眠り姫の立華

霜花 桔梗

第1話

 朝起きるといつも思う。ここは何処、わたしは誰である。そう、わたしは自分の存在が分からない。


 探しているのはわたしの過去。


 悩んでいるのは過去の無い現実。


 きっと、思春期の誰もが思う事とかもしれない。わたしはコールドスリープして過去の記憶が無いのである。カプセルの中のスリーピングビューティーとしてこの時代で生きる事にになった。そう、コールドスリープした眠り姫である。


 町の遺跡調査の時に郷土資料館の館長さんに偶然カプセルに入ったわたしは発見された。わたしは町の郷土資料館の館長さんに名前と住む場所を貰った。貰った名前は『立華』である。館長さんは独身であり、一軒家に独りで住んでいたので一緒に住むことになった。館長さんの名前は岩国幾戸、幾戸さんと呼んでいる。

幾戸さんは大学を出て直ぐに郷土資料館の館長になったので、年はまだ20代中盤である。


 わたしは町の谷澤高校に通う事になった。転がりこんだわたしの事を幾戸さんはどう思っているのだろう?


 眠り姫と王子様の様にならないかなと思うこの頃である。

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