018

 月曜日。

 寝覚めの感覚はとても良かった。

 先週末は魔力不足でひきずられるような睡魔に襲われたというのに。

 昨日、香とあれだけ共鳴したけれたど魔力不足の感はない。

 なるほど、共鳴自体が魔力を消費するわけではなさそうだ。


 朝練の時間に目を覚ませたので着替えて闘技部へ行く。

 扉を開けると、やはりフィールド中央で凛花先輩が気を高めていた。

 あの緑色のオーラがしっかり見えるということは濃い魔力なんだよな。

 やっぱりモブのレベルの人じゃねえ。

 そして遠目で見ていたつもりが1秒後に突風と共に目の前に現れる。

 うん、もう慣れた。



「凛花先輩、おはよう」


「あ~、おはよ。今日は平気そうだな」



 俺の魔力状況を気にしてくれている様子。有り難い。

 いつものボーイッシュな黒髪の凛花先輩。

 身長が俺と同じくらいなんだけど大きく見えるのは何故だろう。



「朝も走るんだろう? 疑似化するぞ」


「頼むよ先輩」



 相変わらず話が早い。

 だんだんとこの人のペースというものが理解できてきた。

 基本、待つ必要のないことは待たないんだな。

 もちろん断る由もないので両脚の疑似化をしてもらう。

 脚が終わったと思ったら先輩は腰のあたりの疑似化を始めた。



「え? 上半身もすんのか?」


「もう下半身の衝撃に耐えられないからね。今日は全力で走ってみると良い」



 肩や腕、首までも疑似化を施してもらう。

 もちろん施した場所は熱を帯びて違和感バリバリだ。

 けれども以前より熱が籠もるような不快感は少ない。



「お、前だったらこれで滞っていたところが平気だな」


「え?」


「魔力の導通を繰り返したか。悪い考えじゃない」



 導通。

 心当たりは昨日たくさん香にしてもらったやつ。

 まさかこんな副次効果があるとは。

 今夜、お礼を言っておこう。



「よし、行けそうなら走るぞ」


「はい」



 さっさと駆け始めた凛花先輩を追ってフィールドへ出る。

 準備体操もしていないので最初はゆっくり。

 意識して脚を伸ばしながら。

 徐々に慣れてきたところで速度を上げる。

 既に凛花先輩はびゅんびゅんと何度も俺を追い抜いている。

 前に事故りそうになった、およそ時速100kmまで速度を上げる。

 びゅうびゅうと吹き付ける風。

 しまった! ゴーグルを持ってくるのを忘れた。

 仕方がないので腕をかざして風圧を誤魔化す。

 つーか、凛花先輩は速度を上げても平気なんだな。

 もしかして目も含めた全身が強化されてんのか。



「なかなか慣れてきたじゃないか」


「先輩にはぜんぜん追いつけねぇ」


「あと少し走ったら、いちど止まろうか」


「わかった」



 曲がり角で壁を蹴り、円運動に使っていたエネルギーを推進力と相殺する。

 反動で空中に放り出され・・・。

 あっ!? バランス取れねぇよ!?

 回転しながら地面へ向かう俺。

 ヤバい、脚から接地できねぇ!?



「おおっと、まだ甘いな」



 またも横から現れた凛花先輩の両腕に抱えられ、衝突を免れた。

 すとんと地面に降ろしてもらってから緊張感や恥ずかしさといった感覚が襲ってくる。

 まだまだ思考が速さに追いついていない。



「ああ、あっぶね・・・先輩、ありがと」


「ははは、空中の姿勢も練習だな」


「うん、頑張るよ」



 って、何をどう頑張るんだよ、俺。

 擬似化やってもらわねぇと超人訓練できるわけねぇだろ。

 そもそも空中で錐揉み回転した時点でアウトだ。

 そうならないようするしかねぇ。



「そんで、何か別のことをやんの?」


「あ〜。直線的なのは慣れてきたろう? 向きを変えるのをやろうか」


「えっと・・・具体的には?」


「アタイと鬼ごっこ」


「え?」



 ◇



 結論。

 これは大人と子供の鬼ごっこ。

 端で真上に跳んで壁を蹴って逃げるとか、超速で方向を切り替えるとか。

 あんなん無理! 捕まえられるわけねぇ!

