第四十話 殲滅
剣を振ると同時に纏わせた消毒液の斬撃刃を飛ばす。
『
第三層へ向かう途中、ゴブリンが異常に集まる地点を見つけたオレたちだが、誰かの叫び声がその中心から聞こえてくるとなったら突っ込まない訳にはいかないだろう。
群がるホブゴブリンとゴブリンの集団の一角を恩恵技で切り崩す。
中心への道が開いた。
覗き込めば男二人に女一人の冒険者パーティーがゴブリン共に群がられて絶対絶命のピンチに追い込まれていた。
オレは全身を傷だらけになりながらも必死の形相で助けを懇願するオレンジ髪の女に安心するように声をかけるとラーツィアに振り返り叫ぶ。
「ツィア! 時間がない、頼む!」
「はい! アル様、任せて下さい!」
「よし、全員一旦下がれ! おーい! お前たちも頭を伏せて防御姿勢を取れよ! 間違っても顔をあげるな!」
オレはゴブリンに群がられている冒険者たちにも注意を飛ばす。
真っ二つになったら目覚めが悪いからな。
ラーツィアの前方にかざした両手の先に現れる魔法陣。
「
そこから放たれるは土を弧を描く刃の形にして飛ばす魔法。
丁度ゴブリンの頭程度の高さに放たれた刃は、見事に次々とゴブリンの頭を跳ね飛ばしていく。
「……」
あー、地面に身体ごと伏せていた冒険者たちが、口をパクパクさせて言葉もなく驚いている。
だよねー、その辺の草を鎌で刈り取るように簡単にゴブリンが刈り取られてるからなー。
そりゃあ驚くべきことなんだけど、何度も見てると麻痺しちゃったのか心が動かないんだよ。
なんか初々しい反応が見れて嬉しいくらいまである。
「『ファルシオン・ダンス』」
ゴブリン共の残党は師匠の恩恵技で斬り刻まれる。
空中に出した四つのファルシオンが師匠を中心に回転し、斬り裂く範囲攻撃の恩恵技。
流石師匠だ。
ラーツィアに突撃してきたゴブリンたちを決して見逃さない。
ヴィルジニーの活躍も目覚ましい。
菱形の盾と片手剣でもって押し寄せるゴブリンの一切をまったく近づけさせない。
オレの恩恵技、ラーツィアの魔法、師匠の剣技、ヴィルジニーの堅実な戦い方、これだけ揃っていればゴブリンの殲滅にかかったのはそれほど長い時間ではなかった。
辺り一面はゴブリンの死体だらけ。
これを剥ぎ取るのは苦痛だが……それよりオレたちにとっては追い詰められた冒険者たちを救うことができたことの方が重要だ。
それだけ強くなれたってことだからな。
助け起こしたオレンジ髪の女冒険者はゴブリンの血に濡れた顔を真っ赤にして、オレを見る。
何度も口を動かしてはいるものの、どうやら恐怖から言葉を発することもできなそうだった。
連れの男二人の冒険者にしきりの礼をいわれながらも、オレたちはダンジョンを潜っていく。
目指す先は第三層、古城エリア。
まだまだ先は長い。
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