第4話 鼻パック
彼の家まで話しながら歩く。
歩きながら
(何やってんだろ私。
何で知らない人の家で雨宿りさせてもらおうとしてんだろ。
どういう状況やねん。)
と思う。
当のチャラ男、、
おっと同じ高校の生徒のこの男は
困ってるんだから当たり前だろ、という風で
気さくに話してくれた。
「うち、バス停からちけぇんだわ笑
汚ねぇとこだけど。
お前何年?名前は?
俺は3年の秋川成夫。」
「うちは2年です、竹野内千笑子です。
あきかわしげお?
秋、、川先輩」
ホッとしてしまった。
声だろうか?
ホッとする声だ。
「おう!ちえこ。
ちえこって呼ぶわ!
あ、ついたよ。」
豪邸だった。
でっかい犬がいた。
ゴールデンレトリバー。
車庫にはディズニーランドのパレードを思わせる
ド派手なバイク。
「犬、いるんですね、かわいい」
「うん、秋川ジョセフィーヌ=パトリシア・ダルメシアンって名前。
秋川って呼んで。」
「いや、ゴールデンなのに
ダルメシアン言うてるの
どういうことなんですか
結果秋川て長い名前何だったんですか
ハッハッハ」
「なんだよ、おめぇちゃんと笑うんだな」
「笑いますよ、
だって秋川ジョセフィーヌ、ダルメシアンは笑うでしょ、ゴールデンあはは
ゴー、あははゴールデン、、あはは」
「ダルメシアンツボ入りすぎだろ、
笑わねーと思ったわ、バスに乗ってる時、
なんか先生みたいだったぞ?
何かの担任の人かと思ったわ。
前で、こんな、こんな、
しっかりと手組んで(笑)」
「担任の先生は言われたことないです!笑」
「今度ポロシャツ着てみ、
ぜってぇ何らかの担任だから。
まあ入れよ。」
玄関のドアを開けてくれた。
「お邪魔します、、」
「あい。どーぞ。」
秋川先輩の部屋に通された。
愕然とした。
足の踏み場が無いほど物が散乱している。
ソファがあった。
そこに二人で座った。
「いや、マジで片付けた方がいいですよ先輩。
何でこの状態で私のこと
家にあげようと思ったんですか」
「おまえ(笑)
ひどいな、初対面でひとんち来て
一発目の一言それひどいだろ!(笑)
まあ、気にすんなよ。」
「ここ、なだれる、なだれる、」
それから、秋川先輩と私はしゃべり続けた。
ガラクタに埋もれた汚部屋で、
楽しくて楽しくて、夢中で話した。
こんなに笑ったの、初めてかも知れなかった。
「え?この香水、私も同じの使ってます」
「おう、これ、俺の女のやつ。
あんまこれ使ってる子いないよね。」
「うん、そうかも。なんか嬉しいわ。
この香水使ってる人はじめて聞きました」
テーブルに、鼻パックがあった。
高いやつだ。
私も欲しいけど高くて買えなかったやつ。
「鼻パックするんですか?」
「おう。」
「これ、めちゃ流行ってますよね。」
「おう、これも女のやつ。
てか、やってやって。」
秋川先輩が急に膝枕になる。
そのまま鼻パックを手渡された。
「ハイ!!!やって!塗って!
俺の角栓が火を吹くぜ!
るん!」
「るん!じゃないよ、先輩(笑)」
と思わずタメ口で突っ込んでしまった。
膝枕には突っ込めなかった、、
これが、普通の人の普通かも知れなかったから。
膝枕で先輩の鼻にパックを塗っていく。
15分待つ。
剥がす。
二人で剥がしたパックを見て爆笑した。
初対面なはずだけど、次から次に話題が飛ぶ。
そしていつの間にか
先輩の顔が見えなくなってた。
夜になってた。
一体、何時間話していたのだろう。
「こんな遅くまですみません。
ほんとに、、
帰ります。
雨も、いつやんだんだろ、
気づかなかったです、、」
「おう、おまえ、これ俺の名前と連絡先。
あとうちの犬の名前も書いとくから。
覚えろよな。
お前の連絡先とか誕生日と血液型、
おまえんちの犬の名前とかも書いていけよ。
後で星占いするから」
爆笑してしまった。
「あ、先輩の誕生日も教えてください!」
「おう、俺は12/25クリスマス!」
「じゃあ、、」
そう言って、
先輩の家を後にした。
何だか、生きたここちがして、
暗くなった道を家に向かって歩いた。
生きた、心地がする。
あ、そうだ、うちに犬はいないじゃん。
言い忘れた。
すぐ伝えたくなった。
もう、電話したくなっていた。
まだ家にも着かないのに。
そうだ、と思う。
スマホを取り出し、メモアプリを開く。
「夏に心拍数が夏になったリスト」
に書き込まねば。
「秋川ジョセフィーヌ」
「膝枕」
「鼻パック」
「星占い」
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