みんなの悩み

 呼ばれた順番通りに占うらしかったので、自分達の順番を待っていた。

 あの後、すぐに呼ばれた人たちは番号を書かれた木の札を貰った。

 自分の番になるとその番号が放送されるから来てくれと。

 その札は数字だけでなく少しイラストがあった。あたしは黒猫。文香は赤色のリボンだった。

 人によってはすぐに終わったり長かったりする人もいた。

 すぐ簡単に解決できる悩みと少し時間のかかる悩みの違いだろう。


 ちなみにうちの書店の店員で選ばれたのは自分と文香だけだった。

 あのはしゃぎ終わった後に、先輩と店長達が自分達の所に来てたくさんの質問責めをされた。

 まあそこまでってほどのものじゃないかもだけど。

 だいたいの質問があたしと文香とでは違ったんだけど一個だけ共通しているのがあった。

 それは店長が聞いた質問だった。


 「二人とも一体、何を悩んでいるの?」

 少しの間ができた。別に難しいことではなかった。

 ただうろ覚えのある人を思い出すだけだと言えばいい。でも言いたくなかった。

 あまり人にべらべらと自分のことを喋りたくない。そう頭の中でぐるぐると考えていた時だ。


 文香が口を開いた。

 「秘密ですっ」

 いつも通り少しテンションの高い文香の声のトーンだった。でも何か違う。

 今日も少しも変わっていないはずなのに。

 「そっ……そうですよ~秘密ですっ」

 文香に便乗して言った。


 書店の店員達はいつも引き際が早いからすぐに質問は終わった。

 でもその代わりに私、僕はこんなことを聞こうと思っていたとたくさん聞かされた。

 みんな一気に喋り出すから誰が何を言っているのか全く分からなかった。

 聖徳太子なら全部聞けちゃうんだろうなぁと思った。

 なんとなくだけど聞き取れたのだけを紹介すると、『彼氏が欲しい』『もっと美しくなりたい』『お金が欲しい』とかそんな感じ。

 なんかよく聞くような感じの悩みだった。

 ちなみにみんなお金を払ってどれだけ時間がかかろうとも占ってもらうらしい。

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