シュプレヒコール

花色 木綿

プロローグ:My only love sprung from my only hate!

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 燦爛と輝く太陽に、どこまでも澄み渡った青い空と真っ白な雲。

 パンッ!! と乾いたピストルの音が、一瞬の内にオレを向こうの世界へと連れて行く。前に進む度に少し湿った風が乾いた頬を強かになでる。

 そう、オレが生きてきたのは、0コンマ1秒の世界——。

 果てなんてない無限の中、ただ0コンマ1秒でも速く、向こう側へとたどり着くことだけを考えて生きてきた。

 なのに——……。



「ああ、ジュリエット! それでも僕は君を愛せずにはいられない……」

「ギャーッ!!? だから抱き着かないでくださいよ、ミオ先輩っ!!」

 ピコーンッ!! とピコピコハンマーで、オレはくっ付いてくる先輩の頭部を力の限り叩きつける。すると、パン、パンッと手を叩く音がその場に強く鳴り響いた。

「はい、ストップ、ストーップ! ジュリちゃん、そこは、『いいえ、ロミオ。私、やっぱりあなたのこと……』やで」

「セリフなら覚えてるよ! ミオ先輩がいきなり抱き着いてくるから……って、だから先輩、くっ付かないでくださいよ!!」

「そんなこと言われても。愛しいジュリエットを前にして抱きしめられずにいられようか」

「知りませんよ、そんなこと! それに、台本に『抱き着く』なんて一言も書いてないじゃないですか」

「うーん、せやな。部長の言う通り、ここはロミオとジュリエットの抱擁といこか。みんな、台本に書き足しておいてや」

「おい、シューイチ!」

「だって、その方が盛り上がるやろ。芝居は盛り上がってなんぼやで、ジュリちゃん。我慢してや」

 シューイチのヤツ、他人事だからって勝手なことを言って……。オレは思い切りヤツをにらみつけてやる。

 なんでこの前まで広い青空の下でトラックを駆けていたオレが、よりにもよって人工的な電灯の下——、小狭い舞台の上に立っているなるなんて。誰が予想できたろう。そんなの神様くらいなもんだ。

 そう、全てはあの瞬間。あの出会いからオレの運命は、決定的に変わってしまったのだ——……。

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