第二章

第9話 魔物のくせに生意気だ その1

 この世界に飛ばされてから半年――


 ここは王都グランハルトから少し離れたところにある草原だ。


『竜也さん~、この辺りのモンスターを相手に軽い運動をしちゃいましょうよぉ』


「そうだな。このままだと身体がなまる一方だ。たまには働いてやろう。まぁ、遊ぶ金もつきたことだしな」


『そうですよ、頑張ってください』


「エスカーナ、俺のステータスはどんな感じだ?」  


『ステータスですか、じゃーん!!』


☆☆☆


名前 二階堂竜也

職業 愛の勇者→外道勇者 NEW

善行値     0/999

悪行値  3000/9999

戦闘能力       193

攻撃力        231

魔力         231

防御力        231

速さ         193

 

装備 

💀聖剣エスカーナ

 (だんなさまぁ~)


☆メタルアーマ (物理耐性LV2)


必殺

☆ホーリーブレイク

☆性剣(愛を教えた者の能力を吸収する) new



固定スキル 

☆メガネ


スキル 

☆肉体強化 LV2  攻撃力20%up new

☆魔法強化 LV2  魔法攻撃力20%up new

☆物理耐性 LV2  防御力20%up new

☆雷耐性  LV2  ダメ―ジ20%減 new

☆聖耐性  MAX   吸収  new


☆☆☆


「これは、どういうことだ? 俺の職業が外道勇者になっているぞ。しかも悪行値まで追加されてるじゃないか」 


『わぁ~すごいですね』


「おい、なぜだ!?」 


『だって、天使の私をこれでもかって、犯したんですよ。善行なモンスターだった、ペロペロ熊さんまで倒してますから、まさに竜也さんは外道ですよ』


「まぁ、それは仕方がないだろう。俺の性剣がおさまらなかったんだ」


 性剣のスキル効果で、エスカーナから肉体強化LV2、魔法強化LV2、雷耐性LV2、光耐性吸収、これらのスキルを手にすることができた。やればやるほど強くなる。我ながら恐ろしい能力だ。


「浮気はダメですからね?」


「さぁ、魔物退治でもするか」


 俺は、とりあえず話をそらすことにした。


『えへへ、頑張ってください』


 王都に来てからというもの、俺は戦いから離れていた。勘を取り戻すためにも軽く、弱い魔物を相手に戦ってみるか。


『竜也さん、いましたよ』


 しばらく、草原をトボトボ歩いていると、騎士の魔物が現れた。赤い目を光らせた黒い人型の影、こいつはゴースト、騎士の亡霊だ。この魔物はうらやましいことに、『黒の騎士』を連想させるような俺好みの鎧、漆黒の黒びかりする鎧を身に着けていた。武器は鉄の剣か、あれは、どうでもいいな。


 やはり素晴らしいな。造形も美しいが、鎧からドス黒いオーラが立ち昇って、実に俺好みだ。


 俺の鎧と比べると……


 話にもならないな。メタルアーマは格安で売られている鉄の胸当てだ。


「くそっ、魔物のくせに生意気だ」


 俺はじたんだ。いっそ、ぶんどってやるか。


『さすが、竜也さん、外道ですねぇ~♪』


「うるさい!」


 だが、この草原にこんなのいたか? 普通は、スラッキーのようなネバネバモンスターしかいないはずだが……


「変わった魔物だな」


 メガネで確認すると赤いドクロマークがついていた。


「ドクロマークがついているぞ、エスカーナ、これはなんだ?」


『きっとユニークモンスターですよぉ』


「ほぉ~、つよいのか?」


『ゲームのRPGで言う街周辺にいるボスさんですね。アナライズしますか~?』


「しなくていい、見るからに弱そうだ。さまよう鎧でいいだろう」


「うごぉおおおおお!」


 さまよう鎧は狂暴なうなり声をあげながら、俺に向かってくる。


 俺に敵意を持っているようだ。


『あわわぁ、来ちゃいました、なんか怒ってますよ』


 たまにはエスカーナにカッコいい所でも見せてやるか。俺は聖剣エスカーナを握りしめ、さまよう鎧に向けて斬りつけた。


「うりゃ!!」


【カウンター】


 だが、さまよう鎧に流されるようになぎ払われた。体勢を立て直した、さまよう鎧は俺に向けて剣を突き刺してくる。

 

「ちっ!」


 首筋を少しかすめたか。だが、不思議なことに痛みが全くない。こいつ、見た目と違って攻撃力が、あまりないな。


 さまよう鎧は、何度も俺に向かって剣を振り下ろしてきた。


 ――が当たらない。


 そろそろとどめをさすか。さまよう鎧のスキル、カウンターが厄介だ。


 なら俺の必殺技で――


 さまよう鎧に向けて俺は今、聖なる力を解き放つ。俺の身体から聖なる光が――


 おい? 


 どうなってる?


 聖なる光をまとってなくないか?


 まぁ、きのせいだろう。とりあえず俺は必殺のポーズを決める。相手に向けて剣先をかっこよく向ける。しなくてもいいのだが、した方がかっこいいからな。そして、この台詞を忘れてはダメだ。これこそが重要なんだ。言わなくても発動できるのだが、気にしてはだめだ。


「食らうがいい、悪を切り裂く正義のやいば――!!」 


 二階堂竜也の栄光のステージが、今、はじまる。


 俺は上空に飛び上がり、


「『ホーリーブレイク』!!」


 ホーリーブレイクを発動したことで、瞬間移動に近い高速移動が実現する。それに加えて、エスカーナの刀身が光の剣、光 のエネルギーの集合体となり、防御不可の連続攻撃を行うことができるのだ。刀身がライ〇セイバーみないなものになってしまうはずなのだが……


 あれ、おかしいぞ? どういうことだ!? あいつ、まさか……


【カウンター】


 カキンッと、防御不可の必殺技が、さまよう鎧になぎ払われた。


 さまよう鎧から追撃の刃が振り下ろされ、俺は紙一重でかわす。


 俺は無言のまま聖剣エスカーナを睨みつけた。


『頑張ってくださ~い』


「なぜ、必殺技を出さない?」


『だめですよぉ~、すると疲れちゃいますから、今夜のエッチができなくなりますよ? だからダメです! 絶対に使わせません!!』


「くそっ、駄天使だてんしめ!!」


『それとこれとは別なんですぅ』


 そして、さまよう鎧のSP(スキルを使うためのポイント)が0になるまで俺は戦い続けた。

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