“元“悪役令嬢は二度目の人生で無双します(“元“悪役令嬢は自由な生活を夢見てます)

@HisuiYoru

一章

プロローグ

 皆さん初めまして、翡翠由(ヒスイヨル)と申します!本日からカクヨムの方でこの作品を投稿させていただきます。拙い文章ですが、どうかお付き合いくださいませ。


なお、この作品はアルファポリス、小説家になろうの方でも投稿させていただいています。小説家になろうの方ではこちらの作品の数百話分の話が先に投稿されているので、続きが気になる!という方はこちらをご覧ください。





















 世の中には知らない方がいいことだってある。

 いろんな物事を知った後、それら全てが嘘だったとわかった時の絶望感はとてつもないから。


「始まったよ、ボス……」


 男は路地で呟いた。

 物語は始まる。


「メアリは、死んだ」


 路地で一人呟く。


 その女性の名を覚えている人物はほとんどいなくなり、記憶はなくなる。

 一人の女性の存在が忘れ去られる。


 そこから始まる物語。

 彼女の娘は今日も奮闘する。



♦︎♢♦︎♢♦︎



「嫌だ!嫌だ!私はまだ死にたくない!死んでいいはずがない!」


 処刑台の上で、私は騒いでいた。

 大粒の涙を垂らし、大勢の観衆の目の前で惨めな姿を晒す。


 だが、そんなことを気にしていられるほど、余裕なんてものは残ってなかった。


「さっさと殺せー!あの女をやっちまえー!」


「そうだ、そうだ!」


 凄まじい大声が処刑台に響く。

 その声とともに、処刑人がやってくる。


 その後ろには、私の婚約者がやってきていた。


「助けて殿下!私、死にたくない!」


 私の愛する殿下だったら私のことを助けてくれるだろう。

 そう、信じていた。


「はっ!この薄汚いアバズレが!」


「え?」


「国のためと言いながら、敵国に嫁ぎ、逃亡を図った!そのことの意味がお前にはわかっていたのか!?」


 泣き叫ぶように殿下が発狂する。

 その姿を哀れに思った大衆から私に向かってヤジが飛ぶ。


「ち、違います!ほんとに私は国のためにーー!」


「違わない!私がそう感じたということはその通りなんだ!」


「で、殿下……」


 私は絶望する。

 信じていた方に裏切られてしまった悲しみは計り知れないだろう。


「おい。こいつを殺せ」


「はい」


 兜を被った処刑人が、私の目の前に戦斧を持ってやってくる。


「嫌だ!待って、殿下!」


 殿下は私の方を一瞥し、告げる。


「お前なんて、最初から好きじゃなかったんだ……」


「……………!」


 私はそこで、振り上げられた戦斧で首を切られ死んでしまった。



 ♦︎♢♦︎♢♦︎



「奥様!生まれました!元気な女の子です!」


 一人のメイドが大きな声でその場にいた、男性と女性に向かって伝える。

 そして、私の体が持ち上げられる。


(ん?持ち上げる?)


 そのメイドは私の体を軽々しく持ち上げてしまった。

 私はそこまで軽くはないはずなのに………。


「おお!よくやったぞ!メアリ!」


「ああ………生まれた」


 男性は大きな声で、喜びを伝え、メアリと呼ばれた寝かされている女性はかすれた声で涙を流している。


(え?待って待って!これどういう状況!?)


 先ほどまでが夢だったのだろうか?

 認めたくないが、そんなことではないだろうが……。


(って、私は今どこにいるの?)


 メイドの顔がドアップで見えているのが、今の私の視点だ。


(私、幽霊になった?)


 出なければ、考えられない。

 私の体はさっきに朽ち果ててしまったのだから……。


 でも、幽霊なら体はさわれないはず……。

 私は、とりあえず話してみようと試みる。


「おぎゃー!(あのー!)」


(!?)


 私の声はまともに出なかった。

 その代わりと言わんばかりに、赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。


「元気な子だ!こいつはきっと強く、美しくなるだろう!」


 その男性がメイドから私の体がうつされる。


(まただ!どういうことなの?)


 私の声はでず、体に触られている感触もするため、きっと私は生きているのだろう。


(まあ、生きていても何も嬉しいことはないんだけど)


 絶望の淵に叩き落とされたのだ。

 今、生きていたとしても絶望しか感じない。


 死に対しての恐怖よりも、裏切られる恐怖の方が勝ってしまった。


 そして、男性は私の体を持ち上げーー


(ん?)


 私の頭に疑問が浮かぶ。


(なんか、父様に似ているような気がする……)


 その男性の顔は私の父を若返らせたような見た目をしていた。


(!?もしかして!)


