【後輩とゲームしたり、お話したり】
「そんな、悪いですよう、洗い物をお任せするなんて……。それくらい私がやりますって」
「……まあ、そこまで言うのなら……。お言葉に甘えまして……」
「せんぱいだって、『家事をしない時代遅れの男』と思われるのは嫌でしょうしね。私としては、全然、構わないんですけど……」
「あっ! でも、あれですよ、『おい、お茶』とかはダメですよ! 『お茶ちょーだい』って言ってくれないと!」
「えへへ、そんなこと言いながら、せんぱいのベッドにダーイブ!」
「んっ……。当たり前ですけど、せんぱいの匂いがしますねえ……。あー、しあわせー」
「ふっふっふ、せんぱい。恥ずかしいのなら、早く洗い物を終わらせて、私を止めに来ることですね! ほーら、布団にくるまっちゃうんですから!」
「今の私はねこちゃんです! マーキング。自分の匂いを付けて、私のものだー、って主張しちゃうんですから!」
「あっ、いたっ! 思ったより早く来た! 布団、いきなり引っ張らないでくださいよう、頭打っちゃったじゃないですか。乱暴ですねえ、せんぱい」
「今の私はねこちゃんなんですから、優しくしてくれないと」
「ほら、撫でてくださいにゃーん」
「んふふふ~。ちょっと恥ずかしいけど、幸せです」
「ほらほら、もっともっとです~。にゃ~ん」
「そうだ、せんぱいも撫でてあげますよ! ほーら、なーでなーで……あっ、逃げちゃダメですって! 恥ずかしいんですか? 可愛いなあ、せんぱいは」
「これからどうします? 明日って何もないですよね?」
「じゃあ、ゲームでもしましょうか」
「えーっと……。何があるんでしたっけ……?」
「ふむふむ、格ゲーですか。いいですよー。手加減してくださいね」
「せんぱい、格ゲー好きでしたっけ? え、そうでもない? じゃあなんで買ったんですか? ……こういう時のため? ああ、友達と遊ぶ用ってことですか」
「まさか、私以外の女の子も連れ込んで、こうして遊んだりしてるんじゃないでしょうねえ……? せんぱーい?」
「あーっ、無言で対戦を始めない!! 誤魔化しちゃダメです! ちょっ、ちょっちょっちょっ、ハメ技はもっとダメです!! 初心者相手に遠距離ハメをする先輩がどこにいますか!! こっちはガードのやり方すらよく分かってないのにっ!」
「あっ、こら、ダメですって! ああっ、後輩ちゃんが! 捕まえられてっ! 画面端っ! あーっ、端に追い込んで下段はやめて!! ぐっ、このっ……ああっ! 後輩ちゃんがっ! バースト読まれてまたボコられるっ!!」
「負ーけーたーっ!! なんでこんな時だけキビシイんですか! いつもはあんなに優しいのに!!」
「あー、もうっ!怒りました! もうせんぱいとは、二度と格ゲーなんてしてあげませんから!!」
「レースゲームも勝てそうにないし……。ここはアナログゲームをしましょう!」
「え? ああ、『二度としない』のは格ゲーだけですよ。当たり前じゃないですか。これからも私は、たっくさんせんぱいと遊んじゃうんですから!」
「あ、オセロある。これにしましょ!」
「せっかくですし、罰ゲームありでやりましょうよ! 負けたら罰ゲームです! 何がいいかな~?」
「じゃあじゃあ、せんぱいが負けたら、私に膝枕されてください!」
「……え? 罰ゲームになってない?」
「何をおっしゃりますか! どうせ素直じゃないせんぱいのことです、私が、膝枕してあげるー、って言っても、断っちゃうでしょ? 恥ずかしがり屋さんだから。だから、罰ゲームなんです! 負けたら、30分間の膝枕の刑です~! たっくさんなでなでして、あまやかしちゃいますからねっ!」
「あ、もし私が負けたら、せんぱいが私を膝枕してくださいね」
「じゃあ、デュエルスタート、です!」
「……はて?」
「えー、なーんにもおかしくないですよー?」
「せんぱいが負けたら、せんぱいは恥ずかしさを堪えて、私に膝枕をされる。私が負けたら、私は喜んで、せんぱいに膝枕をされる。ほら、同じじゃないですか」
「『どっちもお前が得するだけ』? あ、それはそうですね。でも、もう勝負は始まちゃったので、今更なしにするのはなしです。私の『デュエル』は“真剣勝負”と書いて、“デュエル”と読むんです。恋とおんなじです、いつだって真剣勝負なんです!」
「もーっ、さっさと始めますよ! それでも男の子ですか? 大人しくオセロでボコボコにされて、潔く私に膝枕されなさいっ!」
「ふふんっ! 私はあざとくてズルい、悪い女なんですー。都合が悪くなったら『それでも男ですか!』と性別を持ち出した挙句に泣き落としに掛かりますし、さり気なく胸元のボタンを開けて谷間を見せ付け、せんぱいの思考力を奪います! そして有無を言わせず私が先行です!」
「先行は貰った! 私のターンっ!」
「じゃあ、まずここにします。せんぱいは? ……ふむふむ、なるほど。じゃあ、私はここですかね。……あー、そこに置いちゃいますか。なーらー……こっち、いや、こっちで! ああっ、そうなるのか……! じゃー、ここ!」
「……ふふっ。楽しみだなー、せんぱいを膝枕するの」
「突然ですけど、古今東西ゲームを始めていいですか? あ、せんぱいは普通にオセロしてもらって大丈夫ですよ、私一人でしますから」
「古今東西、イェイ! 『せんぱいの好きなところ』! まず、優しいところ!」
「……どうかしました? せんぱいの番ですよ?」
「具体的には、一緒に出掛ける時にいつもさり気なく車道側歩いてくれるところとか!」
「ああ、独り言なので、お気になさらず」
「私、もう置きましたよ。ほらっ、せんぱいの番!」
「次に好きなのはー、えー、たくさんあるからなー……。あっ、ワガママをいつも聞いてくれるのに、私のためにならないなー、って思った時は、ちゃんと叱ってくれるところ! それと、言い過ぎたかなー、と思ったら、すぐにアイス買ってくれて、『言い過ぎたね、ごめんね』って謝ってくれるところ! ぎゅっとしてくれる手が大きいところ!」
「……せんぱい? どうかしました?」
「さっきからなにしてるんだ、って……。一人古今東西ゲームですけど」
「え、なんで、って訊かれても、こうしたらせんぱいの集中力が削がれて、勝ちやすくなるかなーって考えて、それを実行してるだけですけど?」
「え、番外戦術だ、って?」
「ふふん、番外戦術、上等ですよ! 恋はなんでもありなんです! 私だけのせんぱいになってもらうためなら、なんだってやっちゃいますから! 私だけの独占にするんです!」
「次の好きなところはー、髪を切った時も、新しいネイルを試した時も、誰も気付かないような変化を、いつだって気付いてくれるところ、です!」
「えへへ、他にはですねー……」
「……嘘でしょ、普通に負けた……」
「というか、途中からせんぱいの好きなところ探しが楽しくなって、オセロの方がおろそかになっちゃってた……」
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