亡国のジェーヌス Ⅳ

流転小石

第一章 エルフ国編

第1話 プロローグ

辺りを見回せば、先程まで戦っていた残り香がする・・・

大理石で出来た薄暗い室内には、所々に切り飛ばされた敵の肢体や魔法で焼け焦げた跡や、氷漬けになったモノが無造作に転がっている。


「ねぇ、ちょっと休憩しない?」

シーラが皆に向かって問いかける。


「そうね、この扉の向こうが目的の部屋みたいね」

パウリナが答えた。


「装備の確認もしたいし結界作るわ」

ロリが告げる。


ロリは結界を作りエルヴィーノは空気と身体の浄化魔法を唱え、皆の汚れた装備が綺麗になっていく。


なんでこんな事になったのか。

大体俺は一族の再興と安住を求めて嫁達と楽しく暮らすはずだったのに。

(俺が悪いのか? )

ため息をつく。


こんな事とは、勇者の一行と無限の塔で対峙するエンシェントドラゴンと戦う事だ !


そうエルヴィーノは今、魔族の勇者が率いる一行と一緒に最終決戦を前にして嫁が作った安全地帯で体力の回復と装備の点検していた。魔法石で作り出された焚き火の変わりの灯りが皆の顔を照らしている。




※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez




勇者(クエルノ族)年齢不詳。

シーラ・ジャンドール(魔王ハンター・ジャンドールの娘)


一般的に魔族と言われている一族だ。

しかし本当の種族名はクエルノ族と言い角の有る一族の事だ。

中には見るからに獣人だが角が生えている者も居るが、人族の俗称で魔族と呼ばれている。

種族名にはこだわりが有り違う名で呼ぶ人族が嫌いで、お返しにイディオタ馬鹿族と呼んでいる。

人族が魔族と呼ぶのは単純で、見た目主に角と圧倒的な魔力を感じ取っての事だ。

言葉も通じなかった時代の名残である。


魔王から出された試練は

「仲間を率いて自らが先頭に立ち古き龍を倒してこい。そうすれば、何でもお前の言う事を叶えてやる」と言う物だ。

魔王父親の陰謀よりも夢が叶う事が重要で、本人は命令や義務的な束縛が嫌いなので国を出て自由に生きたかった。

神撃魔法・聖神魔法以外全て使いこなし、圧倒的な魔力で肉体操作して恐るべき力を発揮する。

しかし暗黒魔法は極めていない。

得意なのは炎、氷、風、土系の魔法はかなりの使い手だ。


漆黒の髪は風になびくと美しく輝き、しっとりと日焼けした肌の下は獲物を捕らえる為の力と魔力を持ち、赤く光るその眼は全てのモノを魅了するが如くだ。

凄まじい魔力がこもる額上部の左右から出た紅蓮に輝く赤い角が魔族を象徴している。

しかも身体の凹凸感が凄い!! 腰が凄く細いくキュット上がった臀部と、折れそうなくらい細い足首だ。


種族の証しでもある漆黒の髪と紅蓮の角に、エルヴィーノに似た耳、日焼けした小麦色の肌、赤く光る眼、どんだけ? みたいな双丘が、優しさと恐ろしさが同居して、魔族の女性特有の魅惑的な顔と性格だ。

一族を思う優しく思いやりのある性格だが、親の事となると全否定であった。

とはいえ魔族の男からしてみれば、かなりの理想郷がそこに存在した。

彼女はエルヴィーノの第四婦人となる婚約者だ。




群青の聖戦士(獣人族)年齢不詳。

パウリナ・モンドラゴン(獣王ライオネル・モンドラゴンの娘)


神速の無手戦士で戦闘補助魔法が使える。

獣王とはあまり似ておらず母親似のガトー族だ。

しかし無駄に大きな双丘は、胸元の開いた鎧の隙間から谷間、イヤ渓谷に見えガン見するとガトーキックやガトーパンチが飛んでくるので、ばれない様に動体視力でいつも楽しんでいる。