 私はすぐに首を動かし、女性の方を確認しようとする。


(あれ?動かない?)


「危ないじゃないか!首が座っていないのに……」


 そこで、私は確信する。


(私、赤ん坊になってる?)


 そんな私をおいて、父様似の男性が、私に名前をつける。


「今日からお前は、ベアトリス・フォン・アナトレスだ!」



 ♦︎♢♦︎♢♦︎



「あんよが上手!あんよが上手!」


 メイドが私の前で手を叩いて誘ってくる。

 私はそれに従って、歩いてあげる。


 おっと、自己紹介が遅れました。


 私の名前はベアトリスと申します。


 あ、ちなみに前世の名前もベアトリスだったんだ。

 なぜ、私が前世というものを知ったかといえば、それは生まれた時のことだろう。


 この世に二回目の生を受けたということを知ったのだ。

 どうしてそう言い切れるのかと、疑問に思う人もいるだろう。


 それは、私のこの三年間の人生を経験して、それが前世のベアトリスが送ったものと全くおんなじだったからだ。


 父様につけられた名前。そして見覚えのある景色と、見覚えがあるメイドたち。


 ここまでで、疑いは確信に変わったってわけ。


 名前も一緒で、父様と母様の顔も一緒で、なおかつ記憶と全く同じことをさせられていれば、嫌でも気がつくだろう。


(人生二回目って、こんなことってある?)


 苦笑いしながら、私は見事メイドの元へと歩いてこられた。


「わー!すごいです、お嬢様!」


 何気に褒められて嬉しい私。

 なんとなく心も幼児化している気がするのは気のせいだと思う。


「あ!お嬢様、すみません……交代のお時間となってしまいました。代わりのものが来るまで、大人しくしていてくださいね」


 そういうと、メイドは何処かへと行ってしまった。


(きた!チャンス!)


 私には、前世……というか、起こりうる未来を知っている。

 つまり、私はこのままいけば、また処刑台送りにされてしまう!


(だったら、未来を変えるしかない!)


 今なら、未来を変える……私の努力次第では、違うハッピーエンドが待っているはず!


 というわけで、この年からお勉強しようと思ったのだ〜。

 大体の作法や、座学はあらかた勉強してある。


 前世は一・応・真面目だったからね。

 というと、私に足りないものはといえば……。


(力!技術!魔法!)


 性格はというと、もうすでに悪女っぽさはなくなり、三年間で丸くなった。


 昔の、ちょっとだけ、いやかなり偉そうな態度とかはもうとらないと心に決めた。


 とったら、また処刑台………。私が愛していた殿下の目の前でころされる。だけど、性格が良くなっても、私が処刑台に送り込まれたりしてしまうかもしれない。


 殿下は私のことが嫌いだったらしいから……。

 気に食わないから処刑台〜なんてことになったら、最悪なので今のうちに抵抗できるようなほど、強くなっておく必要があるのだ。


 前世の知識と、丸くなった性格の上に、強くなったら、私はもはや処刑台に送られることはなくなるだろう。


(そして、私は自由な人生を謳歌できるってわけよ!)


 殿下には婚約破棄してもらって、その後は気ままに一人で生きよう!

 案外、庶民の暮らし……っと、領民たちの暮らしも悪くはなさそう。


 そう考えた私は三歳ながら、書物庫に歩いていく。

 広い敷地の上、子供の足なのだ。


 時間はかかったが、なんとかたどり着くことができた。


「あ、ちゅかれちゃ……」


 まだ、呂律はうまく回らないが、喋れるようにもなった。

 私はその小さな手で扉に手をつき、開けるための呪文を唱える。


 貴族の家では侵入されたくない部屋には呪文をかけておくのが一般的だ。

 もちろん私の家……ちなみに公爵家……も例外ではない。


(ま、十五歳に父様が教えてくれたんだけど、覚えておいてよかったー!)


 呪文を唱え、私は中に入っていく。

 そこには大量の書物の山。


 本だらけだった。


(よーし!この中から魔法の書物を探そう!)


 武器の扱いを学ぶというのは流石に危険すぎて、バレたら叱られてしまう。

 今のうちは魔法の勉強をしておこう。


 私は適当に一冊を手に取る。


(魔法的一般力学……どっかで習ったような習っていないような?)


 確かちょっと難しかった……っけ?

 でも、前の私にできたのだ。


 今の私にできないはずがないよね!


 私はページをめくる。


(そもそも魔法とはこの世界とのつながりを強くするものである、魔法が観測されるところほど、世界的観点から見て、力が強く、これを一般的力学に当てはめて計算すれば、それはーー)


 その後、すぐに代わりのメイドが、私は拘束しにきたのであった。

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