 ただ直線的に脚が速いだけの俺にどうしろってんだ。



「はぁ、はぁ、はぁ・・・」


「ははは! よし、明日から朝はこれだな!」


「捕まえられるまでやるって?」


「君は途中で諦めるのかい?」


「んなわけねぇだろ! 言われたことはやんぞ!」



 方法論が思いつかない時は武骨に積み重ね。

 ほら、格闘漫画の定番だろ?

 ・・・あと1週間でどうにかなんの? これ。



 ◇



 今日の具現化の授業時間。

 例によって修験場を訪れていた。



「滝行はまだやるんですか?」


「ううん、見えるようになったら終わり。次はこれ」



 教会風の建物にて聖女様が出してきたのは1本の太い棒。

 長さは30cm程度。

 両端に金属らしきものがついており、真ん中に真空管のようなガラス状の筒がある。

 なんだこれ?



「これは白のレゾナンストレーナー」


「白の? トレーナー?」


「使い方はこう」



 聖女様が両手で両端を持つ。

 集中するためか目を閉じている。

 あ、魔力だ。

 聖女様の身体を白いオーラが包み込む。

 すると棒の中が白いもやもやで溢れてきた。



「綺麗ですね」


「うん。こうなるまでがんばって」


「え?」


「はい」



 パフォーマンスはすぐに終わり、そのまま棒を渡される。

 また説明なしかよ!



「ああ、聖堂は邪魔になるからこっちで」



 色々聞きたいけども、口を挟む間もなく聖女様は奥へ進む。

 仕方ないのでその後を追った。

 薄暗い石廊の奥にある部屋。

 分厚い木の扉がぎい、と開けられると中は倉庫のような窓の無い部屋だった。

 時代錯誤の石造りの倉庫。ここだけ中世かよ。



「ここで。私がやったようにできたら声をかけてね」


「待ってください。これ、何をどうするんですか?」


「ええ? 名前のとおりだよ。棒とレゾナンスすればいいの」


「どうやるんですか?」


「う~ん? レゾナンスしたことない?」



 あっさり聞いてくるね、この人。

 共鳴有無なんて「誰かと付き合ったことある?」くらいの意味だと思うんだ。

 なんか、まだこのへんの感覚が掴めねぇんだよな。

 もしかしてこの変態聖女様の感性がおかしいだけかもしれねぇけど。



「あります」


「よかった。そこから教えるの大変」


「で、俺はこの棒とレゾナンスするんですか?」


「そう」


「どうやって? 棒ですよ?」


「自分の流れを見て合わせる」


「あっ!? ちょっと!」



 しれっと出て行く聖女様。

 ばたんと扉が閉められた。

 って、おい! 真っ暗だよ、ここ!!

 監禁なんじゃねえのか!?


 ・・・もうわかんねぇって。

 とにかくやってみろって?

 俺は仕方なく、渡された棒の両端を持ってみた。

 ・・・。

 何も起きねぇ。

 そりゃそうだよな、それで光ったら苦労しねぇ。


 棒と共鳴するってどうすんのよ。

 この棒に魔力があるとは思えん。

 俺の感覚的にこいつはただの棒だ。

 だから導線みたいな役割なんだろう。


 てことは・・・。

 この棒は条件が整えば魔力を通す半導体か。

 光り方が真空管みたいだったな。

 両端から魔力で圧力をかければ光ったりすんのか?


