第10話 幼気な子羊が淫魔の餌食に

「ナタリー、あの子はダークエルフです」


ナタリーは、それはもう驚いた様子で目を開き両手を口に当て驚く。

「そんな、まさか!・・・絶滅したと聞いていますし、しかも王宮で!?」


ナタリーはロザリーがその様な嘘を付く人格では無く、自分もその様な教育をしていなかったので、それが本当だと瞬時に理解した。

「ロザリー様?理解しましたが、亡きエミリアン様の敵でもあるダークエルフを夫にしたいとはとても私は納得いきません!!」


ロザリーが笑みを浮かべて「当然です」と答える。

また、ナタリーは首を傾げロザリーの言葉を待つ。



ロザリーは自身が推理した内容を語った。

「王宮にダークエルフの子供が姿を隠して住んでいる事を許可出来るのは誰か?」

「ハッ、まさか!」

ビックリした様子ナタリーに自分の推測を続けて話す。

「そうよ。王宮で働ける許可を出せるのはブリンクス王だけ。そしてその子を管理しているのが王直属で親衛隊長の部下よ。これはブリンクス王が知っていて許している事よ」

「まさか!そんな事あり得ないわ!」

「私の推理が違うと?」


ナタリーは黙ったままロザリーが続ける。

「私はあの子に透視の魔法をつかったわ」

「本当に?」

「えぇ、間違いなくこの目でちゃんと見たわ!あの黒い髪と私と同じ耳よ」


不安げな表情で溜息をつきながらナタリーが呟いた。

「王宮はどうなっているのかしら・・・」


更にロザリーの推理は続く。

「私はね、こう思っているの。あの子の歳は大体100歳位かしら、100年前に何か王宮であったと思うの。問題はあの子の親よ」


そして更なる爆弾発言をナタリーに投げつける。

「あの子の親はブリンクス王だと思うの!」

流石にそんな事は無いとナタリーが怒るが納得できる答えが返って来た。


「だけどブリンクス王の子で無ければ王宮で働く事をブリンクス王が許可する訳が無いわ」

ナタリーは返す言葉も無く呆然としている。

「そうなると、ブリンクス王の子だけどエルヴィーノはダークエルフなので相手の女はダークエルフだと想像できるわ」

ブリンクス王は戦争で自らの子を全て亡くし、勝利はしたが多大な損害を受けていた。



「約100年前に戦争は終わっているけど、エルヴィーノは100歳ほどよ。ブリンクス王がどこかでダークエルフの女を囲っているに違いないわ。そして、親衛隊長が管理し部下に子供を管理させ親子にはどちらにも脅しをかけるはずよ。母親には子供の命と引き換えに言う事を聞かせる。子供には普通に召し使いをさせて、失敗すると親に迷惑がかかると言って聞かせる」

「でもどうしてブリンクス王はそのダークエルフに自らの子を産ませようとしたのでしょうか?」

「そこまでは解からないけど・・・忌々しき問題だわ」



「王には関係の無いダークエルフの子供では?」

ナタリーが聞いてみるがロザリーが簡潔に答える。

「関係の無い者を自分達の側に置きますか?しかもダークエルフですよ?発覚すれば一大事になる重大な事ですよ?」



夫亡き後、国の内政を管理する一人として、ロザリーの鋭い指摘にナタリーは褒め称える。

「ロザリー様の御慧眼には畏れ入ります。ではグンデリックに女の居場所を調べさせます」

席を立とうとするナタリーを手で合図し止める。

「今はそれよりも、罠よ」

ナタリーも理解して二人で考え込む。



ナタリーの理解とはロザリーの理由と多少違うが、エルヴィーノが本当にブリンクス王の子であればその秘密を知り、エルヴィーノとただならぬ関係になれば、再度王族との繋がりが出来る可能性があるが、それには証拠と関係を作る時間が必要だ。



ロザリーが満面の笑みでナタリーに話し出す。

「このような方法はどうかしら・・・まず、定期的に行っている親睦を深めるお茶会にミシェルと召し使いのエルヴィーノを偽りの招待状を送るの。あ、やはり招待状は私が直接渡しましょう。宮中での仕事を円滑に行うための根回しと伝えた方が納得いくでしょう。そして訪問の際には、部屋に黒を使った物で模様替えしましょう。更に我が家の家宝的な物をあちらこちらに置くの。物の手配と物語は考えて下さいね!! それでね、それをわざとエルヴィーノに壊させるの!! それは家宝の物で2度と手に入らぬ一品で、いくらお金を積まれても許しませんって怒っちゃうのよ!メイド長のナタリーが!!」