後頭部で一つに纏めて縛った銀色の髪が優雅に揺れ、可愛く小さい耳に鋭く威嚇する碧眼。

スッとした高い鼻と肉厚感のある唇に性格も真面目で明るい。

おしゃべりが好きで温和な性格の彼女は色白の身体で、さほど筋肉は付いて無い様に見える。

しかしその力はりきまずともエルヴィーノを軽くねじ伏せる筋力がある。

しなやかな体にほとんど体毛は無く、人族と見分けるのは耳と尻尾くらいだ。

ただ、この巨大な双丘が神獣化した時にどこに行くのかは不思議でならない。

彼女はエルヴィーノの第三婦人だ。




神聖魔法使い(人族)年齢不詳。ロリ・ヴァネッサ・シャイニング

(聖魔法王国、国王リアム・ガブリエル・シャイニングの娘)


一族直系の上位聖女サンクタ・フェミナ神聖女だ。

肉体・精神・回復系、補助魔法全般、防御系、神撃系と神聖魔法の使い手。

エルヴィーノにとっての最大の脅威はその巨大な双丘だが聖衣の下に大切に封印されている。

それは彼との戦いの時だけ封印が解かれ、いつもの事ながらその巨撃と攻防を繰り広げている。

温和な性格だが多少天然が入っていてキレると怖い。


エルヴィーノが生まれ育った国を出て”運命の出会いをした”人族の女性だと本人は口癖の様に言う。

初見は全身頭まで法衣を纏っていたので、初めて見るエルヴィーノは理解出来ず不審者と勘違いして戦闘態勢を取ったのが懐かしい。

混血で、エルフの血も入っているのか金色がかったピンク色でボリュームのある髪をベールで隠し、身体を足元まで覆う法衣は魔法攻撃無効化と物理攻撃無効化が常時発動中だ。

童顔の彼女はパッチリとした二重で眼は青空のように吸い込まれるような碧眼と、薄紅色の口元はいつも笑みを浮かべている。


そんな顔と手首しか見えない彼女だがもう一か所特徴のある場所がある。

法衣の上からでも主張している胸部だ。

そこにどれだけのお宝があるのかつい想像してしまうのは男の種族として嬉し悲しの運命さだめだ。

彼女にはエルヴィーノが作成した特別な魔導具を装備していた。

それは”ある部分が浮遊”しているのだが、結局は妻全員の身体の一部が浮遊する事になる。

彼女はエルヴィーノの第二婦人だ。




暗黒魔法師(ダークエルフ族)エルヴィーノ・デ・モンドリアン

(亡きダークエルフ王の娘リーゼロッテ・デ・モンドリアンの子)

私生児。



エルヴィーノは謎多き亡国の王子で、暗黒魔法と空間魔法の使い手。

あと生活系の魔法や補助魔法、召喚魔法などで戦闘用はこの暗黒と空間の二種類を使い、他の全ての魔法属性を使えるがそれぞれ初期魔法しか使えない。

戦闘は二系統で事足りたし、熟練度を上げるのも面倒くさかったから。と言うよりも余り戦闘は好きではない。

身を守る事と、愛する者を護るために覚えた魔法だ。

他にも使える特殊な魔法が有る。




そう!

エルヴィーノたちは魔族の勇者が率いる異種族混合”一夫多妻”のパーティーだ。

因みに彼女達の年齢は知っているけど、あえて言わない。

やはり女性に年齢の事を話すのは失礼だと思うので。

(そんな事話したらどんな酷い目に合うか考えたくもないのだ)


エルヴィーノは普段、若干上方おでこ辺りを見て彼女達と話している。

理由は察してもらえるはずだが、エルヴィーノの意思に関係無く視界に”イロイロ”と入ってくるからだ。

彼女たちは会話の時にいつも”夫”の目線を見ている。

ちょっとでも目線が下を向いたら”誰々の胸を見た”と言って追及して来るのだ。

だがそこで争いは起きない。

彼が一方的に疑われ、あやしまれ、とがめられ、ののしられ、理不尽りふじんにも軽い体罰を受けるだけだ。

(みんな昔はもっと優しかったのに)


皆それぞれの想いを胸に秘め作業をしている中、エルヴィーノは一通り作業を終わらせて嫁達を見ながら出会った頃と、自分の過去を思い出していた・・・





いきなりクライマックス的な感じで始まりますが、扉を開けると最終決戦になります。

エルヴィーノが誕生してから、扉の前に来るまでに辿った紆余曲折な過去の回想を予定しています。

最終的には転生しますが、どこに転生するのかはまだ秘密です。


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