 いやさ、そもそもどうやって魔力を通すのよ。

 俺、凛花先輩に後ろから「破っ!」てしてもらわないと動かせねぇんだが。

 ・・・。


 もうちょっと考えろ。

 最初に滝行をやっただろ。

 あれに意味がないわけじゃない。

 だから魔力の流れを掴んでることが前提なんだ。

 さっきの聖女様の様子だと魔力を放出した感じもしなかった。

 だから身体の中でどうにかすればいいと思うんだ。


 あ、もしかして。

 共振させるってことかな。

 集魔法やってみるか。


 呼吸と鼓動。

 まずはここから。

 すぅ・・・はぁ・・・。

 ・・・よし。

 次は魔力の波・・・。

 五感を飛ばす。

 ・・・。

 ・・・。

 ・・・・・・暗いと眠い。

 くら、くら、くら・・・。

 ・・・。

 これか。

 すぅ、はぁ、すぅ。

 ・・・。


 お腹に魔力が集まり始める。

 ねっとりとした熱さが身体を這っていく。

 と言っても魔力が不足はしていないので量は多くない。

 だから自分の中で共振をしているだけ。


 目を開けた。

 ぼんやりと明るい。

 手に持った棒が少しだけ光っている!

 ああ、ほら。やっぱり。

 共振してると導通するのか。

 でも聖女様がやったのと比べると淡い。

 まだ完全じゃないってことか。

 棒の中を見ると、感じていた波がゆらゆら見える。

 ああ、これ。俺の揺らぎだよ。

 ・・・。

 炎を見てるようで面白い。

 なんだっけ。

 あ、心電図みたいな感じだ。

 単純でない波形が固有の能力の象徴なんだろな。

 ・・・。

 自分の波なのに落ち着く。

 ・・・。



 ◇



 がちゃり。

 ぎぎぎ。

 んあ?

 眩しい!



「目、覚めた?」


「おはようございます」


「暗いと眠いよね」



 寝てたのか、俺。

 そうだ、レゾナンストレーナーの練習してたんじゃん!

 なんで寝てたんだよ。



「あ、これ。自分でレゾナンスできたね」


「へ?」


「ほら、少し光ってる」


「・・・?」



 差し出された棒を見ると、暗いからわかる程度に光っていた。

 アレで良かったのか。



「今何時ですか?」


「え? 12時だよ。戻るんだろうから呼びに来たんだよ」


「ちょっ!? 早く言ってください!」



 俺は飛び起きた。

 くそ、暗いからってどうして寝てたんだよ。



「また明日ですね。それじゃ!」


「あっ、待って・・・」



 俺は部屋を飛び出た。

 連日、昼休みぶっちしてると気まずいんだよ!

 何か言われた気がするけどそれどころじゃねぇ!

 早く戻らねぇと!



 ◇



 今日の付き添いはソフィア嬢と結弦だ。

 久しぶりに彼らと一緒に昼に食堂へ来た気がする。

 まだ入学して2週目のはずなんだけどさ。

 毎日の時間の濃度がやばい。どうして?


 それぞれ好きなものを手に持ち着席して食べている。

 俺は体力回復が追い付いていない気がしたのでカツ丼にした。

 予想を裏切らない美味さ。ここの食堂はホントいいね。



「武様。逢瀬は存分にお楽しみなさいましたか」


「んぐっ!?」



 頬張っていたところでソフィア嬢がいきなり振ってくる。

 危ねえよ! 詰まるところだったじゃねぇか!

 優雅に鮭のムニエルを食しながら澄まし顔でする話じゃねぇ!

 まったく・・・確かに逢いに行くとは言ったよ?