“はぁ~”と、ため息をつきながら「それで?」と続きを催促するナタリー。


「我が家のメイドや騎士らが家宝を壊させたと大騒ぎするから、召し使いのエルヴィーノは泣き出しちゃうかもね~そこで私がエルヴィーノをかばいながらミシェルと交渉するわけ!ブリンクス王から賜った家宝を壊されては、ブリンクス王に申し開き出来ないし、お金で解決出来ない以上、今回の事はお互いの為に秘密にしましょう。その変わり召し使いのエルヴィーノを私に預からせていただきます。ちゃんと礼儀作法を今以上に教えて、この子の事は一切外部には漏らさず私の側にずっと置きましょう。どう?」


自己中心的な考えに諦めながら賛同するナタリー。


「その会話の中で黒に関わる事を何度も言えば流石にミシェルも解るでしょう。私がエルヴィーノの秘密を知っている事を。アッ私が透視の魔法を使える事を言った方が早いかな?ブリンクス王の隠し子であるエルヴィーノが王宮を歩き回って"変な人の目に付いたら"どうするのですか!お家騒動では済まないわよ!エルフ族全体の問題になります。最悪の場合ブリンクス王の退位に成りかねません!て、脅しをかけるの!」


ナタリーが苦笑いする。

正に自分の事は棚に上げての言い分である。

どこかから、この少年愛好家が! と聞こえてきそうだった。


「勿論、私がいる限りそのような事にはさせません!幸い、当公爵家では警備も厳重で信頼する家臣もおりますし、鉄壁の警備が出来るでしょう!!ってね。フフフフッ」


欲望に魅せられた悪い顔で微笑むロザリーをナタリーが諌める。


「流石ロザリー様!!良くその様な悪巧みが!それに・・・悪者の笑顔ですわよ!それは」

ナタリーの言葉にロザリーが返す。


「アラッ!これはナタリーから習った仕草ですわ!」

そう言い放つと、二人で同じように笑いだすのであった。




※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez




そして数日後、滞りなく計画通りに進んだ。


ミシェルは帰り、エルヴィーノはロザリーの屋敷に残った。

「親衛隊長のジャックには私から説明しますわ。だからあなたは何も心配しないでくださいね。ジャックに聞かれたらちゃんと仕事していると伝えてれば良いわ」

帰る前にロザリーが告げるとミシェルは随分ほっとした様子だった。


これで今宵、変態の・・・いや、ロザリーの黒い欲望の扉が開かれるのであった。


当の本人ロザリーは、夜の事を考えると目が血走り、心臓は激しく鼓動し、身体が火照っているのを自覚して「落ち着け!落ち着け!」と何度も自分に言い聞かせ最後の準備を始めるのであった。






ある日、エルヴィーノは罠に嵌められエルフ達に捕まった。


エルヴィーノの身柄がブリンクス公爵婦人に移った当日には屋敷へと連れて来られた。

(この時点でロザリーの中身は欲望の化身となっていた)

エルフの町から少し離れた場所で山の斜面を使い、中をくり貫いて作られた家は外からは場所が分かりづらく、家の窓からは目の前にある湖が広がる景色が観られる。


門から家までは1㎞ほどあり、門を囲むように樹齢500年はありそうな針葉樹が何本も門と住居を隠すようにそびえ立っていた。

この屋敷には数人の兵士や召し使いと共に3mはあろう塀と、それより大きな屋敷の門をくぐる。

3mもの塀だが外からは木々を使い巧みに見えなくしてあり、外から一切中が見えず敷地の南西と北東には見張りのやぐらもある。


ブリンクス公爵婦人から告げられた。

「さぁ、ここが新しい私達の家よ」


エルヴィーノには何を言っているのか意味が分からなかったが、皆の後を追うように屋敷に入った。

1階には部屋がいくつかと応接室、書斎、台所、大きめの風呂場、男女別の便所が2ヶ所(主と召し使い用)ある。

屋敷の横に兵士達の家や、物置小屋が配置され、家具や生活必需品は既に取り揃えてあり、あとは主を迎えるだけとなっていた。


2階は大きめの部屋と小さめの部屋が2つ。

それと男女別の便所。

因みに大きめの部屋はロザリーのベッドルームでクイーンサイズのベッドや、ゆったりとしたフワフワのソファーがあり、ピンクと白を基調とした可愛い内装で、厳重な防音対策を部屋の中からと、外からも魔法がかけられてある。

ちなみにシャワー室も備える。

ベッドはやや硬めでその上にフワフワのピンク色で絹で出来たの羽毛布団が二重にかかっている。

当然部屋の防犯、防寒、防火対策の魔法は必要以上に施してある。


初日、簡単な屋敷の案内を受け、少し早いが夕食が始まる。

なぜかエルヴィーノ専用の部屋がある。

2階の寝室の前だ。

エルヴィーノ専用の部屋の横にロザリー専用の部屋がある。

因みにロザリー専用の部屋の方が広い。(別に良いけど・・・)

