効きすぎ

菱木「副社長。沢木さんと仰る方からお電話ですが……」

樹「ん、沢木さん? わかった、ありがとう。……急にどうしたんだろう?

……はい、神岡です」

沢木『神岡さん、お久しぶりです。突然お電話などして申し訳ありません。

 実は、昨日三崎くんに誘われて、少しだけ飲んだんですがね。……その時の彼の様子が、すこし変だったもので』

樹「え……彼の様子が?」

沢木『ええ。

 ……あなたとのことで何か悩みでも話したかったようなんですが……彼、結局何も打ち明けないまま、暗い顔ですぐに帰ってしまったんですよ』


樹「……本当ですか……

 そんなことが……?」

沢木『別れてから、三崎くんの様子がだんだん気になってしまいましてね。彼の悩みについて、あなたには心当たりがないか、お聞きしたくて……いてもたってもいられず、ご無礼とは思いながら電話をかけてしまいました』


樹「…………

 あの、沢木さん、済みませんっ! また改めて私からお電話しますから、今はこれで失礼しますっっ!!」


沢木「……(電話を切ってニヤリ)これで少し反省するかな彼も」



(樹、バタバタと部屋を出ていく)

菱木「あ、副社長!? あのっ……!?

 ……何かあったのかしら……」


樹「……『そう言えば、数日前ちょっと柊くんと言い合いしてから、一度も彼とちゃんと話せてない……

 忙しかったし、気持ちも仕事に向きっぱなしで……

 いや、そんなの言い訳にはならない! 柊くんの気持ち、何とかしてちゃんと聞いてやるんだった……!!』」

(樹、どっと設計部へ駆け込む)

藤木部長「あ、これは副社長。うちの部門に何か……」

(樹、黙ったままずんずん柊のデスクの前まで進む)

柊「……あ、あの……?」

樹「(柊の手首をぐっと掴む)……ちょっと話そう!!」(そのまま手を引いてフロアを出ていく)


設計部一同「……(唖然)……三崎くん、副社長にあんな勢いで連行されて……ヤバいんじゃないか?」

「可哀想に……まだ入ったばっかだったのにな……」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る