 その聞き方もどうなの。



「ごほ・・・失礼。お嬢様がなんつー聞き方すんだよ」


「あら、適切な言葉を選んだつもりでしたが」


「お前な」



 金髪縦ロールをかき上げて何でもないという顔をするソフィア嬢。

 なんかこいつとの距離感がわからねぇ。



「ノーコメント。香の話はお前らとは関係ねぇ」


「ほほほ。照れ隠しでございますわね」


「・・・」



 何を言っても無駄だな、こりゃ。

 そしてお楽しみしたと暗に伝えてしまった自分に反省。



「武さん、今日はまたお茶するんですか?」



 きつねうどんを啜りながら結弦が話題を変える。

 故意? 空気読んだ? タイミング良いんだけど。

 彼のような日本人と和食を食べるというだけでなんか安心感がある。

 さくらさん、選べるときは和食を食べないからね。



「いや、今週は皆の練習を見せてもらおうかなと」


「オレやソフィアさんの部活見学に来るんですか」


「ああ。結弦の居合も見たいしな」


「はは。緊張します」



 うん。

 逃げてばっかじゃ皆をコントロールできねぇ。

 こちらからも積極的に関わらねぇと。



「結弦は刀斬部だよな。ソフィアは何部なんだ?」



 エストックだから刺突剣の部活だってのは見当がついてる。

 念のため確認だ。



「武様からご興味をいただきまして嬉しいですわ。わたくしは貫刺部ですのよ」


「貫刺部か、わかった。それじゃ、貫刺部、刀斬部の順で見に行こう」


「その後、わたくしも武様の闘技部を拝見しに参りますわ」


「オレも一緒に見に行きます」


「ああ、見たいならいつでも。落ちこぼれって言われてるらしいけどな」


「武様が落ちこぼれであるはずがございません」



 即座に否定してくれんのは嬉しい。

 俺を盲信気味なのは気になるけど。

 でもま、具現化しないのなんて下の下って思うんじゃないかなぁ。



 ◇



 そして放課後。

 結局、今日は3人で行動することになった。

 最初に訪れたのは予告通り貫刺部。

 レイピア、エストック等の西洋式刺突剣を中心とした部活だ。

 この2種類でさえ俺は名前だけで区分けを知らなかった。

 レイピアが小剣で盾を持って戦うスタイル。

 エストックは大剣で両手持ちで鎧をも貫くスタイル。

 要するにエストックは槍のような長剣というわけだ。


 で、ソフィア嬢はエストックを持っている。

 刃渡り1メートル近い。

 かなり重量があるんじゃない?

 軽々と持って試しに振り回している。

 いや、相当に様になってる。

 あれは一朝一夕で身につくもんじゃない。



「ソフィアさん、華麗ですね」


「すげぇな。あんなの振り回せねぇよ」



 俺たちは見学と称して後ろで見るだけ。

 あ、先輩と物理武器で練習をするようだ。

 練習試合とはいえ危険なので、武器の刃先に布を巻いている。

 一礼をして向かい合って。

 いつも澄まし顔のソフィア嬢が真顔になった。

 悪さするイメージしかなかったけど、ああなると格好良いな。

 顔つきも絵になる。さすが美しい。


 これから始まる練習試合を練習の手を止めて何人もが見ている。

 近くに試合を見ている先輩らしき人がいた。

 ちょうどよいので彼女の噂を聞いてみる。



「こんにちは。彼女、実力はどうですか?」


「同じクラスの子? ソフィアは凄いよ。技術だけならトップクラス」


「え? 先輩方よりも優れてるんですか?」


「もちろん具現化すればまだ私達の方が強いよ。でも実剣を使った勝負は互角以上。実力を認めるのは悔しいけどね」


「びっくりです。お話、ありがとうございます」



 なるほど・・・だからソフィア嬢の試合を皆、見物しているのか。


 練習試合が始まった。

 がきんがきん、と何合かを互いに打ち流す。

 実武器だと緊張感あるな、おい。

 火花が見えるってことは相当に力が入っている証拠。怖ぇ。

 金属音もけっこう激しい。


 ソフィア嬢は先輩の突きを何度も受け流す。

 受けてばかりだと攻め負けて見えるが、あれは隙を伺ってるな。



「はっ!」


「あっ!?」



 気合とともにソフィア嬢が踏み込んだ。

 がきん、とひときわ大きな音がしたと思ったら先輩の持っていた剣が手から離れていた。

 がらんと先輩のエストックが遠くに落ちた。


 え、どうやったの? 今の?

