第四十二話 魔法具
「これは魔法具だねぇ。アンタたち珍しいもんを手に入れたよ」
「魔法具? ですか?」
「そう魔力付与された武器、防具、または道具は稀に特殊な効果をもち魔法具と呼ばれるものがある」
ミクラ婆さんは染み染みと驚きの声をあげながらダンジョンで発見した剣身のない柄を撫でる。
「それで、その柄はどんな効果をもっているんだ?」
「そう急かすんじゃないよ! まったくそんなだからアンタは幸の薄い顔をしてるんだ!」
質問しただけなのに……。
はあ、ミクラ婆さんはマジで口が悪いな。
「ほら、ツィアこれに魔力を籠めてごらん。おっと扱いには十分気をつけるんだよ。それと、柄の先端は自分や他人に向けたら駄目だ」
「はい」
理不尽じゃね?
オレには常にキツい態度なのにラーツィアには声音からして優しいんだもんな。
……気持ちはわかるけどさ、もうちょっとオレにも優しくしてくれよ。
ラーツィアはミクラ婆さんから受けとった柄を握ると、その細い腕にグッと力を入れる。
途端柄に劇的な変化が訪れた。
「きゃっ!?」
ラーツィアの可愛らしい悲鳴の後、握った柄の先端からブォンという何かが放出される音が鳴る。
それは光輝くナニカ。
正面に構えていたそれは、光の柱となってミクラ婆さんの魔導具屋の天井に突き刺さる。
「あ」
「こ、これどうしましょう?」
「ツィア、それをこちらに」
予想外の結果に慌てるラーツィアに師匠が危険を察知したのかそっと近づいて光を放出する柄を受け取る。
すると光の柱は段々と収束していき形がみるみる萎んでいく。
あー、天井にドデカイ穴が開いてる。
でも、ラーツィアは怪我もなく無事のようだし、必要経費だな必要経費。
「驚いた……ツィア、アンタ見掛けによらずかなりの魔力があるんだねぇ」
目を丸くして目の前の光景が信じられない様子のミクラ婆さんはなぜそんなことを思ったのか聞かせてくれる。
ラーツィアの握った魔法具の正体も。
「その柄は籠めた魔力によって刃を形成する魔法具だ。わたしゃてっきりツィアなら中程度の刃が形成されると思ってたんだけど……そういえばこの娘はアンタたちの中で魔法での攻撃役を担ってたんだっけかね。いや〜、すまなかったよ」
ミクラ婆さんが冷や汗をかきながら謝る。
ラーツィアの莫大な魔力ならこの魔導具屋の屋根が吹っ飛んでもおかしくなかった……危ねぇ、意外と危険な状況だったんだな。
「……そういうことは事前に言ってもらわねば困ります。ツィアが怪我をしていたらどうなっていたことか……」
怖えぇ。
師匠はラーツィアを大事にしてるから不用意に危険に晒したミクラ婆さんに苦言を呈している。
ラーツィアに怪我一つなかったから良かったけど、別の意味でも危険だった。
「でも、レオ、結構楽しかったですよ?」
「……わかりました。ツィアがそう言うなら」
場の空気を変えるためかミクラ婆さんが喋りだす。
「魔力の刃は籠めた魔力量によって切れ味が変わるようだよ。場合によっては恩恵で生成した武器にも匹敵する威力があるかもねぇ。まあ、それ位になると相当な量の魔力が必要だろうけど」
それってかなり使える武器になるんじゃないか?
ラーツィアは体術は苦手だけど、吸魔の指輪を装備したオレには……もしかして最適な武器?
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