第10話 日曜日 彼女と映画

 日曜日、直美さんといつものカフェで待ち合わせた。

 仕事終わりの直美さんは水色のワンピース姿だった。


「映画に行かない?」

 直美さんが唐突に言った。


「今から?」

「うん。今から」

「まあ、いいですけど」

 直美さんが笑顔を浮かべた。

 

 カフェを出て、電車に乗って映画館のある駅で降りた。

 映画館までは駅から歩いて十分だった。

 繁華街を直美さんと歩いた。

 直美さんが迷子にならないようにと言って、手をつないでくれた。子ども扱いされて、少々腹が立ったが、手をつなぎたかったから素直に従った。直美さんの手は小さくて柔らかかった。


 映画はハリウッドのヒーローアクション物を観た。

 直美さんが券を買ってくれると言ったけど、断った。これ以上、子ども扱いされたくない。だけどジュースとポップコーンは買ってもらった。というか、買われてしまった。もったいないので断るわけにもいかず、頂いた。


 直美さんと甘いキャラメルポップコーンを食べながら映画を観た。

 隣の直美さんが気になって全然映画の内容が頭に入って来なかった。

 直美さんはスクリーンを食い入るように見て、不安そうな表情を浮かべたり、笑ったり、涙を浮かべてたりした。

映画が終わると、もう空が暗くなっていた。


「日が短くなったね」と直美さんが言った。


 駅まで直美さんの映画の感想を聞きながら歩いた。

 あの場面でどう思ったとかって聞かれるけど、直美さんしか見てないので答えられない。

 だから、無難な感じだったとしか言わなかった。


「映画、つまんなかったよね。急にごめんね」

 駅に着くと直美さんがすまなそうに言った。


「いえ、そんな事は」

「よく考えたらおばさんと遊んでもつまんないよね」

 弱々しい笑顔を直美さんが浮かべた。

「そんな事ありません。楽しかったです」

「本当に?」

「はい」

「だから、また二人で出かけたいです」

 直美さんが嬉しそうに笑った。


「のびちゃん、ありがとう」

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