 速すぎ。剣先の動きが見えなかった。

 互いに一礼して試合は終わりのようだ。



「わたくしの試合、いかがでしたか?」



 得意気な雰囲気を隠そうともしないソフィア嬢。

 こういった自信に溢れる姿も彼女だから許される。

 さすがは才色兼備のお嬢様といったところだ。



「一撃でなんて華麗で格好良いな。大きな剣をその細身で自在に振り回してんのも驚きだ」


「あの一撃は相当に強いです。ソフィアさん、上級者ですね」


「ほほほ。欧州の大会で好成績は修めておりますので」


「素直にすげぇ」



 ラリクエにおいて得意武器は初期スキルが多少高い程度で、ゲーム中に部活で鍛えていく。

 それは主人公も例外じゃない。

 このあたりはRPG仕様と思っていた。

 でもソフィアのこれ、多少ってレベルに思えねぇ。

 主人公補正なのかここからもっと強くなるのか。

 正直、素人の俺には想像がつかねぇよ。



「ソフィア嬢を怒らせちゃいかんってのはわかった」


「武様に評価いただけまして光栄ですわ」



 他の主人公連中もそうなんだろうけどさ。

 覚醒したら魔力でいつでも武器が出せんだよね。

 怒ったりして武器を向けられたら・・・うぇ、ヤバすぎる。怖ぇ!

 後学のため動きだけでも覚えておこう。

 護身のためじゃないよ!?



 ◇



「わたくし、日本刀を見るのは初めてですわ」


「日本人でもそんなに見る機会はねぇぞ」



 お次は刀斬部にて。

 チャンバラよろしくカンカンと木刀で切り結ぶ先輩たちが周囲にちらほらといる。

 時代劇どころじゃない、真剣の乱取りもある。

 そんな中、居合を練習する結弦の姿を見学していた。


 巻藁を前に集中して佇む彼は傍目には棒立ちしているように見える。

 両手をだらんと下げ自然体で立つ。

 その姿勢からどれだけ素早く居合い斬りができるのか。

 動画などで見たことはあるが現物を間近で見るのは初めてだ。



「・・・」



 結弦が集中しているのがわかる。

 空気が凛と張り詰めてその場の緊張感が高まる。

 見ているこちらも緊張してくる。

 


「やっ!!」


「おお!」



 気合とともに居合抜き。

 一閃が走ると巻藁がざんと斬れる。

 さすがに一閃して刃が通り抜けてから巻藁が崩れ落ちるという漫画みたいなことはない。

 それでも一瞬で斜めに両断される様は感嘆する。

 つか、動き自体が見えなかった。

 ソフィア嬢の時と違って集中して見てたのに。



「凄まじい切れ味ですわね」


「抜刀から斬るまで速すぎる」



 レイピアやエストックのような突く剣。

 クレイモアのような叩く剣。

 そして日本刀やシャムシールのような斬る剣。


 斬撃に強い剣の中でも日本刀のような重ね打ちをした鋼は丈夫だ。

 だから力で斬る動きをしても刃はなかなか折れない。

 きっと具現化で再現される刀も同様の性質がある。



「お恥ずかしい、断面に甘さがあります」


「え、そうなの?」



 やってしまった、という表情で戻って来る結弦。

 表情があまりに暗いので単に失敗したというだけの雰囲気ではなさそう。

 けれど彼が言う断面を見ても綺麗に斬れている。



「ソフィア、わかるか?」


「いいえ。綺麗に斬れていますわ」


「あれじゃ荒いんです」



 その道の人にしかわからない違いなのだろう。

 よし、先輩らしき人に聞いてみよう。



「あの、すみません」


「どうした?」


「結弦が居合で斬ったこれ、荒いんですか?」


「うん? いや、綺麗な斬り口だと思うよ」


「ですよね。ありがとうございます」



 うん。わからん。

 彼が目指す皆伝の道は相当に険しい。

 この見学でそれだけは理解することができた。




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