第14話 魔王配下の四天王ってどういう選考基準なんだろうね
吏亜、が大きな瞳をぐぐぐっと広げている。額同士が当たるくらいに近づいているのに僕の顔をすべて見ようとしているのだろうか?
「湯哉さん、どうして貴方は湯哉さんなんですか?」
「最近ロミジュリでも見たのか?」
「ふふふ、見てません!!」
なぜ得意顔ができるのか僕は不思議でたまらないよ。
「ああ、そうなんだ」
さて、せっかく兎沙もマリンもいないことだしゲームでもするかな。優愛にはドラマか映画のサブスクでも与えとけば正座して見ているだろう。
そう思い立ち上がろうとするが思っていたのと違って優愛がべったりとくっついている。
「吏亜、今日はゆっくりしたい気分なんだ。悪いけど一人で遊んでてくれないか?」
「湯哉さん、そういうわけにはいきません。兎沙さんが滝行、マリンさんが子育て体験に出ている今私と遊ぶことができるお人は貴方しかいないのですから。
この通り遊んでください、お願いします!!懇願です、哀願です、切望します!!!」
言葉とともに謎の風圧が身体を押しつぶさんばかりの勢いで沸き起こった。テーブルがカタカタと揺れ足の一本がぐしゃりと壊れる。
「こんな圧の強いお願いある?」
「やりすぎました」
コホンと分かりやすく咳払いをした後不思議な光でテーブルをなおした。ふわりと浮かんで再び僕をまっすぐに見据える。
「遊んでくださりますか?」
「………僕ゲームしようと思ってたんだけど」
「おお、それはちょうどいいです!!」
綺麗な指パッチンとともに空中にゲームソフトが浮かび上がった。
「昨日叔父様から仕送りにゲームをいただいたんですよ」
「仕送りにゲームを選ぶって叔父さんどんなセンスしてるんだよ」
「そうですね………姪の私が言うのもなんですが変な天使さんです。何故かお母さんや私にぶたれるのが好きなんです」
「そいつ本当にお前の叔父さんなの?天使なの?豚の間違いじゃない?」
「実の叔父様ですよ。
それはそうと一緒にこのゲームやりましょうよ」
「それどういう種類のゲームなんだ?RPG?アクション?」
「知りません!!叔父様のお手製ゲームらしいです」
なんか知らんがすっげーしたくないんだけどどうしよう。
「叔父様いわく魂と欲望を込めに込めまくって作ったらしいですよ。
一緒に住んでいる魔王の生まれ変わりのボケかす野郎と一緒にやれと言われたので本当にちょうどいいです」
「叔父さんが僕のことを嫌っていることはよーく分かった」
「とにかく湯哉さん。
やりましょう、プレイしましょう、ゲームしましょう!!!」
うーん………正直言ってあまり気は乗らないが正直天使が作ったゲームというものに興味はある。
「やりましょうやりましょう、いっぱいたくさんやりましょう」
それにここまで楽しみにしている吏亜を無下にするのも少しながら良心が痛む……こいつと一緒に遊ぶことはまったく了承してないが痛んでしまう…………はぁ、僕って吏亜に甘いようなぁ。
「いいぞ」
好奇心とほんのちょっとの甘さから出たこの言葉を僕は数分後に後悔することになる……ほんの数秒の間だけだが。
「それではレッツプレイで……」
ピンポーン
随分と面白いタイミングでインターホンが鳴ったな。
ぷっくりと頬を膨らませている吏亜を横目に玄関の扉を開けた。
「はーい」
「すいませーん」
露出度の高い服とかすかな羞恥と勇気を滲ませた顔をしているパルフィがいた。
「来ちゃいました」
「帰れ」
「そんなこと言わないでください!!せっかく来たんですからお話だけでも聞いてください!!!この通りですから!!!」
胸元の開いた服をさらに開けようとしたので腕をつかんで止めてやる。こいつは自分の性的魅力にどれだけの信頼を置いているのだろうか。
「勝手にやってきて痴女力爆発させたうえ話を聞けとは随分勝手だと思わないか?」
「そこを何とか!!!今回は湯哉さんにとっても非常に大切な話なんです!!」
「ああ、何かありそうなこと言って不安にさせる話術を覚えたのね。お前の努力には頭が下がるよ」
「違います!!今回は魔王になってくださいという話ではありません!!」
何やら随分と必死だな。ああいかんいかん、話くらい聞いてやろうかとか思っちゃだめだ。こいつはこれでも一応悪魔だからな………それにちょっと甘い顔を見せたらつけあがる……所かまわず完成度だけが無駄にあがったハニートラップを仕掛けられでもしたらひたすらに面倒くさいぞ。
そのときリビングの方で初めて観覧車に乗った子供のような声がした。
「わーーーーーーです!!!!!」
「ああ、もしや!!!
