第8話
「最高の気分だ。俺の指示であいつら死に行ってやがる」
女神の力を使えば女神のふりをして信託を下すこともできる。これに気付いたときは散々笑い転げたものだ。
「レストさん……?」
「どうした?」
「いえ、なんでもありません」
よくみるとスイネの表情が引きつっている。思わず自分の頬を触って気付く。
「悪人にふさわしいような顔してるじゃん」
以前は一度もしたことがないだろう。そもそも俺はそういう輩とつるんだことがないから、こんなに歪んだ顔すら知らなかった。
「え、えっと、それでレストさんは何をしてたんですか?」
「適材適所かな。力持つものはその力を民のために使い散らすべしってね」
「どういう意味ですか?」
純粋に俺が言っていることが分からないのだろう。
「聖職者どもをたぶらかして死地に送った。ああ、一人二人の善良な人は後方支援に回したけどさ」
下っ端だったのにあの場で反論をできたのは感心した。ああいう正しい人は生き残っていれば多くの人の悩みを解消し、多くの人のためになってくれるだろう。
説明したにも関わらずスイネはぽかーんと口を開いてかたまる。俺は仕方なく頭を掻いて言った。
「家族が焼き殺された後、神に会ったんだ。その神の頼みを俺は受け入れた。俺が今使ってるのは神の頼みを成すために俺が喰らった神の力。つまりはあいつらの崇める女神の権能を俺は使えるんだ」
「力を見せてやる、というのは……」
「これのことだよ」
俺は手のひらの上で光球を作り出した。自分で言うのもなんだが神々しい輝きだ。
「す、すごいです! 女神を食べちゃうなんて、やっぱりレストさんはカッコいいです!!」
「俺はこの力であいつらを殺そうと思ってるんだ。これはそのための力なんだ」
俺は遠くの上空を見る。
「ドラゴンはもうすぐそこまで来てますね」
「怖い?」
「はい、少し」
「大丈夫だよ。この街は俺が守るから」
言うとスイネが俺に寄り掛かる。
「はい、信じてます。レストさんはこの街の、私の太陽ですから」
嬉しいものだ。誰かに頼られるのは。
俺は十数秒してスイネを引きはがすとドラゴンの方へ向かった。
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