2つ部屋は中で繋がっている。


一応扉はあるがロザリーの部屋の扉には全て鍵がかかり、外からは鍵を開けないと入れない。

エルヴィーノの部屋は通路の扉だけ鍵をかけられる。

エルヴィーノの部屋に自由に入れるロザリー。

いったい何をしたいのだろう。


そう、ここはブリンクス公爵婦人が作ってあった”理想の夫と暮らす為に準備して作った家”で、エルヴィーノとロザリーの愛の牢獄である。

これから数十年めくるめく時間をこの場所で過ごす事になるとは夢にも思わなかった。


食事を終え、一番風呂場を無理やり入れられ自室でボーっと、これからの事を考えていると扉を叩く音がした。

「ちょっと良いですか、入りますよ?」

ロザリーだ。

「お話があるので私の部屋にいらっしゃい」

手を取りロザリーの部屋のソファーに座るよう導かれた。

ロザリーはエルヴィーノの横に密着して座る。

そしてロザリーは静かに語り出す。


「私はあなたがダークエルフなのは知っています」

エルヴィーノはビックリしたが返答する間もなく教えられる。

「この屋敷の者には既に教えてあります。私が信用出来る者しかいないので頭巾を取っても大丈夫よ」

そう言って優しくエルヴィーノの頭巾を取ってくれた。


風呂上がりのロザリーはピンク色のネグリジェの上に白い絹のローブを羽織っている。

当然下着など付けていない。

重力を無視するようにそびええ立つ巨大な双丘の上には桜色をした先端が主張している。

100歳の子供には石鹸とローザの体臭の混ざった甘い香りとランプの蠱惑な灯りで、既に魅了された状態だった。


二人だけの簡単な決まり事を説明される。

二人だけの時は名前で呼び合う事など特に寝室でのロザリーの好みが左右する事だった。

「愛称はいずれ考えるか・・・」

楽しそうなロザリーの笑顔。


「いい?あなたは私の物よ。これからは何でも私の言う通りにするの」

エルヴィーノはなし崩しに命令され頷く。

「私はあなたが、愛おしくて溜まらないの。あなたの事を愛しているわ。あなたはどう思っているの?」

(困った。なんて答えよぉ)


「僕もブリンクス様の事をお慕いしています」

「ダメ!二人の時はロザリーと言うの」

「はい、ロザリー様を」

「ダメダメ、様はいらないの。呼び捨てにしなさい!」

エルヴィーノは面倒くさいと思いながら言いかたを変えてみた。

「ローザが好きです」

「そぉ‼」

満面の笑みで答えるロザリーが宣言する。

「では、これから儀式をします」











エルヴィーノは初体験を済ませ、使用済みとなった相棒と休んでいる時に、感動し涙した事をお教えるとロザリーも感動しスイッチが入ってしまった。

ロザリーに予期せぬ感動を告げた事で、もう一度、エルヴィーノを押し倒すのだった。


エヴィーノの初体験はロザリーが我慢していた100年分の欲望をどの位消化したのだろう?

これからは毎晩だと約束させられて、ようやく解放寝たされたのは朝方だった。

エルヴィーノは気絶するように倒れ寝たと翌日ロザリーから聞いた。





翌日の昼に起きた2人は、目的を果たしたロザリーから”昨日の騒ぎはエルヴィーノを悪者から奪う為の芝居だった事”を告げられ、ナタリーやグンデリックに他のメイドからも詫びられた。


「エルヴィーノ様。今日はたいへん申し訳ありませんでした!」


昨日のイジメにも似た追及に涙したエルヴィーノはロザリーの腕にしがみついていた。

いとおしく思ったロザリーがその場を仕切る。


「それでは皆さん今後エルヴィーノは家族の一員ですから仲良くしてくださいね!」

「「「かしこまりました」」」

「さぁ、エルヴィーノも」

ロザリーに背中を押された。


「エルヴィーノです。・・・宜しくお願いします」

リビングに拍手が巻き起こる。

昨夜の事を思い出すと色んな意味で恥ずかしい~と思っていた。







ついにエルヴィーノは性奴隷としてロザリーの手に落ちたのだった。


登場人物

メイド長 ナタリー

ロザリーが生まれる以前から生家コルト家に仕える。

メイド長兼執事でロザリーの一番信頼するエルフの1人。


騎士隊長 グンデリック

ロザリーが生まれる以前から生家コルト家に仕える。

コルト家に仕える前は冒険家だった。

ロザリーの一番信頼するエルフの1人。


親衛隊隊長の部下 ミシェル(女性)

王直属親衛隊隊長 ジャック


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