勝手にお邪魔しますよ!!」
ひゅんっ
「瞬間移動……これがあるから扉の意味がないんだよな………で?今の吏亜の声になんか心当たりありそうだったけどどういうことだ?」
「行きながら説明します!!」
「こっからリビングまで5秒もかからないぞ」
2秒後リビングにたどり着いた。ただの一文字の説明もされていないのは言うまでもない。
男に睨みつけられている吏亜が目に入った。
髪の長い男だ……黒々とした髪は妙な生命力を感じさせる。
「ああ、湯哉さん。大変です、白昼堂々泥棒さんが部屋の中に入ってきました!!!」
その時、吏亜はパルフィを見つけたらしく恭しく頭を下げた。
「あっ、ご無沙汰しております。今日はどんな御用ですか?」
こいつの切り替えの早さは天下一品だな。
「おい、俺様を無視するな」
この髪長さん今俺様とか言った?………わーー、面倒くさそうなタイプ。
「やはり来てしまいましたか………もうこうなったら私にはどうすることもできません……湯哉さんが悪いんですよ。早く魔王様になる決意をしてくれなかったから…………」
「ん?この泥棒さんのことを知っているんですか?」
「はい……この方は私たち一族が誇る四天王の一人」
わざわざ四天王を選んでいるなんて随分仲良さげな一族だな。選考基準とかあるのかな?それとも推薦とかで決まってんのか?
「溢れ出る魔力の攻撃力は一族随一。腕を振るえば岩を砕き、固めた拳はダイヤモンドよりも固く、必殺技である『業魔臨砲拳』はこの世の理を砕くほどの破壊力を誇ります」
中二病の設定集に書いてあるような強い感じてんこ盛りの必殺技だな。
「で?そのなんちゃら砲拳の使い手さんは何て名前なんだ?」
「ふんっ。貴様様はいい度胸をしているな。流石は魔王の生まれ変わりだ」
貴様様て……ああそうか、魔王の生まれ変わりである僕って一応こいつらの上司に当たるのか。
にしても貴様様って………本当の上司だったら怒ってるぞ。
「俺様の名前はゴウリン」
ゴウリンの名乗った髪長男は何故か羽織っていたコートを捨て去り拳を握り締めた。
「お前を魔界に連れ帰るものだ!!!」
「へーー」
「パルフィのやつがなかなか結果を出さないからな……いくら俺様たちの王となるべき男とは言え今はただのガキ……丁重に扱うことはない。
力づくで連れ帰り、そしてその魔の力を力づくで解放させればいい!!!」
典型的脳筋理論……兎沙の方がまだいろいろ考えてるぞ…あんたあのアホよりアホだぞ………まったく。
ゴウリンの周りに乱気流のような圧が巻き起こった。部屋の中に置いてあったぬいぐるみがぺたんと倒れる。
「さぁ、拳を握れ。お前の全てを殴り飛ばして俺様の言うことを聞かせてやる!!!!!!」
いやぁ~~やっぱり異文化交流ってのは難しいな………こういう時は自分の意思をはっきり伝える必要があるだろう。
万能言語である笑顔を顔に貼り付けて持てる限りの感情をたった二文字に込める。
「やだ」
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