたは何しているの?」
「だから、さっき言ったでしょ? ある人を呪いたいって」
「丑の刻参りに来たのよね」
「そうよ」
無知過ぎないだろうか?
頭の飾りから白装束まで知らないとは不思議すぎる。
「あなた、正気ですか?」
「正気だよ」
話にならない。今夜は撤収だ。さっさと荷物をまとめて境内から出る。
あとは警察の職務質問に引っかからないように帰るだけだ。
「あなたもこっちの道なの?」
ついてくるし。
「あなたはどこに住んでいるの?」
「ウフフ、秘密☆」
げんなりした。
自宅まで3分の2くらい一緒にあるいただろうか。
「じゃ私はここまでにするわ。あとは人が来ないから早く帰った方がいいわ」
「え?」
振り返ると彼女は消えていた。
「何だったのかしら」
まったく邪魔が入ったものだ。
今日で呪い開始になるはずだったのに随分予定が狂ってしまった。
また適した神社を見つけなければ。
スマホで適した神社を探す。きちんと管理されている神社は適さない。
かといってあまりに寂れた神社では役目を果たしてもらえるか疑問だ。
ちゃんとまつられていて、それなりに近い立地でなければ。
そう思っていた矢先、
呪いたいほど憎んでいた人が階段から落ちて骨折したらしい。
しばらくは職場を休職して完治を目指すらしい。
「これ以上いるのかしら」
相手はこれまで骨折なんてしたことない健康体そのもの。
今回のことで随分と気落ちしていることだろう。
体の動かない不自由さを1か月以上味わうはずだ。
だとしたらこれから呪術を行う道理はない。
あの神社に今度は参拝して復讐を止めてくれたお礼を言おう。
明日は休みだ。なるべく仕事を片付けてすっきりした状態でお参りに行こう。
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